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全文 > 第2章 地域のつながり > 第1節 地域のつながりの変化と現状(4/5)

3.地域のつながりの希薄化をもたらした要因

ここまでで地域のつながりが希薄化していることを確認したが、以下では、なぜ地域のつながりは希薄化したのか、その要因について検証したい。

地域の希薄化をもたらした要因としては様々な点が指摘されている。例えば、「コミュニティ―生活の場における人間性の回復―」(国民生活審議会調査部会編:1969年)においては、[1]交通通信機関の発達等による生活圏の拡大、[2]人口の都市集中、[3]生活様式および生活意識の都市化、[4]機能集団の増大、[5]行政機能の拡大、[6]家族制度の変革、[7]農村における生産構造の変化が、地域の希薄化の要因19として列挙されている。これらは、今から40年前までに進行した、地域の希薄化の要因として挙げられたものであり、それ以降も地域のつながりを希薄化させ続けたものもあるだろうし、それほど影響を与えなくなったものもあると考えられる。

ここでは上記の要因を踏まえつつ、先に示した[1]10年前と比べて地域のつながりが弱くなったと回答した人が挙げた理由(人々の地域に対する親近感の希薄化、近所の人々の親交を深める機会不足、他人の関与を歓迎しない人の増加など)、[2]地域から孤立している人の特性(配偶者がいない人、子どもがいない人、雇用者、居住年数が5年未満の人、賃貸集合住宅に住む人など)を手がかりとして、ここ30年間くらいに希薄化をもたらした可能性のある要因につき、それぞれの動きを見ていくことにする。

(1)人々の意識面における変化

●深い近隣関係を望まない人が増えてきている

10年前と比べて地域のつながりが弱くなったと回答した人の38.3%が、「他人の関与を歓迎しない人の増加」を理由として挙げているなど(前掲第2-1-26図)、地域のつながりの希薄化は人々の意識によってもたらされた可能性がある。そこで、まず地域のつながりに対する人々の意識がどのように変化してきたか見ていこう。

隣近所との望ましい付き合い方について尋ねたところ、「なにかにつけ相談したり、助け合えるようなつきあい」と答えた人の割合が、73年の34.5%から2003年には19.6%にまで低下している(第2-1-28図)。そしてその一方で、「会ったときに、あいさつする程度のつきあい」との回答割合が15.1%から25.2%に高まっている。これは人々の求める地域のつながりが、深いものから浅いものへと変化していることを意味しており、意識面からも地域のつながりの希薄化が進んでいると言える。

 

第2-1-28図 隣近所との望ましい付き合いは浅い傾向

●多くの人は困ったときに助け合う関係を望んでいる

しかし近隣との関係が全く望まれなくなったわけではない。これは、あまり堅苦しくなく話し合える関係を望む人が半数を超えることからも明らかである。また別の調査で、地域での望ましい付き合い方を尋ねたところ、2004年においても、「住民全ての間で困ったときに互いに助け合う」と回答した人が36.7%、「気の合う住民の間で困ったときに助け合う」が25.8%と、合わせて6割を超えている(第2-1-29図)。このように、多くの人は、日常的には深い付き合いは望まないものの、困ったときは助け合いたいとの希望を持っており、いざというときは近隣関係を頼りにしている。

 

第2-1-29図 困ったときに助け合いたい人は6割以上

●地域への貢献意識は高まっている

人々の社会への貢献意識の推移を見ると、「何か社会のために役立ちたい」と考える人は長期的に高まる傾向にあり、90年以降は60%前後で推移している(第2-1-30図)。さらに具体的にどのように貢献したいか尋ねた結果を見ると、「自然・環境保護に関する活動」を挙げた人が37.9%、「社会福祉に関する活動」が35.8%、「町内会などの地域活動」が35.0%と、地域活動を通じて社会に貢献したいと考えている人が多いことが分かる(第2-1-31図)。つまりこれらの結果を合わせると、地域への貢献意識が高まっていることを見て取ることができる。

 

第2-1-30図 社会への貢献意識は高まっている

 

第2-1-31図 地域活動を通じて社会に貢献したいと考えている人が多い

また、NPOやボランティア活動へ現在参加していないが、今後は参加したいと希望する人の割合は51.6%で、今後も参加したくないと考える人の38.1%を大きく上回っており、地域への貢献意識の高まりが反映された結果であると考えられる(第2-1-32図)。

 

第2-1-32図 今後、NPOやボランティアに参加したい人は5割

しかし、このように参加意識が高いにもかかわらず、先で示したように実際の参加は低迷しているのはなぜだろうか。NPOやボランティア活動に参加できない要因について尋ねたところ、「活動する時間がない」との回答が35.9%と最も多かった(第2-1-33図)。これは地域活動への参加の壁として時間的制約があることを示唆している。また「参加するきっかけが得られないこと」が14.2%、「身近に団体や活動内容に関する情報がないこと」が11.1%、「身近に参加したいと思う適当な活動や共感する団体がないこと」が6.6%であるなど、地域活動に関する情報不足、身近に魅力的な活動が存在しない点も制約となっている。つまり、せっかく地域への貢献意識は高まっているにもかかわらず、様々な壁によってこれが活かされていない状態にある。

 

第2-1-33図 NPOやボランティア、地域の活動に参加しないのは時間や参加のきっかけがないため

(2)サラリーマン化

●サラリーマン化により地域のつながりが希薄化した

地域のつながりの現状を分析した際、サラリーマンは近隣関係が弱く、地域からも孤立する傾向にあることを明らかにしたが、これは、サラリーマン化が地域のつながりを希薄化させる可能性を示唆するものである。職住が分離し地域との結び付きが浅い傾向にある雇用者が増加し、農林漁業者や自営業者が減少すれば、総じて地域のつながりは希薄化することが予想されるが、分析結果はその予想が正しいことの一つの証左となる。またサラリーマンのつながりの弱さを視覚的に確認するため、従業上の地位別に、地域で助け合う地域住民がどの程度いるか見ると、雇用者については、助け合う地域住民がいない人が70.0%に上る反面、自営業は59.0%とその割合が低い(第2-1-34図)。

 

第2-1-34図 自営業者や無職の人は地域に助け合う人が多い

さてここで、就業者のうち雇用者が占める割合の推移を見ると、55年には43.5%に過ぎなかったが、その後一貫して比率が高まり、2006年には85.7%となるなど、この半世紀でサラリーマン化が大きく進展したことが分かる(第2-1-35図)。そしてこのような地域から孤立しやすい雇用者の比率が高まったことは、地域のつながりを希薄化させたことの理由の一つと考えられる。

 

第2-1-35図 進む就業者のサラリーマン化

●サラリーマンの中でも長時間働く人ほど地域活動から遠ざかる

サラリーマンの中でも長時間労働をする人ほど地域活動を行わない傾向にある。雇用者について、過去1年間にボランティア活動をしたことのある人の割合を、労働時間別に見ると、週39時間以下については30.5%であるが、労働時間が長くなるほどその率が低下し、週60時間以上については24.6%となる(第2-1-36図)。

 

第2-1-36図 労働時間が長くなるほど、ボランティア参加率は低下

またこれを片道の通勤時間別に見ると、自宅は33.1%であるが、通勤時間が長くなるほどその率が低下し、2時間以上になると21.1%に低下する。そしてこれらの結果は、拘束時間が長くなるほど、サラリーマンは地域から孤立する可能性が高まることを示唆している(第2-1-37図)。第3章で明らかにするように、最近は働き盛りの男性を中心に、長時間労働する人が増加しているが、これにより地域から孤立する人が増えている可能性がある。

 

第2-1-37図 通勤時間が長いほどボランティアに参加する割合は低下

 


19  本文では地域共同体崩壊の要因として挙げられている。

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