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全文 > 第2章 地域のつながり > 第2節 地域のつながりの変化による影響(2/4)

2.地域に期待される役割とつながりの希薄化

地域のつながりは、様々な分野において地域が抱える問題の解決に資する価値を生み出す可能性を秘めているが、人々はどのような分野で地域のつながりに期待しているのだろうか。地域の人が中心となって積極的に取り組むことが必要だと感じる分野について尋ねたところ、「防犯や防災にむけた対策」(84.4%)、「高齢者への介護、福祉」(78.5%)、「少年の健全な育成」(74.3%)を挙げた人が多かった(第2-2-5図)。

 

第2-2-5図 防犯や防災に向けた取組が必要と感じる人が最も多い

また、第1章で示したように、子育て支援についても、近年、地域における取組への期待が高まっている。そこで以下では、地域のつながりが果たす役割の中から「地域における教育」、「子育て支援」、「防犯・治安」、「防災」、「高齢者福祉」を選択し、それぞれ詳しく見ていくこととする。

(1)地域における教育

子どもは社会に適応するために必要な知恵を家庭や学校だけでなく、地域においても得ている。特に、地域は子どもにとって、様々な年齢層や立場の人々と触れ合うことで、社会経験を積み重ね、社会性や公共性を得ることのできる「場」であり、その意味からも地域における教育は重要である。そして74.3%の人が地域の人が中心となり積極的に取り組むことが必要なこととして、「少年の健全な育成」を挙げているなど(前掲第2-2-5図)、多くの人が地域における教育に期待を寄せていることが分かる。以下では、地域における教育の現状について見ていくこととする。

●地域における教育に関する期待

まず、地域に対する子どもの教育への期待を保護者の側から見ていこう。文部科学省が実施した「地域の教育力に関する実態調査」(2006年)では、小・中学生の子どもを持つ保護者に、小・中学生を育てる上で地域が果たすべき役割について、どの程度地域にかかわって欲しいか尋ねている。その結果を見ると、「社会のルールを守ることを教える」については61.5%が、また「自然や環境を大切にする気持ちを育てる」、「人を思いやる気持ちを育てる」、「ものを大切にする気持ちを育てる」についても約半数が『積極的に関わるべき』と回答している。そして、『ある程度関わるべき』まで加えると、いずれも95%を超える保護者がこれらの役割について地域のかかわりを期待していることが見て取れる(第2-2-6図)。

 

第2-2-6図 地域では社会のルールを守ることを教えることに積極的にかかわるべき

また、地域における教育という観点から、地域が持つ少年非行を防止する役割を見よう。少年を非行に走らせないようにするため、地域住民がどのように対応するのがよいと考えるか尋ねたところ、「よその家庭の子どもであっても悪いことをしたときは叱る」(49.8%)、「近所付き合いをし、家族同士の交流をする」(48.5%)、「日頃から地域の少年に声を掛ける」(44.7%)など、地域のつながりに基づく活動が必要であると回答する人が多くなっている(第2-2-7図)。

 

第2-2-7図 少年の非行を防止するためには、よその家庭の子どもであっても悪いことをしたときは叱るのがよい

●地域のつながりの希薄化により地域の教育力が低下していると考える人が多い

このように現在も、地域の教育の役割に対する期待は高いが、実際にこの役割はどのように変化しているのだろうか。前出の「地域の教育力に関する実態調査」では、小・中学生の子どもを持つ保護者に対して、自分の子ども時代と比べて、現在の地域の教育力がどのような状態か尋ねているが、その結果から、半数以上の55.6%の人が、「以前に比べて低下している」と考えていることが分かる(第2-2-8図)。さらに同調査では、「以前と比べて低下している」と回答した人に、その理由を聞いているが、「個人主義の浸透」を挙げる人の割合が56.1%と最も高かった。また、「地域が安全でなくなり、子どもを他人と交流させることに対する抵抗が増しているため」も33.7%と、後に示すように地域が持つ防犯・治安機能が弱まったことが、地域の教育力も弱めた可能性を示唆する回答も多かった。そして、これらに「近所の人々が親交を深められる機会が不足しているので」と「人々の居住地に対する親近感が希薄化しているので」がそれぞれ33.2%、33.1%と続いており、地域のつながりの希薄化により地域の教育力が低下していると考える人も多い。

 

第2-2-8図 自分の子ども時代と比べて地域の教育力は低下していると考えている人が多い

(2)子育て支援

次に地域の子育て支援機能について見ていこう。子育ては一義的には家族を中心に行われるものであるが、子育てする家族に対する地域による子育て支援に期待が高まっている。以下では地域の子育て支援機能への期待を改めて確認するとともに、実際に地域がそのような期待に応えているか見ていこう。

●子育て支援に関する地域への期待

地域による子育て支援への期待が高まっている点については第1章で示した。しかし子育て支援といっても、情報提供や子どもを預かるなど様々な形態がある。そこで、地域による子育て支援として具体的にどのようなものが望まれているのか見ていこう。

内閣府が2004年に実施した「少子化対策に関する特別世論調査」では、子育てに関する地域社会における住民同士の助け合いとして、どのような活動があればいいと思うか聞いている。その結果を見ると、「子育てに関する悩みを気軽に相談できるような活動」が52.3%と最も多く、「子育てをする親同士で話ができる仲間づくりの活動」が41.3%、「子育てに関連した情報を簡単に入手しあえるような活動」が31.8%と、悩みの相談や子育て情報の共有を可能とする「場」づくりといった活動に対する希望が強いことが分かる(第2-2-9図)。

 

第2-2-9図 地域においては悩みを気軽に相談できる活動が最も望まれている

また、「不意の外出の時などに子どもを預かる活動」(31.8%)、「子育て家庭の家事を支援する活動」(30.4%)といった、子育てをする家族の時間的制約を緩和する活動を希望する人も多かった。

このように地域による子育て支援としては、特に子育ての不安や悩みの相談などが期待されている。では本当に地域は、子育てに対する悩みの解消に資するのだろうか。厚生労働省が2003年に実施した「子育て支援策等に関する調査」では、未就学児童を持つ母親に、子育てをする上での不安や悩みを聞いている。回答者の地域とのつながり度合いに応じてその結果を見ると、地域とのつながりがとても深い(「より親密なつき合いがある」)母親については、「子どもとの接し方に自信がない」と回答した割合が39.9%であるが、それほど深くない(「通常のつき合いがある」)母親については、53.9%と高くなっている(第2-2-10図)。つまり、実際に地域との親密な付き合いのある人は子育てへの不安が少なく、これは地域のつながりが子育ての悩み解消に役割を果たすことの裏付けとなる。

 

第2-2-10図 地域とより親密な付き合いのある人は子育てへの不安が少ない

また、「自分の子育てについて親族・近隣の人・職場などまわりの見る目が気になる」と回答した人の割合は、地域とのつながりがとても深い親で33.2%、それほど深くない親で43.2%と、地域とのつながりがそれほど深くない親は、自分の子育てに自信が持てないことを示す結果となっている。そしてこれらから、地域とのつながりが深いほど、子育てにかかる悩みや不安を解消できる可能性が高まることを読み取ることができる。

●子どもを通じて地域とつながる人は減少している

ここまでで、地域が持つ子育て支援機能への期待が高いこと、地域のつながりは人々が子育てをする上でその助けになることを明らかにしてきた。では、子育てをしている家族はこのような地域のつながりを持てているのだろうか。以下ではこの点について見ていこう。

前節では、子どもがいることが地域の人とつながりやすくなる要素の一つであることを見たが、子どもを通じた知人との行き来の程度について、2000年と2007年で比較したところ、「よく行き来している」と回答した人の割合は10.0%から7.6%に低下し、反対に「あてはまる人がいない」については11.8%から26.3%に高まっている(第2-2-11図)。

 

第2-2-11図 子どもを通じた行き来は減少している

こうした背景には、地域のつながりを希薄化させた要因が子どものいる人にも及んでいることが考えられる。しかし先で見たように、子育て支援のためには、子育ての悩みを相談したり、親同士で会話したりできる仲間づくりが地域で望まれており、こうした期待に地域が応え、地域のつながりを深めることが必要とされている。


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