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本文 > 第3章 高齢者の人生の再設計 > 第3節 高齢者の生活と社会貢献活動

3.壁を打ち破る動き

社会貢献活動の担い手としての期待が高まる中、高齢者の活躍の場は広がりつつある。ここではそうした先進事例として、医療・福祉やまちづくり、子育て支援といった地域密着型の活動と、広く舞台を海外に求める高齢者の活動を紹介する。

●地域の介護や子育てを支える高齢者

千葉県のある福祉NPOの場合は、地元の町内会の高齢化に伴い、現在の代表者が「自治会内の助け合い組織」を作ろうと思い立ったことが法人設立のきっかけとなった21。このNPOでは、[1]助けあいふれあい事業、[2]障害者支援事業、[3]介護保険事業22、[4]居住地の地方公共団体からの受託事業23やファミリー・サポート・センターの4つの事業を柱としている。このうち、主軸となる「助けあいふれあい事業」では、会員は「ふれあい切符」という点数チケットを購入し、介護保険対象外の訪問サービスなどを利用するときに謝金・運営費などをふれあい切符を利用して支払い、協力できる会員がサービスを提供するという、会員全員がサービスの受け手にも担い手にもなる双方向の仕組みを用いている。現在、賛助会員を含めて約1,600人の会員がいるが、男女別では男性が3割程度、年齢別では65歳以上の高齢者が8割程度を占める。高齢者と専業主婦の余暇時間の有効活用を目的としているため、サービス提供を担う時間を1人2時間に限定し、「無理せず、細く、長く」活動を続けられるように配慮している。

一方、神奈川県のある子育て支援NPOの場合は、シニアの余暇時間とノウハウを子育て支援に活用している。このNPOでは、近隣の親と子が集まる「広場」を開設し、スタッフや学生ボランティアのほか、子育てサポーターと呼ばれるボランティアが子どもの遊び相手やピアノの演奏など一人一人の経験や能力を活かした活動を行っている。約20名いる子育てサポーターの8割が55〜80歳までのシニア世代で、近隣の高齢者NPOの登録会員がボランティア・メニューの中から、この子育て支援NPOでの活動を選択・希望して参加している24。活動に参加している高齢者からは、「自分の役割がある」、「子どもからエネルギーをもらえる」、「自分の子育て期の経験や反省を活かしつつ、子育てに参加できる」といった声が寄せられており、大きなやりがいを見出している様子がうかがえる。

 
21

この項の記述は、主に高齢社会対策の総合的な推進のための政策研究会「高齢者の社会参画に関する政策研究報告書(NPO調査編)」(2005年)による。

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ケアプラン作成、訪問介護サービス、福祉用具貸与、グループホーム、デイサービスなど。

23

高齢者生活支援サービス(家事援助、介助など)、外出支援サービス(車での送迎)など。

24

この高齢者NPOが提供するボランティア・メニューはそれぞれにコーディネーターが決められており、参加者側と受入側の相互の満足度を定期的にチェックするシステムが取られている。仮に、いずれかの満足度が低い場合は、改善を勧告するなどの措置を講じることもある。

 

●現役時代の経験を活かして国際貢献

地域活動に貢献する高齢者が増える一方で、現役時代の経験や技術を活かし、海外に活躍の場を求める高齢者もいる。独立行政法人国際協力機構(JICA)が派遣するシニア海外ボランティア25の人数を見ると、特に2000年度以降に急激に増加しており、2004年度は男女合わせて374人となっている(第3−3−15図)。派遣時の年齢別では60代前半が35%、後半が20%で合わせて55%となっており、定年退職後のシニア層がこうした活動の重要な担い手となっていることが分かる(第3−3−16図)。

高齢者による国際貢献活動の例として、東京都のあるNPOの活動を紹介する。このNPOでは、商社OBを中心とした海外経験の豊富な人材約1,500名を活動会員として登録し、JICAの専門家派遣事業やシニア海外ボランティアへの人材の推薦、地方自治体の国際化協力・外国企業誘致への協力、中小企業の販路開拓、海外進出などの支援、外国企業の対日ビジネス支援、大学および小・中・高校向け講師派遣など、国内外の様々なニーズに対する協力を行っている。

こうした活動のうち、JICAの専門家派遣事業やシニア海外ボランティア事業に関しては、アジア、中南米、中東欧などの国に、輸出振興や地場産業振興などを支援するアドバイザーとして多くの活動会員が派遣されている。具体例としては、中央アジアのある国で外国貿易実務(市場開拓、契約、船積み、クレーム対応など)の講義を行ったケース、南西アジアのある国で5人のボランティア(繊維メーカー、商社などのOB)が現地の工場を回って生産・加工工程における技術指導や生産性の向上につながる改善を提案したケースなどがある。

また、小・中・高校向けの講師派遣グループでは、児童・生徒向けの「国際理解教育26」への講師派遣以外に、地方自治体からの受託事業として2003年度から日本の学校に転入してくる外国籍の小・中学生に対する日本語指導や、(日本の生活・学校への)適応教育を実施している。これは、当該国の駐在経験を持つ活動会員が講師となって、毎週1回、2時間の個別指導を約6ヶ月から1年行うものであり、3年間で中国語、韓国語、タガログ語(フィリピン)、ロシア語圏の児童・生徒合わせて28人を指導した。

第3−3−15図 急激に増加したシニア海外ボランティア

第3−3−15図 急激に増加したシニア海外ボランティア

第3−3−16図 60代が支えるシニア海外ボランティア

第3−3−16図 60代が支えるシニア海外ボランティア
 
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「シニア海外ボランティア」は、日本政府による政府開発援助(ODA)の一環として、海外でのボランティア活動を支援する制度で、外務省と国際協力事業団(当時)により90年にスタートした。開発途上国からの要請に基づき、計画・行政、公共・公益事業、鉱工業など九つの協力分野について40〜69歳(派遣時の年齢)の専門家を原則として1〜2年程度派遣する。2006年1月末時点で51カ国、700名のシニア海外ボランティアを派遣している。

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総合学習の時間(1〜数回程度)を活用して各国事情や日本との関係を紹介するほか、中学・高校では国際学科などの選択科目として半期もしくは通年のプログラムを実施している。

* * *

●活動的な高齢者が地域の子育て力を高める

これまで見てきたように、現在の高齢者はかつてよりも健康に恵まれ様々な面で活動的であり、その豊富な経験を活かしてより積極的に社会貢献活動に参加するようになれば、子育て支援を始めとした地域活動を活性化させる大きな契機となろう。自分の孫や近所の子どもたちを見守ろうという意識を持つだけでも、子育て世代にとっては大きな助けとなるだろう。現在高齢者が社会貢献活動に参加しようとするに当たって感じている「壁」を取り払い、そうした可能性を大きく広げていくことは、地域の子育て力を高めることとなろう。

 
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