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全文 > 第1章 家族のつながり > 第1節 家族のつながりの変化と現状(3/4)

[3]つながりを持てない背景


[2]では、家族と過ごす時間や機会を十分に持たない人、言い換えれば、つながりが弱いと考えられる人の特性を見てきたが、以下ではこれがどのような理由によるものかを詳しく見ていこう。

家族との時間について、「あまり取れていない」、「全く取れていない」と回答した人に、その理由を尋ねたところ、「自分又は相手の仕事が忙しいから」、「子ども又は自分が塾や習い事で忙しいから」との回答が合わせて81.0%と大半を占めた(第1-1-14図)。つまり、大人は仕事で、子どもは塾や習い事などで忙しく物理的に家にいないことが、家族と過ごす時間の確保が困難となる主な要因と考えられる。

 

第1-1-14図 家族との時間が取れないのは仕事が忙しいから

一方、仕事や勉強の多忙さに比べるとその割合は低いが、「それぞれの趣味やつきあいで忙しいから」、「お互いの時間を尊重しているから」との回答も合わせて15.8%に上っている。これは、たとえ家族全員が家の中にいたとしても各自が自らの意思により別々に行動している状況があることを示唆している。

そこで、以下からは、つながりが弱くなった背景として、[1]家族が一緒に家にいることを阻む要因、[2]家にいても家族と過ごすことを阻む要因について検証していく。

ア)背景その1〜家族が一緒に家にいることを阻む要因

●家で過ごす時間はほとんどの層で減少傾向

家族が一緒に家にいることを阻む要因を明らかにするために、まず家族が家の中で過ごす時間がどのように変化しているかを見よう。ここでは、平日家族がどのくらい在宅しているのか、各時間帯における起床在宅率(自宅にいて起きている人の割合)を、父親、働く母親、専業主婦、小学生、中学生のそれぞれについて見ていくこととする。まず、家族が父、母、小学生、中学生から構成されると仮定した上で、家族全員が家にそろう時間がどのくらいあるかを見ると、全員の起床在宅率が50%を超える時間帯は、午後8時台と午後9時台のみとなっている(第1-1-15図)。午前7時台の朝食や午後7時台の夕食・団らんの時間帯は父親以外の起床在宅率は50%を超えているが、父親の起床在宅率が最高となる午後9時以降の時間帯になると小学生は就寝してしまう。このように、父親とほかの家族が家で過ごす時間にはすれ違いが見られる。

 

第1-1-15図 家族それぞれの起床在宅率がすべて50%を超えるのは午後8時〜午後9時台のみ

さらに、70年と2005年で比較してみると、小学生、中学生、父親、母親とも多くの時間帯で起床在宅率が低下していることが分かる(第1-1-16図)。総じて低下傾向が強く現れている午後6時以降の時間帯について、それぞれの平均起床在宅率の推移を見ると、父親が50.2%から44.9%へ、働く母親が64.7%から60.9%へ、中学生が71.8%から68.6%へとそれぞれ減少していた。特に、父親と中学生については低下が顕著であり、時間で見ると、父親は最高で13.9%(午後8時)、中学生は最高で22.4%(午後6時)と大幅に低下している。その一方で、小学生は午後6時以降の平均起床在宅率が54.8%から61.6%へ、主婦は74.9%から77.4%へと高まっている。なお小学生については、午後9時以降の遅い時間帯において起床在宅率が高まっているが、このことから現在の小学生は、70年に比べ就寝時刻が遅くなり夜更かしする傾向にあることが分かる。

 

第1-1-16図 父親や中学生を中心に家族の起床在宅率は低下

●労働時間は減少傾向にあるものの、依然として長時間労働の傾向が強い

これまで見てきたように、長時間労働は家族とのつながりを持てなくなる要因の一つである。そこで、我が国の総実労働時間について見てみると、80年代から減少傾向が続いており、2006年には約1,800時間となっている。80年代頃から始まった週休2日制の導入の効果もあり、労働時間は減少しており、家族とのつながりが強まる方向にあるようにも見える。

しかし、1週間の労働時間別従事者数割合(後掲第3-1-21図)を見ると、60時間以上働く従事者の割合は95年の16.8%から2005年の17.9%へと逆に高まりつつある。

このように長時間働く人の増加に伴い、帰宅時間が遅い父母も増えてきている(第1-1-17図)。まず父親の帰宅時間を見ると、約5割が午後8時までに帰宅しているものの、就寝する小学生が増え始める午後9時以降に帰宅する人も3割を超えている。これを2001年と比較すると、午後9時以降に帰宅する割合が5%以上増加しており、帰宅時間が遅くなる傾向がうかがえる。また、働く母親については大半が午後7時までに帰宅しているが、2001年と比べるとその割合がやや低下し、午後7時以降8時までに帰宅する割合が高まっている。

 

第1-1-17図 帰宅時間の遅い父母が増えている

●塾や習い事通いで忙しい子どもたち

家族が一緒に家にいることを阻む要因を主に大人の側から見てきたが、では子どもについてはどうだろうか。先に紹介した調査では、子どもが家族との時間が取れない理由として、「塾や習い事で忙しい」との回答も挙げられたが、その現状について見てみよう。

2006年において子どもが塾に通う割合は、小学5年生で36.5%、中学2年生で42.7%である(第1-1-18図)。また、別の調査ではあるが、82年では小学4〜6年生で21.8%、中学生では34.9%となっている。調査対象者の抽出方法などが異なるため、これらの調査の結果を単純に比較することはできないが、この20年余りで塾に通う子どもの割合が高まっているとの傾向を読み取ることはできよう。特に、大都市(東京23区内)について見ると、2006年において学習塾に通う小学5年生は51.6%(「進学塾」30.5%、「補習塾」14.1%、「その他」5.6%)に達しており2、大都市を中心に子どもの塾通いが過熱している状況を見て取ることができる。

 

第1-1-18図 子どもの通塾率は上昇している

次に、塾や習い事に通う子どもが何時に帰宅するかを尋ねたところ、午後7時までに帰宅するという回答が44.4%と多数を占めているものの、午後9時以降の帰宅も27.6%と、3割弱の子どもが夜遅くまで塾や習い事をしており、塾や習い事に通うことによって帰宅時間が遅くなり、家にいる時間が短い子どもが少なくないことがうかがえる(第1-1-19図)。

そして、この結果からは、仕事で忙しい大人のみならず、子どもについても放課後に塾や習い事に通う人が増えていることが、家族が一緒に家にいることを阻む要因になっていると言うことができよう。

 

第1-1-19図 塾・習い事からの帰宅時間は3割弱が午後9時以降

イ) 背景その2〜家にいても家族と過ごすことを阻む要因

●若者は家にいても家族と過ごさず一人で行動する割合が高い

ア)では、家族が家に一緒にいる時間が短くなっているため、家族と触れ合う機会が減少していることを見てきた。しかしながら、家にいる時間が十分に長くても、必ずしもつながりを持てるとは限らない。なぜなら、家にいたとしても家族と別行動を取っている場合、家族とのつながりを持っているとは言い難いからである。そこで、家族のつながりを弱めている可能性があるもう一つの要因として、家にいても家族と過ごすことを阻む要因について見ていくこととする。

平日の夜帰宅してから就寝までの時間を、家族と過ごさず一人で過ごしている人はどのくらいいるのだろうか。家にいても家族と過ごさない層を把握するために、ここでは社会生活基本調査から、「休養・くつろぎ」、「趣味・娯楽」など平日夜に主として家の中で行うと思われる行動3を選定し、午後6時から午前0時までの間にそれらの行動を「一人で」行った割合を見ることとした(第1-1-20図)。年齢層別に見てみると、10代および60代以上において、一人で過ごす時間が長くなっている。特に高校生(16〜18歳)は、一人で3時間以上過ごす人の割合が3割を超えており、家族と別行動を取っている傾向が顕著に現れている。また、一人で3時間以上過ごす小学生(10〜12歳)は3%強であるが、中学生(13〜15歳)になると20.8%と急に高くなり、子どもが成長するにつれて親と独立して行動する状況がうかがえる。

一方大人(19〜59歳)では、一人で3時間以上過ごす人の割合は15.2%と中高生に比べて低い。また60代以上では、一人で3時間以上過ごす人の割合が21.0%と高くなっているが、これは配偶者との死別などにより家族と過ごす時間が減少するためと考えられる。

以上の結果から、家にいても家族とではなく一人で過ごしがちな層として注目すべきは、主に中高生といった若者であることが分かった。そこで以下では、若者が家にいてもなぜ家族と一緒に過ごさないのか、その要因について見ていこう。

 

第1-1-20図 中学生と高校生は家にいても一人で過ごす割合が高い

●家にいながら若者は一人で勉強をしたりテレビを見たりしている

家にいながら家族と一緒に過ごさない若者が多いことを見たが、このような若者は一人で何をしているのだろうか。10歳から18歳までの男女のうち、平日午後6時から午前0時までに一人でいる時間が3時間以上の者について、一人でいた時間を行動別に分解して見た(第1-1-21図)。その結果、「学業・学習・研究」に費やす時間が全体の40.8%と最も長く、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」(20.9%)、「休養・くつろぎ」(13.9%)、「娯楽・趣味」(9.5%)がそれに続いている。つまり若者は一人で、勉強をする、テレビを見る、趣味や娯楽をするなどしながら過ごしていると言える。このうち、勉強や新聞・雑誌を読む以外の行動については、家族と一緒に行うことが可能と思われるものもあるが、若者の場合は一人で行うことが多いことが推察される。

 

第1-1-21図 家で一人で過ごす若者の行動の種類は、学業、テレビ、休養などが多い

●若者はインターネットの利用時間が長い

若者は家にいても家族と一緒に行動しない傾向にあることを見たが、これはどのような理由によるものだろうか。ここでは、従来から存在するテレビに加え、近年目覚ましく普及しているIT(情報通信技術)関連機器に着目して、その利用状況や家族のつながりに与える影響を見ていこう。

まず、テレビやIT関連機器が現在どのくらい普及しているか見てみよう。テレビの世帯普及率は、80年にはほぼ100%に達している(第1-1-22図)。また、百世帯当たりの保有台数は2005年には252.0台4に達しており、世帯平均の人数が2.55人5であることを勘案すると、一人一台の保有に近い状況となっていると言えよう。若者が一人で過ごす主な行動の一つがテレビ視聴であることを見たが、このように世帯で一台ではなく一人一台にまでテレビが普及したことが、その背景にあると考えられる。

 

第1-1-22図 IT関連機器等の普及率の推移

また、IT関連機器は既に大半の世帯に普及し、携帯電話は2006年で86.8%、パソコンは2007年で71.0%の世帯が保有している。インターネットは世帯普及率が2000年の34.0%から2006年の79.3%まで伸長し、利用人口も総人口の約7割弱に相当する約8,700万人6に達している。

インターネットの普及と共に利用時間も長くなっている(第1-1-23図)。1日当たりのインターネットの平均利用時間は2004年で37分とそれほど長くはない。しかし、これをインターネット利用者の平均利用時間で見ると、約1時間16分となっている(第1-1-24図)。また、年齢層別では若い人ほど、より長い時間インターネットを利用しており、13〜19歳では約1時間48分と平均を大きく上回っている。

 

第1-1-23図 伸び続けるインターネットの利用時間

 

第1-1-24図 10代、20代でインターネット利用時間が長い

●子どもがテレビゲームに費やす時間は長い

また、テレビやインターネットのほかに、近年の子どもの家での過ごし方として特徴的なものにテレビゲームが挙げられよう。テレビゲームは普及した当初に比べ、年々技術の高度化が進み、ゲームの内容も面白いものとなってきていることから、子どもがテレビゲームに費やす時間も増えている可能性がある。そこで、1日当たりのテレビゲーム利用時間を見ると、小学生平均で1時間03分、中学生平均で1時間といずれも1時間以上7となっている。特に、小学生男子と中学生男子では、それぞれ3割以上が、1日当たり2時間くらい以上テレビゲームを行っている(第1-1-25図)。

 

第1-1-25図 小中学生男子の3割以上が1日2時間くらい以上テレビゲームをしている

このようにIT関連機器やテレビゲームの普及は、家庭内で若者が一人で過ごす時間を増加させ、家族の行動の個別化を促進している可能性があるとも言えるだろう。

 


2   株式会社ベネッセコーポレーション「第4回学習基本調査」(2006年)による。「進学塾」、「補習塾」、「その他」の数値は、回答者数を母数として算出したもの。
3   生活行動のうち「身の回りの世話」、「食事」、「学業」、「家事」、「介護・看護」、「育児」、「テレビ・ラジオ・新聞・雑誌」、「休養・くつろぎ」、「学習・研究」、「趣味・娯楽」、「受診・療養」、「その他」を主に家庭内で行う行動とみなした。
4   内閣府「消費動向調査」(2005年)による。
5   総務省「国勢調査」(2005年)による。
6   総務省「通信利用動向調査」(2006年)による。
7   株式会社ベネッセコーポレーション「第1回子ども生活実態基本調査」(2005年)による

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