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全文 > 第2章 地域のつながり > 第2節 地域のつながりの変化による影響(3/4)

(3)防犯・治安

人々が犯罪に遭遇せず安心して生活していくために警察が果たす役割は大きい。しかしながら、地域の安全のためには警察の力だけでなく地域住民の力も必要とされている。警察庁が2004年に実施した「地域警察官意識調査」では、交番の地域警察官に「地域の安全は警察だけで確保できるか」と尋ねているが、確保できないとした警察官が94.9%と、大多数が警察だけでは安全の確保が難しいと感じていることが分かる。では警察以外には、どのような主体が地域の安全を確保する上で大切なのだろうか。同じ調査では「警察の活動以外に何が必要であるか」との質問も行っているが、「地域住民一人一人の自衛方策」との回答割合が78.3%、「地域住民、ボランティアの防犯活動」が51.6%と、地域が重要な役割を担うと考える警察官が多かった(第2-2-12図)。

 

第2-2-12図 防犯に地域も重要な役割を担っている

このように地域が防犯に果たす役割に対する期待は大きいが、この役割は地域のつながりとともに弱まったとも言われている。以下ではこの点について検証していこう。

●つながりの希薄化によって治安が悪化したと考える人が多い

まず人々の治安に関する意識の変化について見よう。ここ10年間で治安は良くなったか悪くなったか尋ねた結果を見ると、「悪くなったと思う」(「どちらかといえば悪くなったと思う」を含む)と回答した人は、8割を超えている(第2-2-13図)。また同じ調査で「悪くなったと思う」と回答した人に、その理由を聞いている。その結果を見ると「来日外国人による犯罪が増えたから」と答えた人が55.1%と半数を超え、続いて「地域社会の連帯意識が希薄となったから」が49.0%と、地域のつながりの希薄化により地域が防犯機能を果たさなくなったことを示唆する回答も多かった。

 

第2-2-13図 地域社会の連帯意識の希薄化により、最近の治安が悪化したと思う人が多い

また別の調査では、身近な子どもたちが何らかの犯罪に巻き込まれるかも知れないとの不安を感じたことがあるか尋ねているが、「よくある」と回答した人が25.9%、「ときどきある」と回答した人が48.2%と、これらを合わせるとおおよそ4人に3人がそのような不安を感じたことがある点が明らかになっている(第2-2-14図)。また不安を感じたことがあると回答した人に、その理由を聞いたところ、「テレビや新聞で、子どもが巻き込まれる事件がよく取り上げられるから」を挙げた人が85.9%と最も多かったが、「地域のつながりが弱く、近所の住民の顔をほとんど知らないから」も33.2%と、地域のつながりの希薄化が子どもの危険を招いていると感じている人も多かった。

 

第2-2-14図 地域のつながりが弱いため、子どもが犯罪に巻き込まれる不安があると考える人も多い

以上から、治安の悪化を感じる人が多いのには、地域のつながりの希薄化を背景とした、地域の防犯機能の弱体化も影響していることがうかがえる。

●地域に期待されている防犯・治安の役割

では防犯・治安に関し、地域に対して人々はどのようなことを期待しているのだろうか。安全で安心な地域社会を実現するために効果的な地域の取組について尋ねたところ、「街路灯の設置や公園の見通しなどの整備」(64.2%)といった施設面の整備に次いで、「住民によるパトロールなどの活動」(46.0%)といった地域のつながりを基礎とする活動が続いている(第2-2-15図)。

 

第2-2-15図 地域の連携が必要と考える人の割合が高い

さらに、自らは自主的な防犯活動へ参加したいか尋ねたところ、58.6%の人が「参加したい」(「できれば参加したい」を含む)と回答している(第2-2-16図)。そして、参加したい具体的な団体などとしては「学校や町内会による活動」を挙げる人が76.6%に上っており、地域に密着した団体を通じて活動することを望む人が多いことが分かる。

 

第2-2-16図 学校や町内会による防犯活動に参加したい人が多い

次に、子どもを犯罪から守るための家庭や地域の効果的な取組について尋ねたところ、「防犯パトロールといった地域の住民が行う防犯活動を盛んにすること」と回答した人が51.5%、「近所の人たちと情報交換の場を作ること」と回答した人が46.2%と、地域のつながりに基づく取組が必要と考える人が多いことが分かる(第2-2-17図)。

 

第2-2-17図 子どもを守るために地域のつながりによる取組を期待する人は多い

地域のつながりが希薄化したことによって、地域の治安が悪くなったと思う人の割合が高い中、地域のつながりに基づく活動が、地域の防犯・治安の向上に効果的と考える人は多い。そして、地域の自主的な防犯活動に参加したいという人も多い実態を踏まえると、前節で見たような地域活動への参加の障壁を解消しながら、参加意欲のある人を迎えて地域のつながりを深めることで、地域の防犯・治安機能を向上させることができるだろう。さらには、先で見た地域における子どもの交流を阻害する一つの要因を解決することにもつながり、これによって地域の教育力の向上にもつながる可能性があると言える。


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