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全文 > 第2章 地域のつながり > 第1節 地域のつながりの変化と現状(3/5)

2.地域のつながりの変化

●地域のつながりは長期的に希薄化

ここまで地域のつながりの現状について見てきたが、近隣関係は総じて浅く、地域活動へ参加する人は少ないなど、現在における地域のつながりは、希薄であるといっても過言ではない状況であることが分かった。

しかし、地域のつながりは、昔から希薄であったわけではない。むしろ極めて強い地域のつながりの下、人々は、生産、教育、福祉など生活にかかわる多くのことを地域住民と共同で行っていた。ところが、このような強いつながりは、経済・社会環境が変化するとともに希薄化していった。1952年に公表された「地方自治世論調査」には、「近所づきあいをしないと毎日の暮らしで早速困ると言うものが約27%であり、大多数(70%)のものは日常生活に困らないと言っている」、「約半数のものは同地域に住む隣人間にあっても余り深くつきあわない方がよいとの態度をとっており、深く交際することを望んでいるものは38%である」との調査結果の概要が記されている。これは今から50年以上前においても、農業時代の「村」に代表されるような、地域のつながりなくしては生活が成り立たないといった状況からは、既に大きく変化していたことを示している。また69年に公表された「コミュニティ―生活の場における人間性の回復―」(国民生活審議会調査部会編)では、近隣の人々との結び付きが次第に希薄化している点が指摘されたとともに、地域のつながりの希薄化により生ずる問題について懸念が表明された。つまり60年代後半においては、地域のつながりが一定程度希薄化していたことがうかがえる。

このように、地域のつながりの希薄化は、最近始まったわけではなく、ここで触れた二つの報告がなされた当時も一定程度進展しており、近年においてもその流れは止まっていない。この点を明らかにするため、以下では、ここ30年程度の期間に絞って、地域のつながりの変化について検証していきたい。

●近隣関係は希薄化し続けている

まず地域のつながりの変化について近隣関係を見ていこう。近所付き合いをどの程度しているか尋ねた結果を見ると、「親しくつき合っている」が75年には52.8%と半数を超えていたが、97年には42.3%に下落している。一方、「あまりつき合っていない」が同じ時期に11.8%から16.7%に高まるなど、近隣関係の希薄化を見て取れる(第2-1-19図)。また、別の調査で、隣近所の人とどのくらい行き来しているか聞いたところ、「よく行き来している」あるいは「ある程度行き来している」と答えた人の割合が、2000年には54.6%と半数を超えていたが、2007年には41.6%に落ち込んでいる。そして、「ほとんど行き来していない」あるいは「あてはまる人がいない」と答えた人の割合は、同じ時期に22.3%から38.4%に高まっている。

 

第2-1-19図 近隣関係は希薄になっている

上記二つの調査については、ともに近隣関係の程度を聞いてはいるが、それぞれの質問内容は異なることから、単純に比較できないことに留意する必要がある。しかしながら、それぞれにおいて希薄化が確認できることに鑑みれば、75年から2007年までの間についても、全体としては近隣関係が希薄化し続けてきたと言えよう。

●町内会・自治会の加入率には大きな変化がない

次にエリア型地域活動によるつながりの変化について、町内会・自治会を中心に見ていこう。町内会・自治会については、最初に加入した上で、その後活動を行う過程を経て、つながりが生じると考えられるため、まずは加入率の変化について見ていきたい。70年に実施された調査では、20歳以上の人々に町内会・自治会への加入の有無を尋ねているが、この結果を見ると、90.2%が町内会・自治会に加入していたことが分かる(第2-1-20図)。

 

第2-1-20図 1970年の町内会・自治会への加入率は9割

また2003年に行われた別の調査では、認可地縁団体に対して対象住民の加入率を尋ねているが、加入率が90%を超える団体が66.2%と約3分の2に上っている(第2-1-21図)。

 

第2-1-21図 現在の地縁団体の加入率も高い

70年と2003年調査は、対象となる地縁団体の範囲が違うなどの差があり、直接には比較することはできない。しかしながら、地縁団体への参加率は高水準であるとの点では、30年前から現在までそれほど大きな変化がなかったと考えて良いだろう。

●町内会・自治会の活動に参加する頻度は低下した

次に実際の活動がどの程度行われているかを見よう。町内会・自治会など地縁組織への参加の程度を尋ねた結果を見ると、68年には「だいたい参加する」が町村部で70.2%、市部で49.1%と、半数以上ないし半数近くの人が、活動があるごとに参加していたことが分かる(第2-1-22図)。次に別の調査から、2007年における町内会・自治会の参加の程度を見ると、月1日程度あるいはそれ以上の頻度で参加していると回答した人の割合は12.7%となっている。

 

第2-1-22図 町内会・自治会への参加頻度は少なくなっている

これら別の時期に行われた二つの調査は、質問の選択肢などが異なることから、これらの割合を直接比較することはできない。しかしながら、68年当時の町内会・自治会の活動としては、「募金(の協力)」、「清掃(美化)」、「消毒」、「街灯管理」といった日常的なものが多く、このような活動は頻繁に行われたことが推測される(第2-1-23図)。すると、68年の「だいたい参加する」は、2007年の「月1日程度以上」と比べて、参加頻度は同等あるいはそれ以上であったと見ることが自然であろう18。こうしたことに鑑みれば、町内会・自治会への参加頻度は、68年から2007年までの間に低下していると言える。

 

第2-1-23図 町内会の役割には日常的なことが多かった

このように、町内会・自治会への加入率は高いが、先に見たように参加していない者が半数を超えるなど、参加は低調である。では、この差はどのような理由で発生するのであろうか。この点を地縁活動への参加のきっかけから見ると、「慣習やルールとして」が52.0%を占めている。これはボランティア・NPO・市民活動の16.5%と比べて高く、地縁活動については義務的な理由から参加する人が多い(第2-1-24図)。つまり、町内会・自治会については、参加する意思はないものの、半ば義務的に加入だけはしている人が少なくないことが示唆される。

 

第2-1-24図 地縁的活動は、慣習・ルールとして参加する割合が高い

●3割の人が10年前と比べ地域のつながりが弱まっていると考えている

最後に、ここ10年間における地域のつながりの変化について人々の意識から見てみよう。自分が住んでいる地域におけるつながりが10年前と比べてどのように変化したか尋ねたところ、「変わっていない」と回答した人の割合が46.5%と最も多かったが、「弱くなっている」、「やや弱くなっている」も合わせて30.9%に上った(第2-1-25図)。一方、「強くなっている」は1.7%、「やや強くなっている」は5.3%と、強くなっていると感じている人は7.0%に過ぎなかった。つまり、最近10年間においても、人々は地域のつながりが希薄化の方向にあると感じている。

 

第2-1-25図 地域のつながりは10年前に比べて弱くなっていると考える人が約3割

さらに、10年前と比べて地域のつながりが弱くなったと回答した人に、その理由を尋ねたところ、「人々の地域に対する親近感の希薄化」を挙げた人が55.3%と最も多く、「近所の人々の親交を深める機会不足」が49.8%、「他人の関与を歓迎しない人の増加」が38.3%と続いた(第2-1-26図)。

 

第2-1-26図 地域の親近感、親交機会不足が地域のつながりが弱まった理由

地域のつながりが希薄化していると考える人の多くは、地域に対する親近感が希薄化していることをその要因として挙げているが、このような意識は、地域の雰囲気の変化によりもたらされた可能性がある。地域の雰囲気の変化を把握するために、居住地域の土地柄について尋ねた結果を見ると、「庶民的でうちとけやすい感じ」と回答した人の割合が、88年に49.1%であったものが、2007年には41.3%に低下している一方で、「お互い無関心でよそよそしい感じ」と回答した人は、同じ時期に、13.1%から17.1%に高まっている(第2-1-27図)。

 

第2-1-27図 お互いに無関心で、よそよそしい地域が増えている

 


18  68年と2007年の調査は調査対象も異なる。しかし、2007年の調査は、町内会・自治会への参加頻度が高い町村部の住民も対象に含めた調査であるが、68年の市部の調査よりも、参加頻度が低くなっていることを踏まえれば、その差異は結論の方向には影響しないと考えられる。

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