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全文 > 第1章 家族のつながり > 第1節 家族のつながりの変化と現状(2/4)

2.家族のつながりの変化とその背景

家族のつながりは従来と比べ、どのように変化してきているのだろうか。ここでは家族のつながりの変化を「同居している家族」と「別居している家族」の二つに分けて見ていくこととする。

なお、家族のつながりを測る尺度には様々なものがあろうが、以下では家族が一緒に過ごす時間、家族と共に何らかの行動を行う頻度を「交流量」としてとらえ、交流量の変化から家族のつながりの変化を分析していく。

(1)家族行動の個別化

同居している家族とは、食事や団らんなどの時間にその日にあったことを話したり、時には相談をしたりと、特に意識しなくても強いつながりが生まれやすい。しかし、同居していても必ずしも強いつながりが生まれるとは限らない。そこで、まず始めに、同居している家族のつながりの現状について明らかにしていく。以下では、同居家族と一緒に過ごす時間や一緒に行動する機会などの交流量を把握した上で、つながりが十分取れているのか、十分取れていないとすれば、特にどのような人々がつながりが取れていないのか、また、つながりを阻害する要因とは何か、それぞれ検証していきたい。

[1]家族で一緒に過ごす時間の現状

●働き盛りの男性の約3割が家族と過ごす時間が十分ではないと感じている

同居している家族と過ごす時間が十分に取れているか尋ねたところ、「十分取れている」あるいは「まあ取れている」と回答した人の割合は、合わせて82.4%となった(第1-1-3図)。これにより、多くの人は家族との時間が取れていると感じていることが分かるが、男女別で見ると男性よりも女性の方が「(十分、まあ)取れている」との回答割合が6.9%高くなっている。さらに、男性について年齢層別に見ると、30代で31.6%、40代で35.1%と、働き盛りの男性の約3割が家族と過ごす時間が十分ではないと感じている(第1-1-4図)。また、長時間働く人の割合は男性の30代および40代で高くなっており(第3章で詳述)、この点も合わせて考えると、長時間労働によって人々は家族との時間を持ちにくくなっている可能性があると言えよう。

 

第1-1-3図 8割の人が家族との時間が取れていると感じている

 

第1-1-4図 男性は20〜49歳の層で家族との時間が十分でないと感じる割合が高い

●同居家族と一緒に行動する機会は週3〜4日くらいが多いが、週2日以下の人も少なくない

次に、一週間のうちで同居家族と過ごす機会をどのくらい持つことができているかを見てみよう。同居家族との過ごし方には様々な形態があるが、以下では「会話」、「団らん」、「食事」について見ていこう。どの程度の頻度で、同居家族とともに「会話」、「団らん」、「食事」を行っているか尋ねたところ、それぞれ6〜7割の人が「週5日以上」と回答し、「週3〜4日」との回答も含めると約8割となるなど、多くの人は週の半分以上は家族と過ごす機会を持っていると言える(第1-1-5図)。

しかし、同居家族と行う「会話」、「団らん」、「食事」の頻度が、「週1〜2日」または「ほとんどしない」と回答した人の割合は、それぞれ15.6%、21.2%、15.6%に上り、家族と過ごす機会を十分持つことができない人も少なくないことが分かる。

 

第1-1-5図 家族と過ごす機会が週2日以下の人も15〜20%程度存在

●同居家族と過ごす時間が短い人の割合が高まっている

家族と過ごす時間は、以前に比べて増えているのだろうか。ある企業の調査によると、平日に家族全員がそろう1日当たりの時間が、「なし」または「0時間超〜2時間台」と回答した人の割合は、1985年の42.1%から2005年には49.2%に、また休日についても、18.3%から31.0%にそれぞれ高まっているなど、全員が一堂に集まる時間を十分に持てない家族が増えている(第1-1-6図)。

 

第1-1-6図 全員が一堂に集まる時間を十分に持てない家族が増えている

また、別の調査で小学校4年生から中学校3年生までの子どもを持つ親が平日に子どもと接する時間を尋ねたところ、2000年、2006年ともに、約6割の父親が「30分くらい」以内と回答しており、平日父親が子どもと接する時間が短いことがうかがえる(第1-1-7図)。特に、「ほとんどない」と回答する人の割合が、2000年の14.1%から2006年の23.5%へと大幅に増加する結果となっており、父親の4人に1人が平日ほとんど子どもと接していないことが分かる。母親については、父親よりも接する時間が長いものの、子どもと接する時間が「30分くらい」以内と回答した人の割合が18.5%から24.4%へと高まっている。

 

第1-1-7図 父親の4人に1人が平日ほとんど子どもと接しない

●家族に相談できない人も約3割存在する

ここまでは、同居家族とのつながりを、同居家族と過ごす時間や機会で見てきたが、時間や機会だけではなく、「会えなくても、気持ちはつながっている」と言えるような精神的なきずながあるかどうかも、家族のつながりを見る上で重要な視点であると考えられる。

家族に相談ごとが話せないような状況では、精神的なつながりを感じることは難しいと考えられることから、ここでは相談や悩みごとを家族に話しているかを見てみよう。重要なことを相談したり、悩みごとを話す相手を4人まで挙げてもらい、その中に家族がいるか見たところ、同居家族がいるにもかかわらず相談する相手として家族を挙げなかった人が、男性で33.8%、女性で29.6%も存在した(第1-1-8図)。本節の冒頭で、多くの人が家族に対して精神的なやすらぎや愛情を求めていることを見たが、このような結果は、家族に精神的なきずなを求めながらも得られていない人が存在していることを示唆しているとも言えよう。

 

第1-1-8図 約3割の人が家族には相談をしない

[2]家族とのつながりが薄い層はどこか

●つながりを持てないキーワードは、「長時間労働」、「男性」、「独身者」

[1]では、「家族と過ごす時間」、「家族と過ごす機会」から家族のつながりの現状を見てきたが、その結果、多くの人が家族と過ごす時間や機会を十分持っている一方、一部ではあるが、そのような時間や機会を十分持たない人、言い換えればつながりが弱い人がいることが分かった。

このように、家族とのつながりが弱い人には、何か共通した点があるのだろうか。以下では、つながりが弱い人の特性を統計的に分析した。なお、同居する家族がいる人のうち、専業主婦や退職した高齢者は家で過ごす時間が長いため、家族と過ごす時間が多いと考えられる。一方、就業者は、平日は仕事があるために家にいないことが多く、家族とつながりを持てない可能性が高いと言えよう。そこで、つながりの弱くなる可能性がある就業者を分析対象として、「労働時間」、「通勤時間」、「雇用形態」などの諸条件が同居家族との交流にどのような影響を与えるかを見ることとした。一週間のうち同居家族と一緒に「会話」、「団らん」、「食事」、「買い物」を行った日数の合計を同居家族との交流量とみなし、同居家族との交流量を被説明変数として、年齢や性別、労働条件などの諸属性で回帰分析を行った。

その結果、男性の方が女性よりも家族との交流量が少なく、独身者よりも既婚者の方が交流量は多いことが分かった(第1-1-9表)。また、労働時間が長くなるほど家族との交流量が少なくなるとの結果も得られた。

 

第1-1-9表 労働時間が長い人や独身者は同居家族とのつながりが弱い

同居家族との交流量が少なくなる要素

・男性であること(女性に比べて少ない)

・年齢が高くなること

・労働時間が長くなること

・独身者であること

(備考)

1. 内閣府「国民生活選好度調査」(2007年)により作成。

2. 同居家族との会話、団らん、食事、買い物の頻度の合計を家族との交流量とみなし、年齢や性別、労働時間などの諸属性との関係を回帰分析で推定し、1%水準で、有意な結果が得られた変数を示したもの。

3. 詳しくは、付注1-1-1参照。

 


●外での拘束時間が長い人ほど平日家族と過ごせない

先の分析から、労働時間が長い人ほど1週間当たりの同居家族との交流量が減る傾向にあることが分かったが、仕事が忙しい人たちは、実際1日のうちで何時間家族と過ごしているのだろうか。仕事があると推定される平日の労働時間と往復の通勤時間を足した時間別に、家族と一緒に過ごす時間を見た。それによると、男女とも平日の労働時間と往復の通勤時間を足した時間が長くなるほど、「30分未満」あるいは「30分から1時間未満」との回答の割合が高い(第1-1-10図)。特に、平日の労働時間と往復の通勤時間を足した時間が14時間以上の男性では、20.4%が「30分未満」と、ほとんど家族と顔を合わせない状態となっていることが分かる。なお、女性は男性よりは家族と一緒に過ごす時間が総じて長いが、平日の労働時間と往復の通勤時間を足した時間が12時間以上の女性では、家族と過ごす時間が「30分未満」との回答割合が13.6%にまで高まる。

 

第1-1-10図 1日の労働時間や通勤時間が長くなるほど家族と一緒の時間は減る

労働時間と往復の通勤時間を足した時間が長いほど、家族と過ごす時間が減少することが分かったが、労働時間と同居家族と会話を交す頻度との関係を見ても、労働時間が長くなるほど会話の頻度が少なくなる傾向が見られた(第1-1-11図)。特に、労働時間が12時間以上の層では、会話の頻度として「週1〜2日」、あるいは「ほとんどない」と回答した人の割合が男性では33.4%、女性では30.8%に達している。以上のことからも、労働時間の長い人は家族とのつながりが弱い傾向にあることがうかがえる。

 

第1-1-11図 労働時間が増えるほど家族との会話が減る

●家族と過ごす時間が短いのは、20代男女と30代と40代の男性

次に、家族と一緒に過ごす時間を男女年齢層別に見てみよう。男性は、20代で家族と過ごす時間が最も短く、年齢層が上がるにつれて家族との時間が増える傾向にある(第1-1-12図)。これについては、20代は独身者が多いこと、30代と40代は長時間労働をする人の割合が高いこと(後掲第3-1-21図)が反映されていると考えられる。また、60歳以上の年齢層については、定年退職を契機として家族との時間が大幅に増えることを読み取ることができる。

 

第1-1-12図 家族と過ごす時間が短いのは20代男女と30代、40代の男性

一方、女性は、20代で家族と過ごす時間が最も短くなる点は男性と同様である。しかし、男性と異なり、30代になると家族と過ごす時間が大幅に増加するが、これはこの年代が育児期と重なるためと思われる。また、70歳を過ぎると家族と過ごす時間が短くなるが、これは配偶者との死別などが影響していると考えられる。

このように、家族と過ごす時間は、個人のライフサイクルの段階によって変化する。そしてライフサイクルで見ると、家族と共に過ごす時間が短い人、すなわち家族とのつながりが弱いと考えられる人は、独身者が多い20代男女、長時間労働者の割合が高い働き盛りの30代と40代の男性に多いと言うことができよう。

●我が国は父親と母親で家族との交流量のギャップが大きい

ここまで、平日に家族と一緒に過ごす時間が、年代、性別、労働時間などによりかなり異なることを見てきたが、ほかの国と比べてどうであろうか。未成年の子どもを持つ親が、平日に子どもと過ごす時間について比較してみると、我が国は母親が平均7.6時間と調査対象国中で最も長いのに対し、父親は平均3.1時間と韓国に次いで短い(第1-1-13図)。その結果、父親と母親が子どもと過ごす時間の差は4.5時間と、6か国中最大となっている。このような状況の背景としては、30代、40代という育児期の男性の労働時間が長いことに加えて、我が国では、父親は仕事優先、母親は育児や家事を優先するという役割分担意識が根強く残っていることもあると考えられる。

 

第1-1-13図 我が国では父親が平日子どもと過ごす時間が少ない

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