目次 | 前の項目に戻る | 次の項目へ進む
全文 > 第1章 家族のつながり >第3節 家族のつながりの再構築に向けた新たな動き

第3節

家族のつながりの再構築に向けた新たな動き

第2節までに見てきたように、家族の存在を何よりも大切だと思う人は、むしろかつてに比べても格段に増えており、人々は家族のつながりを重視している。にもかかわらず、家族の一人一人が個別に行動する時間や機会が多くなり、離れて暮らす家族が増えていることなど、そのような尺度から見た家族のつながりは弱まっていると考えられる。そして、家族と一緒に過ごす時間や、家族とのコミュニケーションの機会を十分に確保できないことから、人々にやすらぎを与える、親が将来を担う子どもに対して十分に教育を行うなどといった、家族に期待される役割が十分に果たせなくなっている。

では、いかにすれば、人々が家族とのつながりを深め、家族に求められる役割を果たすことができるのであろうか。解決の方向性としては、

[1]家族と過ごす時間や機会を増やす取組を行うこと

[2]地域や社会の支援によって、家族に期待されている機能を高めること

[3]家族としてのきずなや一体感を高める取組を積極的に行うこと

の三つが考えられる。

本節では、この三つの解決の方向性に沿って、家族のつながりの再構築に向けた新しい事例や取組を紹介していくこととする。


1.家族と過ごす機会や時間を増やす取組

第1節で指摘したように、家族と過ごす時間や機会を確保できない要因としては、家族が一緒にいられないことと、家族が一緒にいても別々に行動していることの二つがある。ここでは、この二つの要因に対処することにより、家族と過ごす時間や機会を増やす取組を紹介したい。

第一の要因である、家族が一緒にいられないことについては、男性の長時間労働など仕事が多忙であることが影響している。これを改善する取組としては、ワーク・ライフ・バランス(仕事と生活の調和)を推進する企業の取組がある。また、別居によっても、家族が一緒に過ごす機会は減少するが、親世代と子世代が近所に住まう近居という形で、適度に親密な付き合いを実現している家族がある。さらに、ITを利用することにより、時間や場所の制約自体を解消し、家族内のコミュニケーションを深める取組もある。第二の要因である、一緒に家にいても家族と過ごさない状況を解消する方策としては、自然に家族と触れ合えるように家づくりを工夫している取組もある。

このように、以下では、家族と過ごす機会や時間を増やす取組として、ワーク・ライフ・バランスの推進、近居、ITを活用した交流、家づくりの工夫を紹介したい。

●ワーク・ライフ・バランスの推進

第3章で後述するように、仕事と生活の調和、つまりワーク・ライフ・バランスを実現した生活を多くの人が希望しているものの、現実には、特に男性において、仕事優先の生活を送っている人が多い(後掲第3-4-1図)。

国民生活モニターからは、「仕事にメリハリをつけて、毎日が遅くならないように早く帰る日を作る」(40代男性)、「ほとんど休みなしで仕事しているので、少しでも仕事のやりくりをして家にいる時間を作っている」(30代男性)との、家族との時間を捻出する努力も報告されたが、このような個人の努力だけでは限界があると考えられる。

このような状況下で、家族と過ごす時間を作る一つの方策として、有給休暇の積極的な取得が考えられるが、厚生労働省「就労総合条件調査」によれば、年間の有給休暇取得日数は、10年前の1996年には9.4日であったものが、2006年には8.4日となり、近年減少傾向にある。しかしながら、こうした中でも、企業の中には、有給休暇の取得を促進することにより、社員が家族と過ごす時間を大切にし、気持ち良く働くことのできる環境づくりに積極的に取り組む企業もある。

神戸に本社を置くある化学工業薬品メーカーでは、有給休暇の取得促進の観点から「アニバーサリー休暇制度」、「リフレッシュ休暇制度」、「永年勤続休暇制度」などの独自の休暇制度を設けている。「アニバーサリー休暇制度」とは、同社社長の提案により2001年度から導入された、社員が結婚記念日や誕生日の前後15日間に必ず1日有給休暇を取得するという制度である。家族にとって重要な記念日に休暇を取ることによって、家庭や自己を改めて見直し、創造的で生産性の高い働き方と充実した自由時間を組み合わせたメリハリのある生活を実現することを目的としている。制度は社員にも好評で、取得率は9割にも達している。次に「リフレッシュ休暇制度」とは、34歳から5年ごとに有給休暇5日を計画的に取得させ、休暇中の費用については、領収書があれば一定金額まで支給する制度である。ほとんどの社員が家族旅行などで心身のリフレッシュを図り、取得率は9割を超えている。また、「永年勤続休暇制度」とは、勤続10年ごとに社員に表彰金と有給休暇の取得権を与える制度である。特徴的なのは、休暇中には旅行をしなければならず、しかも休暇終了後には報告書の提出が求められていることである。本制度も対象者の7、8割が利用している。同社の休暇制度の取得率が高い理由には、社内で休暇を取得できることを対象者に通知し、休暇の予定、さらには結果を報告させるなど、取得状況の把握に努めていることが挙げられる。こうした休暇制度により、普段は業務が多忙な社員も、有給休暇が取得しやすくなり、家族との旅行や思い出作りなど、家族との時間を持つことができ、また、休暇後は新鮮な気持ちで仕事に取り組めるという。

このように、企業が仕事と生活の調和を意識した取組を進めていけば、仕事の生産性を高めながら、家族と過ごす時間や機会を増やしていくことが可能になると考えられる。

●近居による新しい交流の形

結婚した人が親と別居する割合が増加し続ける一方で、若い世代を中心として自分や配偶者の親の近くに住む、いわゆる「近居」が増えている。94年と2007年を比べてみると、既婚者が親世代と二世帯住宅や同じ敷地内に住んでいる割合は3.4%から8.5%へ、1時間以内の距離に住んでいる割合は51.6%から67.5%へとそれぞれ高まっている(第1-3-1図)。

 

第1-3-1図 増える親世代との近居

この傾向は、若年層で特に強く見られ、20代既婚者の「敷地内別居」、「親世代の距離が1時間以内」を合わせた割合は78.4%、30代既婚者では82.2%にも達している12

実際に近居についてどのように感じているかを、国民生活モニターに尋ねたところ、「娘夫婦は共働きなので、娘の帰りが遅くなる時はメールしてもらう。自分は食事を作っておいて、(娘夫婦に)食べに来てもらうようにしている」(50代女性)、「二世帯住宅なので、庭の手入れや病気の際の看護の他、家族の誕生日やお盆の祭りなど、諸行事を一緒に行っている」(60代女性)、「食事を作って取りに来てもらったり届けたりと家を行ったり来たりしている」(60代女性)、「スープの冷めない距離に住んでいるので何かと理由を付けて1ヶ月に一度以上皆で集まってお茶や食事をしている」(60代女性)など、家族とのつながりを深めている様子が報告された。

このように近居により、親世代と適度な距離感とプライバシーを保ちながらも、困った時には助け合ったり、機会があるごとに一緒に行事を楽しんだりするような関係が構築されている。どの家族でも近居することが可能なわけではないが、それぞれの生活を楽しみながら、家族のきずなも大切にしたいと考える人々の意識に合ったつながりの形であると考えられる。

●ITの活用によって家族のつながりを深める

仕事が多忙である、あるいは、離れて暮らしているなど、家族との交流を阻む時間的、空間的制約を、ITの利用により取り除き、家族とのコミュニケーションを深める動きも見られる。

携帯電話・PHSやインターネットを使うようになってからの生活の変化について尋ねてみると(複数回答)、友人との連絡が容易になったと回答する割合が最も高かったが、家族との関係についても、「他の家族の行動が把握できるようになった」が22.3%、「家族の信頼関係が深まった」が10.5%と、携帯電話などの利用により、家族とつながりを深めていることがうかがえる回答もあった。ただし、「自分の部屋で過ごす時間が長くなった」、「家族に内緒の話ができた」など、逆に行動の個別化の原因となっていることがうかがえる回答もあったが、いずれもその割合は1割未満にとどまっている(第1-3-2図)。

 

第1-3-2図 IT機器は家族のつながりを深める一方で、行動の個別化を促進する可能性もある

国民生活モニターからも、「家族が揃う時間が少ないのでメールなどを利用している」(70代男性)など、多忙な生活の中で、メールなどの使用により、家族との交流を図っている事例が寄せられている。このようにITを活用することにより、時間や場所の制約があっても、家族間でコミュニケーションを取り合うことが可能になっている。

●家族SNSを利用した家族とのコミュニケーション

さらに、国民生活モニターからは、ITを利用して家族とのコミュニケーションを促進する工夫として、ホームページやブログ13に家族の話題や日常の出来事を書き込んだり、家族の写真を掲載することにより、家族内で情報を共有する取組が寄せられた。例えば「家族でブログを作成している」(40代女性)、「家族のホームページを作って出張の多い夫にも子どもの顔を見られるようにしている」(30代女性)、「ネット上に共有フォルダを作り家族間だけで写真の公開をする」(50代女性)などである。

しかしながら、ホームページやブログの場合は、他人も閲覧することが可能であるため、家族内のプライベートな話題などについては、自由に書き込むことが難しいこともあろう。そこで、家族や親戚限定で利用でき、家族のプライバシーを確保しながら、情報共有や情報交換ができる新しい仕組みとして注目されるのが、「家族SNS」と呼ばれるサービスである。SNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)14とは、近年我が国でも急速に普及しているインターネット上の会員制コミュニティーサービスであるが、このSNSを家族向けに応用したものが「家族SNS」である。ある企業が提供する「家族SNS」では、家族同士で日記を書いたり、連絡事項を書き込む「伝言板」機能、写真を掲載し、家族や親戚同士で見ることができる「アルバム」機能、家族の誕生日や結婚記念日、入学式などを登録しておき、予定を共有できる「カレンダー」機能などがある。 

これらの機能を活用することにより、時間がすれ違っても、離れて暮らしていても、家族が何をしていたか、どんなことに興味を持っているのかなどが把握でき、久しぶりに会ったときにも会話が弾むなど、家族のコミュニケーションが深まると考えられる。このサービスを実際に利用したユーザーからは、「単身赴任などで遠くに住んでいたり、忙しくて時間が合わない場合などでも、写真やブログなどを共有できることで、話題が増えた」、「離れて住んでいても皆が大きな家族の一員であると実感できた」といった感想が寄せられているという。

このように、家族SNSを始めとしたITを活用したサービスは、時間的・空間的制約を取り払い、家族のコミュニケーションを深める仕組みとして注目される。

●家族が触れ合う家づくりの工夫

第1節で、家族と過ごす時間や機会が十分でない要因としては、若者を中心に、家の中にいても家族と過ごさない人がいることを指摘した。こうした状況を克服するために、家族が個室にこもらず、自然に触れ合えるように、家づくりや間取りを工夫している家族や住宅メーカーがある。

国民生活モニターに、家族のつながりを深めるための家づくりや間取りの工夫について尋ねたところ、例えば、「リビングを家の中心に据え個室に行く際には必ず通過する構造にした」(50代女性)、「テレビやパソコンをリビングに置き、自然と家族が集まるような工夫している」(40代男性)など、リビングに家族が集まるようにする取組や、「間仕切りを設けない」(70代女性)、「個室のドアを開け放すことにより家族の気配をいつも感じられるようにする」(40代女性)など、完全な個室状態を作らない取組が報告された。いずれも家族が個室にこもらずに一緒に過ごすことができるような家づくりの工夫である。 

その他にも、「家族が作った切り絵、手芸品や家族が獲得したトロフィーなどを並べ思い出を語り合う」(70代女性)、「リビングに百科事典や地球儀などを置いて家族で調べたりしながら交流を深める」(40代女性)という事例もあった。さらには、「物事の加減が分かる人間になって欲しい」との思いから、「家を新築した際あえて薪の焚き風呂にし、子どもの仕事として薪割りを手伝わせていたところ、子どもが大人になり独立した今でも薪割りを手伝いに来てくれるなど、親子のつながりの接点になっている」(50代女性)といった事例も寄せられた。

また、ある住宅メーカーでは、これから本格的な子育て期に入る団塊ジュニア世代向けに、家族のきずなや家族の一体感をコンセプトとした住宅を販売している。同社では、家族と一緒に過ごす時間を大切に育む空間提案として、300のプランを用意し、例えば、家族が多目的に利用できる土間のような半屋外の空間や、リビングを吹き抜けにすることにより家族の気配を常に感じることができる開放的な空間などを提案している。また、最初から子ども部屋をあえて設けず、子どもが小さい時には間仕切の壁のない大きな空間の中で子どもを遊ばせたり、親と子どもが同一の空間で過ごせるようにし、子どもの成長に応じて個室が必要になれば、間仕切収納家具を利用して個室を作る、といった家族の状況に合わせて柔軟に間取りを変更できるような提案もなされている。購入者からは「家族団らんの場がにぎやかで一人一人の様子がよく分かる」などという声が寄せられている。

このように、家づくりを工夫することにより、家族がばらばらに行動することが避けられ、自然にお互いに触れ合う機会がもたらされると考えられる。特に、第2節でも指摘したように、親子のコミュニケーションは子どもの成長にも大きな影響を与えると考えられる。家づくりの工夫によって、家の中で自然と親子がコミュニケーションを図り、子どものコミュニケーション能力や学力の向上が促されることも期待される。


2.地域の支援により、家族の機能を高める取組

子どもを生み育てることや、介護を始めとした高齢者の生活支援は、従来は、おおむね家族により担われていた。しかしながら、少子化や高齢化が進展する中では、家族の負担が過重にならないように、地域や社会で支えていくことも必要である。

ここでは、子育てや高齢者の生活支援といった、従来家族中心で担っていた機能を、地域や社会が支援する動きとして、子育てを支援するNPOの活動と高齢者の一人暮らしを家族と地域で支えるサービスの事例を紹介する。

●子育てを支援するNPOの取組

第2節では、子育てについて協力・支援が必要な場合、自分あるいは配偶者の親にまず頼る人が多く、その次にはファミリー・サポート・センターなど公的な子育てサービスやベビーシッターなどの有料の子育て支援サービスなどの外部サービスに頼る人も相当数いることが指摘された。別居化が進む中では、親の手助けを誰でもいつでも得られるわけではなく、子育てを支援する外部サービスの充実が求められている。こうしたことから、地域の中では、育児期の親が気軽に利用できる子育て支援サービス活動も見られる。

宮城県にあるNPOでは、地域の子育て環境の改善と家族の支援を目的として、市の指定管理者として育児支援施設の運営や育児相談、厚生労働省の委託の緊急サポートネットワーク事業、子育て支援サポーターの人材バンク事業等、様々な子育て支援活動を展開している。

育児支援施設では、親子が好きなときに来て遊べるだけでなく、同世代の親子同士で友達になったり、スタッフに日頃の育児の悩みについて相談をすることができる。この施設では、親の用事の内容を問わない、安価な料金での一時保育も実施しており、専業主婦であっても気軽に子どもを預けることが可能になっている。また、働く母親の急な残業・出張に対して、NPOが実施している講座などで養成されたサポートスタッフが、有料での一時預かりや送迎をする緊急サポートネットワーク事業も実施している。さらに人材バンク事業では、子育て経験や子育て支援経験のあるサポーターを登録し、支援を望む利用者との仲介を行っている。

このように、地域のNPOにより、多様な親のニーズに応えるサービスが提供されており、祖父母などと離れて暮らしていても、母親が子育て負担を一人で背負わなくて済むようになっている。今後、このような支援サービスが各地で充実し、子育てしやすい環境が醸成されることが期待される。

●高齢者見守りコミュニケーションサービス

第2節で、別居する家族は、同居する家族に比べて、家族間の交流が少ないことが分かった。特に高齢者の一人暮らしの場合は、孤独感に悩まされたり、生活に支援が必要な状態であっても、その状況を家族や地域の人々に伝えることが困難な場合もあると考えられる。

こうした中で、宮崎県のある町では、町と通信会社と共同で、人の気配を察知するセンサー付きの端末を通じて、家族が離れて暮らしていてもお互いの気配を感じることを可能にするシステムの実証実験が行われた。このシステムは「つながり感通信」と呼ばれ、町に住む高齢者と、離れて暮らす高齢者の家族だけでなく、地域の友人やボランティアの人などが、端末の画面で、互いの在室状況を確認することができる。また、高齢者は、相手が在室の場合は、離れて暮らす家族や地域の人々と端末画面を通じて話をしたり、不在の場合でもメッセージを残せるなど、交流を図ることができる。さらに、ボランティアの人などは、高齢者が在室かどうかや、家族や友人とコミュニケーションを取った頻度を把握することができ、適宜、端末画面を通じて声かけや、災害情報などの緊急情報の連絡も行える。

この実証実験により、離れて暮らす家族からは「様子がわかって安心する」、地域の人々からは「ちょっとした様子見が頻繁にできてよい」、また、高齢者からは「人とつながるのが楽しくなりパソコンを始めた」という声が聞かれた。高齢者にも使いやすい仕組みで好評だったこともあり、当初3か月の予定だった実証実験は約半年間延長された。現在、通信会社はこのシステムの商品化を進めている。

このように、技術革新により新たな高齢者用サービスが生まれ、離れて暮らす家族と地域の人々が一人暮らしの高齢者を見守ることができ、また、高齢者にとっても、家族や地域とのつながりを実感することができるようになることが期待される。

 

高齢者見守りコミュニケーションサービス

3.家族の一体感を高める取組

家族の素晴らしさやその価値を実感する機会を持つことによって、家族のつながりはさらに強まると考えられる。第2節で見たように、家族を何より大切と考える人は多く、既に多くの家族が、家族のきずなや一体感を高めるような様々な取組を行っている。そこで最後に、このような家族の取組、また、家族のきずな再生に向けた政府、自治体の取組を紹介しよう。

●家族の一体感を高める取組〜国民生活モニター調査から

国民生活モニターに、家族のきずなや一体感を高めるための取組について尋ねてみたところ、多くの家族が、それぞれの独自の工夫を凝らした、家族の価値を実感できる魅力的な取組を実践していることが分かった。

まず、家族全員が共通して一つのことを行う取組が多く見られた。例えば、「家族全員の写真を毎年撮る」(50代女性)、「家族史を毎年作っている」(30代女性)、「同じ本を読んで感想文を交換し合う」(60代女性)、「家族で俳句や川柳を作っている」(40代女性)、「家族全員で自治会主催のスポーツ大会などのイベントに参加する」(40代女性)などである。

また、家族で一緒の時間を過ごせるように、家族内でルールを定めている取組も見られた。例えば、「テレビは居間に一台しか置かない」(40代女性)、「夕食はテレビを消して今日の出来事などを話しながらみんなで食べる」(40代女性)、「家族全員が必ず家の仕事をするように役割分担している」(40代女性)、「常にリビングでそれぞれの用事を行う、(自称)リビング家族」(50代女性)などである。

親子のコミュニケーションを図る取組としては、「子どもと交換日記をしている」(30代女性)、「寝る前に子どもに読み聞かせをしている」(30代女性)、「子どもと一緒にお風呂に入る」(30代男性)などもあった。

このように、多くの家族は、各家庭の実情に応じながら、日常生活の中でそれぞれ工夫を凝らし、家族が積極的に触れ合う機会を設けることにより、家族のつながりを深める努力を行っている。

●年中行事を通じて家族のつながりを深める

普段の日常生活の中で家族のつながりを深める取組を見てきたが、特別に年中行事を家族と共に行うことも、家族間のコミュニケーションを深める貴重な場となっている。

国民生活モニターに、同居家族と別居家族別に、一緒に実施している年中行事について尋ねたところ、お正月、お盆といった伝統的な年中行事には、同居家族、別居家族とも一緒に行っているとの回答が多かった。また、同居家族については、家族の誕生日、母の日、父の日、子どもの学校関係の行事への参加など、家族に関係ある行事を行っていると回答する割合も相当数を占めた(第1-3-3図)。

 

第1-3-3図 年中行事を通じてつながりを深めている

また、家族独自の行事として、「1週間に1回、同居・別居家族含め集まり、お菓子作り、工作などについて、年配の人が教える日、若者が教える日、子どもが教える日、紙芝居などを設け、それぞれが教えたり、教えてもらったりしている」(40代男性)、といった回答もあった。

このように、日頃は、多忙のために家族との時間が取れなくても、年中行事の機会を利用して、家族とのコミュニケーションを深めている人も多いと考えられる。

●家族のつながりを支援する行政の取組

本節でこれまで見てきたように、家族のきずなを深めるために、個人、家族、企業、団体などが様々な取組をしている。こうした中で、国でも家族のきずな再生のための施策に向けた動きが見られる。2006年6月に少子化社会対策会議で決定された「新しい少子化対策について」に基づき、家族・地域のきずなを再生する国民運動として、「家族の日」(11月の第3日曜日)や「家族の週間」(「家族の日」の前後1週間)の制定、家族・地域のきずなに関する国、地方自治体による行事等を実施している。

また、地方公共団体では、このような家族のきずな再生に向けた取組を既に実施しているところもある。鳥取県東伯郡三朝町では、全町統一して2004年9月より毎月15日を「憩の日」15と設定し、保育園、小学校、中学校の児童・生徒・保護者を対象に、「食事中はテレビを消す」、「テレビは1日2時間まで」、「1日テレビをつけない」などの段階を設けてノーテレビデーを実施している。その結果、保護者からは「テレビを消すことで、子どもたちの様子が普段よりもよく見え、いかにテレビやビデオに子守りをさせていたかに気が付いた」と言った意見もあり、この取組が家族のあり方を見直す契機にもなっている。山形県南陽市では、2002年4月より「えくぼプラン」と称した学校が休みの日の過ごし方の提案をしている。その一つが「家庭の日」を各家庭で設けることである。この日には、「わが家のやくそく」を作ること、家族ぐるみのお付き合いをこころがけること、家族で出かけたり、体験活動などに参加することとし、毎年「えくぼカレンダー」を配布し、家庭にあったすごしかたを選ぶことで、家族としてのあたたかさや、会話や団らんを楽しむ機会を増やそうとしている。

このように、家族のつながりを深めるために、今後も国、地方公共団体が、個人、家族、さらには地域や企業とも連携し合い、社会全体が一体となって取り組むことが求められよう。

【コラム】 家族がいて良かったと思うこと
〜国民生活モニターから寄せられた事例〜
  家族は人々にとってかけがえのない存在である。しかし、日々の生活の中で家族がそばにいることが自然であり、その存在の意義や価値について改めて考えることは少ないと言えよう。
  そこで、「家族がいて良かったと思うこと」について、国民生活モニターに尋ねたところ、多岐にわたる報告がなされたが、大きく分けると[1]精神的な充実感を得られること、[2]子育ての楽しさを味わえること、[3]困った時に助け合えること、に関する内容が多く見られた。ここではその一部を紹介することとしたい。
精神的な充実感を得られること
「家族が居る家に帰る安心感は毎日感じている。存在自体が必要不可欠なものになっている。」(30代男性)
「心のやすらぎになる。」(50代女性)
「家族団らんが一番落ち着く。」(60代男性)
「嫌なことがあっても家族の顔を見るとホッとする。」(30代女性)
「日常の些細なことを一緒に喜んだり、楽しんだり、共感できること。」(30代女性)
「人のために生きることで、自分が成長できた。」(40代女性)
「家族で一緒に食事しながら、会話や団らんができる安心である。心のささえになる。」(50代女性)
「言葉には出さなくても精神的に繋がっていると思うと、勇気が湧いてくる。」(30代男性)
「うれしい事を家族全員で祝う時。」(40代男性)
など、家族の存在そのものが人々の心の支えになっている様子がうかがえる。
コラム絵1
子育ての楽しさを味わえること
「子ども達がいるから、色々な体験も出来るし、さみしさも感じないし、毎日忙しく、楽しく、明るく、していられると思う。子ども達を通して、地域や学校関係にも幅ひろく、接する事ができると思う。」(40代女性)
「子どものがんばった姿をみんなで応援してあげられる時」(40代女性)
「子供のおかげで成長できたし、親の気持ちも理解でき、視野も広くなった。子供を通して喜びがたくさんあった。今は夫と二人で穏やかな毎日を送っている。」(50代女性)
「仕事で疲れて帰った時、子供の笑顔をみるとほっとする。子供が頑張っている姿を見ると元気づけられる」(40代男性)
「子育ての大変さもありますが、成長していく喜び。家族に対しての思いやりの心を感じた時。」(60代男性)
など、子育ての楽しさに加えて、子どもを通じて得られたことや体験についても多く寄せられた。
困った時に助け合うこと
「病気をした時に本気で心配してくれる家族をみて、がんばることができた。自分を大切にできるようになった。」(20代女性)
「具合が悪くなった時など離れていても電話したり、相談したり出来た。別居しているが、子供がいて、孫がいると言う事が良かったと思う。」 (60代女性)
「自分が精神的に疲れているときに癒してくれたとき」(20代男性)
「人間関係につまづいた時。不調な時、良き理解を示しなぐさめになってくれる。」(50代女性)
「会社でつらい事があっても、家に帰ってくるとあたたかく迎えてくれて、ニコニコの笑顔を見るとホッとする。また、会社の愚痴などを聞いてくれる。」(30代男性)
など、病気だけでなく、精神的な面でも家族に助けられている報告があった。
コラム絵2
   

 


12  内閣府「国民生活選好度調査」(2007年)による。
13  ブログとは「個人や数人のグループで運営され日々更新される日記的なウェブサイトのことで、内容は、個人の趣味、雑記等を含め多種多様なものとなっている。」(総務省「情報通信白書」(2006年版)より)。
14  SNSとは「友人知人等の社会的ネットワークをオンラインで提供することを目的とするコミュニティ型のインターネットサービスである。」「SNSの特徴としては、〔1〕会員制、〔2〕登録者の非匿名性、〔3〕各種コミュニケーションツールの充実、の3点がある。」(総務省「情報通信白書」(2006年版)より)。
15  11月15日は「全町ノーテレビデー」とし、子どもがいない家庭にも呼びかけ全町民あげての取組としている。

テキスト形式のファイルはこちら

-
目次 | 前の項目に戻る | 次の項目へ進む