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全文 > 第1章 家族のつながり > 第1節 家族のつながりの変化と現状(4/4)

(2)離れて暮らす家族の増加

これまで、同居している家族が一緒に家で過ごす時間が少ないこと、家にいても家族と過ごさないことなどにより、家族の行動が個別化し、その結果家族のつながりが弱まっていることを見てきた。

では、同居していない家族、すなわち別居している家族においては、つながりに変化が見られるのだろうか。別居家族は同居家族と比べて、離れて暮らしていることにより、一般的に交流を持ちにくいと考えられ、つながりが弱いことが想定される。そこで、以下では、別居している家族に焦点を当てて、どのようなつながりがあるのか、また、つながりに変化が見られるのかについて検証していきたい。

[1]別居化の進展


かつては、子どもが結婚し新しい世帯を築いた後も親の世代と一つ屋根の下に同居をすることが多かった。しかし最近では、親世代と子ども世代の別居が増えている。ここでは、このような親世代と子ども世代の別居が増えている理由について明らかにした上で、別居家族の付き合い方について見ていこう。

●親の世代と子ども世代との別居化が進展

まず、親の世代と子ども世代の別居はどのくらい増えているのかを見てみよう。

親(65歳以上)と既婚の子どもが同居している割合(同居率)の推移を見ると、80年には52.5%と半数を超えていたが、その後低下傾向が続き、2005年には、23.3%となった(第1-1-26図)。

同居率は低下しており、言い換えれば、別居化が進展していると言えよう。

 

第1-1-26図 親世代と既婚の子ども世代の別居化が進展している

●子ども世代との同居に対する意識の変化

このような別居化の進展の背景には、人々の意識の変化があると考えられる。子ども世代と別居を希望する人の割合を見ると、69年はわずか11.8%であったが、2006年には35.9%と大幅に上昇している(第1-1-27図)。

 

第1-1-27図 親世代の子ども世代との同居に対する意識が変化している

さらに、別居を希望する理由について尋ねたところ、「子ども世代とは生活習慣(生活時間、食生活、家事のやり方など)が異なるから」が54.2%、「お互い人間関係の面で気を遣うから」が50.9%とそれぞれ50%を超えており(第1-1-28図)、この結果から、子ども世代に気兼ねなく老後の生活を独立して送っていきたいとする親世代の意識をうかがい知ることができる。

 

第1-1-28図 子ども世代との同居を希望しない理由は親世代の独立志向の高まり

また、別の調査で、子どもや孫との付き合い方に関する親世代の意識について、その変化を見てみよう。「いつも一緒に生活できるのがよい」と回答した人の割合は、80年には59.4%と6割近くを占めていたが、近年大幅に低下し、2005年は34.8%にとどまっている(第1-1-29図)。一方で、「ときどき会って食事や会話をするのがよい」は30.1%から42.9%、「たまに会話をする程度でよい」も7.1%から14.7%に高まっている。この結果から、親世代は全面的付き合いから、もう少し軽い付き合いを好むようになったことが分かる。

そして、このような親世代の意識の変化により、一緒に生活を送る同居よりも適度な距離を保ちつつ、独立した生活を送ることのできる別居を好むようになったとも考えることができる。

こうした意識の変化を背景に親世代と子ども世代の別居が増加していると考えられる。

 

第1-1-29図 親世代が望む子どもや孫との付き合い方に変化が見られる

[2]別居家族間の付き合い方の変化

●同居家族間に比べて少ない別居家族間の交流量

一つ屋根の下に暮らす同居家族は、生活を共にする中で、会話を交わす、食事を一緒にとるなど、自然に家族間の交流が生まれやすい。しかし、別居家族は、家を訪ねて行ったり、一緒に外食をするなど、何らかの用事や目的を持った行動がなければ、家族との交流は生じにくいと考えられ、必然的に別居家族の方が交流量が少なくなることが想定される。

そこで、同居家族と別居家族について、家族間の交流量を比較してみよう。交流量を計る指標として、同居家族では日常の出来事を話したり、悩み事を相談したりする頻度を、別居家族では電話で世間話をしたり、家を行き来したりするなどの頻度を用いることとする。

これらの頻度は対面して、あるいは電話を通して直接会話するという意味でコミュニケーションの頻度を表していると言える。ここで同居家族や別居家族とのコミュニケーション頻度を見ると、同居家族については、「週3日以上」と回答した人の割合が8割以上を占めているのに対し、別居家族については、わずか14.0%にとどまった(第1-1-30図)。また、「週1日未満」と回答した人の割合は、同居家族ではわずか4.3%であるが、別居家族では61.4%と6割を占める。この結果から、同居家族に比べると、別居家族の方が家族間の交流量が少ないことが分かる。

 

第1-1-30図 別居家族は家族間の交流量が少ない

●別居家族間における付き合い方の変化

別居家族の交流量は同居家族に比べて少ないことが分かったが、以下では、別居家族間の付き合い方をもう少し詳しく見るとともに、付き合い方がどのように変化しているのかを明らかにしたい。

別居している親がいる人(配偶者の親も含む)、あるいは別居している子がいる人に対して、「別居している親または子どもと日頃どのような付き合いをしているのか」を尋ねたところ、約半数の人が「電話で世間話」、「家を訪ねて行ったり来たり」、「困ったことを相談」を行っており、また約2割の人が「一緒に旅行やドライブ」、「家事の手伝いや身の回りの世話」、「孫や子の世話」を行っていることが分かった(第1-1-31図)。次に、それぞれの行動を行っている人の割合について、85年から2007年の間にどのように変化したかを見ると、「電話で世間話」、「家を訪ねて行ったり来たり」といった、さしたる目的や用事がなくても行き来するような付き合い方をする人の割合は減少していることが分かる。一方で、「困ったことを相談」、「家事の手伝いや身の回りの世話」や「孫や子の世話」など、意図が明確であり、互いに助け合うような付き合い方をする人の割合は増加している。このような傾向から、離れて暮らす家族との付き合いは用事がなくても日常的に付き合うというものから、必要のあるときに付き合うとの方向へ変化しているとも考えられる。

 

第1-1-31図 別居家族とは必要のあるときに付き合う方向に変化している

●部分的、形式的な付き合い方を好む意識の変化

では、人々は別居する家族とどのような付き合い方を望んでいるのだろうか。また、付き合い方に対する意識は変化しているのだろうか。

別居家族とは概念が異なるが、親戚世帯との望ましい付き合い方を尋ねた結果を見ると、「なにかにつけ相談したり、助け合えるようなつきあい」といった全面的な人間関係を望ましいとする人の割合は、73年には50%を超えていたが、その後は一貫して低下し、2003年には32%まで落ち込んでいる(第1-1-32図)。その一方で、「一応の礼儀を尽くす程度のつきあい」といった形式的な人間関係を望ましいとする人の割合は8%から20%にまで大きく上昇しており、「気軽に行き来できる」ような部分的な人間関係を望ましいとする人の割合と合わせると7割弱にまで高まっている。

このように、親戚世帯との付き合い方については、かつての全面的な付き合いを好む傾向から、近年では部分的あるいは形式的な付き合いを好む傾向に変化してきている。前述の別居家族との付き合い方の変化の背景には、このような意識の変化が影響している可能性もある。

 

第1-1-32図 部分的、形式的な付き合い方を好む傾向に変化している

●別居家族との交流量が減少するキーワードは、「男性」、「年齢」、「子どもなし」、「別居家族から1時間以上の居住地」

ここまでは、別居家族間の交流量は同居家族間と比べて少ないことや、その付き合い方にも変化が見られることを見てきた。そこで、どのような特性を持つ人が、別居家族とのつながりが弱い傾向にあるのかを、統計的に分析してみよう。

分析結果からは、女性よりも男性、子どもや孫がいる人よりもいない人の方が別居家族との交流量が少ないことが分かった(第1-1-33表)。男性の別居家族との交流量が少ないことについては、女性と比べて総じて労働時間が長いこと、家事や子育ての相談をすることが少ないことなどによると考えられる。子どもや孫がいる人の交流量については、孫を会わせることなどを通じて別居している祖父母世帯と行き来する機会を持っていることによると考えられる。

 

第1-1-33表 男性や子・孫のいない人は別居家族との交流量が少ない

別居家族との交通量が少なくなる要素

男性であること

子どもや孫がいないこと

年齢が高いこと

別居家族と容易に行き来できない場所に住んでいること

(備考)

1. 内閣府「国民生活選好度調査」(2007年)により作成。

2. 別居家族との交流量と個人の属性との関係を回帰分析したもの。

3. 交流量は、別居している親との「[1]『電話で世間話をする』、『家を訪ねて行ったり来たりする』、『困ったことがあったら相談をしたりうけたりする』のいずれか」、「[2]『家族の手伝いや身の回りの世話に行ったり来たりする』、『孫(子)の世話に来たり、預けたりする』のいずれか」の頻度の合計。

4. 5%水準で有意義な結果が得られた変数を示したもの。

5. 詳しくは、付注1-1-2参照。


また、年齢が高くなるほど交流量が少なくなること、別居家族から1時間以上の距離のところに居住している場合は、1時間以内の距離に居住する家族や敷地内別居の家族と比べ、交流量が少なくなることも分かった。年齢が上がれば、体力や健康上の問題から行動の自由が制約され、別居する家族を訪ねることが少なくなると考えられる。別居家族と会うために多くの時間を要する場合も交流の機会を自然に減少させると考えられる。


●別居家族と近居の方が交流量が多い

別居家族と離れて住む場合、その交流量が減少することを見たが、以下ではこの点を詳しく見ていこう。

別居家族と「容易に行き来できる」人と「容易に行き来できない」人に分け、別居家族とどの程度の頻度で「電話で世間話」、「家を訪ねて行ったり来たり」、「困ったことを相談」を行うかについて見ると、「容易に行き来できる」人については、16.6%が「週3日以上」と回答したのに対し、「容易に行き来できない」人についてはそのように回答した人が6.9%と低かった(第1-1-34図)。

別居家族との付き合いについては、近くに住んでいる人の方が交流が多いなど、つながりを持つ機会を多く持っていると言えよう。

 

第1-1-34図 近居の方が別居家族との交流量が多い

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