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全文 > 第2章 地域のつながり > 第2節 地域のつながりの変化による影響(1/4)

第2節

地域のつながりの変化による影響

1.地域のつながりが生み出すやすらぎや地域力

●近隣関係は人々に安心感をもたらす

人々は以前のような深いつながりを地域に求めなくなったが、多くの人は困った時には住民と助け合いたいと考えており、地域の人々とのつながりを持ちたくないと考えている人はごく少数に過ぎない。つまり地域のつながりは、いざという時の頼みの綱としての安心感を、多くの人々に与えていると言える。この点を明らかにするため、地域のつながりと精神的やすらぎの関係について統計的に見ると、隣近所と行き来している人は、精神的やすらぎを得ている傾向が確認できた(第2-2-1表)。なお、エリア型地域活動やテーマ型地域活動については、参加の有無と精神的やすらぎには明確な関係が見られなかった。つまり、地域のつながり、特に近所付き合いは、人々にいざという時の安心感を与えていると見ることができる。

 

第2-2-1表 隣近所と行き来をする人は精神的やすらぎを得ている

やすらぎを感じる確率が高くなる要素

・隣近所と行き来していること

・配偶者がいること

・平日に自由な時間が3時間以上あること

・休日に自由な時間が3時間以上あること

・持ち家(1戸建て)であること

やすらぎを感じる確率が低くなる要素

・週60時間以上働いていること

(備考)
1. 内閣府「国民生活選好度調査」(2007年)により作成。
2. やすらぎを感じているかいないかと隣近所との行き来の有無や個人の属性との関係を、統計モデル(プロビット・モデル)により推定し、5%水準に有意な結果が得られた変数を示すもの。
3. 詳しくは、付注2-2-1参照。

 


●地域活動は人々に充実感を与える

では、エリア型地域活動やテーマ型地域活動は、人々にどのようなことをもたらすのだろうか。地域活動に参加している人に対して「活動への参加を通じて、どんなことを得ましたか」と尋ねたところ、「地域の様々な人とのつながりができた」と回答した人が58.9%、「価値観を共有できる仲間ができた」が40.8%、「達成感・充実感を味わえた」が39.1%となっている(第2-2-2図)。

 

第2-2-2図 地域活動に参加して得られたことはつながり、仲間、達成感・充実感

また、別の調査で60歳以上の人に対して地域活動に参加して良かったことを尋ねたところ、「新しい友人を得ることができた」と回答した人が52.9%、「生活に充実感ができた」と回答した人が52.7%であった(第2-2-3図)。

 

第2-2-3図 地域活動に参加して新しい友人や充実感を得る高齢者が多い

このように地域活動へ参加することで、地域において新しいつながりを築くきっかけを得られる人や、精神的な充実感を感じる人が多いことが分かる。

●地域のつながりは地域力の向上を通じて住民の生活の質を高める

地域のつながりは、つながりを持つ本人の安心感や充実感を高めることで、人々の生活を豊かなものとする。しかし地域のつながりは、つながりを持つ人々のみならず、地域全体に資する価値を生み出す可能性がある。

「グループ内部またはグループ間での協力を容易にする共通の規範や価値観、理解を伴ったネットワーク」(OECD(経済協力開発機構))と定義されるソーシャル・キャピタルは、まさに、地域のつながりの典型と言えるが、このソーシャル・キャピタルは、健康増進を導いたり、教育面での成果を上げたり、犯罪発生率を低下させたりする可能性が指摘されている20

また、ボランティア活動を行う団体に対して「貴団体・グループのボランティア活動は社会的にどのような効果を生んでいると考えていますか」と尋ねたところ、「活動に関わる人達の間で絆が深まって地域への愛着が生まれた」が63.5%と最も多く、「活動対象の問題について、社会の関心を集めることができた」との回答も43.7%と多かった。つまり、地域活動は、参加する人に地域への愛着を抱かせるだけでなく、地域の問題について地域全体の関心を集めることで、解決につながりやすい状況をも生み出していることがうかがえる(第2-2-4図)。

 

第2-2-4図 ボランティア活動によって、地域への愛着が生まれた人が多い

このように、地域におけるつながりは、つながりを持つ本人に安心感や充実感を与えるのみならず、地域全体の問題解決に資する可能性も秘めていると言える。

【コラム】 地域力を測る指標ソーシャル・キャピタル
   内閣府「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」(2003年)では、ソーシャル・キャピタルが国民生活に影響を及ぼす可能性を分析し、ソーシャル・キャピタル指数21を求めている。ここで求められたソーシャル・キャピタル指数を利用し、同指数と2003年の刑法犯認知件数(人口千人当たり)および合計特殊出生率との関係を都道府県別にそれぞれ見てみると、ソーシャル・キャピタル指数は、刑法犯認知件数とは負の相関関係が、合計特殊出生率とは正の相関関係が認められた。つまり、ソーシャル・キャピタルが豊かな地域ほど、犯罪率は低く、出生率は高いことがうかがえる。したがって、ソーシャル・キャピタルつまり地域力を高めることは、社会全体の利益にも貢献し得る可能性がある。なお、ソーシャル・キャピタルに関する議論は、その概念についても様々な考え方がある段階であり、今後さらなる調査・研究が期待される。
 
ソーシャル・キャピタルと刑法犯認知件数の相関
 
ソーシャル・キャピタルと合計特殊出生率の相関

 


20  これらは、内閣府「ソーシャル・キャピタル:豊かな人間関係と市民活動の好循環を求めて」(2003年)に詳しい。
21  ソーシャル・キャピタルを構成する要素と言われている「つきあい・交流」、「信頼」、「社会参加」の程度を表すと考えられる指標をそれぞれ複数選択し、これを指数化した上で合成することで、ソーシャル・キャピタル指数を試算している(付注2-2-2参照)。

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