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| 第3章 職場のつながり |
第1節 |
職場のつながりの変化と現状 |
働くことは、個人の生活を経済面から支えるために必要な活動であるとともに、仕事を通して得る達成感が生きがいにもなるなど自己実現の手段ともなっている。また、社会的な側面もあり、働くことにより、生み出される様々な付加価値が我が国経済社会の発展の源となっている。職場の人と過ごす時間は、働き方により異なるものの、平均して1人1日当たり9時間4分27であり、1日の3分の1以上は職場、そして、職場の人と何らかの形でつながって生活している。
我が国は、従来、「会社人間」という言葉に象徴されるように、職場のつながりが強い社会であった。しかしながら、経済・社会環境の変化、個人の意識の変化、そして、1990年代の長期的な経済低迷により、つながりの形は変貌してきている。
職場のつながりについては、職場における同僚や上司・部下との交流から生じる「人と人とのつながり」と、企業とそこで働く人との関係である「職場と人のつながり」の二つに区分が可能である。本章では、この二つのつながりについて、それぞれの変化とその背景、および国民生活への影響について検証する。
なお、職場のつながりを持つ人は雇用者に限られるわけではなく、自営業者でも様々なつながりを持っている。しかしながら本章では、近年、特につながりが希薄化したと考えられる企業におけるつながり、すなわち、企業とそこに雇われて働く人を中心に分析を行うこととする。
職場においては、同僚や上司・部下が、相談や報告・連絡等によりコミュニケーションを取りながら仕事を進めることが一般的である。また、仕事以外でも飲食を共にしたり、休日に旅行に行くなど、行動を共にすることもある。まずは、このような職場で生まれる人と人とのつながり(以下、「人のつながり」とする。)の変化と現状を見てみよう。
はじめに、職場における人のつながりがなぜ重要なのかを明らかにするため、働く人の仕事への意欲や企業の業績に与える好影響について見てみよう。
職場における人間関係は、仕事に対する個人の意欲に影響すると考えられる。仕事に対する意欲を向上させるために何が重要かを尋ねると、「良好な人間関係」と回答した者は、54.2%と半数以上を占め、賃金や労働時間といった主要な労働条件に関する項目よりも割合が高くなった(第3-1-1図)。また、年齢層別に見ると、20歳未満は70.6%、20代が64.5%と、若い年齢層の方が、良好な人間関係が仕事の意欲を高める上で重要と考えていることが分かる(第3-1-2図)。この結果は、職場における人のつながりが良好であることが、人々、とりわけ若者が、仕事に対する意欲を高める上で重要な要素であることを示唆している。


●職場の人間関係が良いと感じている人ほど企業の業績が上がっていると考える割合が高い
職場における人のつながりが良好であることが、仕事に対する意欲を高める上で重要な要素であることを見たが、こうした人間関係は企業の業績にどう影響しているのだろうか。
「勤め先企業の業績についてどのように認識しているか」を尋ねた結果を「職場の人間関係に満足しているか」との質問に対する回答別に見ると、「満足している」と感じている人の23.7%が自分の勤める企業の「業績が上がっている」と回答しており、「満足していない」と感じている人の17.0%を上回っている(第3-1-3図)。また、自らの職場について「部下や後輩を育てようという雰囲気が強い」あるいは「仲間と協力して仕事をしようという雰囲気が強い」と感じている人は、こうした雰囲気が弱いと感じている人より企業の「業績が上がっている」と回答する割合が高い。さらに、3年前と比べてこうした雰囲気が強まったと感じている人は弱まったと感じている人より企業の業績が上がっていると考える割合が高い。この調査は企業の業績を直接調べているわけではないため、結果については幅を持って解釈する必要があるものの、職場における良好な人間関係が、企業の業績向上に寄与している可能性があることをうかがい知ることができよう。

職場における人のつながりは、個人の仕事への意欲や企業の業績にも影響することを見たが、人々は職場でどの程度つながりを持っているのだろうか。職場における人のつながりは仕事上必要な最低限のものからプライベートに及ぶものまで様々なものがあるが、以下では、職場で仕事や生活の悩みを相談するといったつながりについてその現状を見ていこう。
職場で仕事や生活の悩みを相談する人が何人いるかを尋ねたところ、平均して5.8人となり、年齢層別には相談相手の人数に大きな差が見られなかった(第3-1-4図)。しかし、就業形態別に見ると、正社員は6.6人である一方で、パート・アルバイトは4.5人にとどまっており、正社員はパート・アルバイトより、職場で多くの人とつながっていることが分かる。

また、相談相手を年齢層別に見てみると、どの年代においても自分と同年代に相談相手が多い(第3-1-5表)。しかしながら、全ての相談相手が同年代で占められているわけではなく、年代が異なる相談相手が半数を超え、年代差が大きい相談相手も少なくないなど、仕事を通じて比較的広範囲の年代の人とのつながりが築かれていることがうかがえる。
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相談相手の年齢別構成割合 |
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では、職場の人とつながりが多い人とはどのような人だろうか。相談相手が多い人が、どのような特性を持っているのかについて統計的に分析したところ、正社員であるということ以外に、年代の離れた人と協力して仕事をする機会がある人、職場の人と仕事以外での付き合いがあった方がよいと考える人ほど、相談相手が多い傾向にあることが明らかになった(第3-1-6表、付注3-1-1)。
つまり、この結果からは、職場の人と年代や仕事を超えた幅広い付き合いがある人、あるいは付き合おうとする人が、職場において相談相手を多く持つ傾向にあると言うことができる。
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職場での相談相手は平均で5.8人であるが、一人一人で見れば相談相手が多い人もいれば、少ない人もいる。そのような中、相談相手が全くいないと回答した人は全体の14.6%と、7人に1人が職場において相談相手を持てていない状況にある(第3-1-7図)。

では、どのような人が職場で相談相手がいない傾向にあるのだろうか。相談する人がいないと回答した人の割合を年齢層および就業形態別に見ると、60代以上が就業形態にかかわらず約2割と高い。また20代、30代のパート・アルバイトが、それぞれ18.4%、15.6%と続いている。
本節の冒頭で、20代、30代は、他の年齢層に比べて、仕事の意欲を高める上で良好な人間関係が重要と考える者が多い傾向にある点を見た。「職場に相談する人がいること」をもって、「職場で良好な関係がある」とは必ずしも言えないが、良好な人間関係を築くためには、職場に相談相手がいることも、重要であるとも考えられる。つまり、20代、30代については、職場における相談相手が仕事の意欲を高める上で重要であると考えられるものの、とりわけパート・アルバイトについては、職場に相談相手がいない人が多く、仕事に対する意欲が持てていない可能性がある。
●職場で仕事上のコミュニケーションが取れていない人は少なくない
職場で仕事や生活の悩みを相談する相手について見たが、仕事を円滑に進めるためには、相談までいかなくとも、同僚と気軽に助け合うことも重要であろう。職場で互いに助け合う雰囲気を感じるか尋ねたところ、「感じない」と回答した人の割合は18.3%と、職場に相談相手が誰もいない人(14.6%)と同じ程度いることが分かる(付図3-1-1)。
また、相談や助け合いまでいかなくても、上司に報告し、部下に指示を出す、他部門の人々と連絡を取り合うなど、様々な形態のコミュニケーションがなされているが、第3節で後述するように、社内コミュニケーションが「全く取れていない」、「あまり取れていない」と感じている人の割合が26.6%と、約4分の1の者はコミュニケーションが不十分と感じていることが分かる。
このように、職場での助け合いやコミュニケーションの状況から見た人のつながりが弱いと感じている者が多数を占めるわけではないが、そう感じている人も決して少なくないと言えよう。
| 27 | 総務省「社会生活基本調査」(2001年)の有業者(ふだん仕事をしている者)のうち、仕事が主の人が学校・職場の人と一緒にいた行動者平均時間。 |