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本文 > 第3章 高齢者の人生の再設計 > 第2節 高齢者の就業:意識と現実
第2節
高齢者の就業:意識と現実

第1節では、高齢者がこれまでと比べて、健康面や消費面などでより活動的となっていることを見た。本節ではそれらも踏まえ、高齢者が働き続けようとしたときの環境について検討する。

1.高齢者の就業意欲

●我が国高齢者の労働力率は国際的に見て高水準

まず、我が国の高齢者就業の現状を見てみよう。年齢層別の労働力率を見ると、男性では50代までは90%台前半を維持しているが、60代前半では70.3%、60代後半で46.7%と、60歳を境に急速に低下する(第3−2−1図)。女性についても、40代後半では7割以上だった労働力率は、50代後半の段階で60.0%となり、以後60代前半40.1%、後半24.0%と低下していく。このように、男性は概して60歳を境に、女性は50代後半から60代にかけて、職業生活からの引退プロセスをたどっている。

他の先進諸国と比較すると、我が国の60代前半の男性の労働力率はスウェーデンや韓国、アメリカより高く、ほかのヨーロッパの国々よりも大幅に高い(第3−2−2図)。60代後半においても同様である。女性についても、60代前半の労働力率はスウェーデンよりは低いものの、アメリカや韓国と同水準であり、ほかのヨーロッパの国々より高い。このように、我が国の高齢者の労働力率の水準自体は多くの国々に比して高い。

第3-2-1図 男性の労働力率は60歳を境に急激に低下する

第3-2-1図 男性の労働力率は60歳を境に急激に低下する

第3-2-2図 我が国男性の労働力率は国際的に見て高い

第3-2-2図 我が国男性の労働力率は国際的に見て高い

●経済上の理由から働く高齢者が多い

我が国の高齢者が就業している要因について見てみよう。就業者にその理由を聞いたところ、男女別、年齢層別のいずれにおいても「自分と家族の生活を維持するため」、「生活水準を上げるため」といった「経済上の理由」を挙げた者が大半を占めている(第3−2−3図)。年齢層が上がるにつれて、「健康上の理由」、「いきがい、社会参加のため」との理由も増えているが、65〜69歳でもそれほど多いわけではない。

第3-2-3図 経済上の理由で働く高齢者は多い

第3-2-3図 経済上の理由で働く高齢者は多い

このように、高齢者の生活は必ずしも「悠々自適」というものではなく、経済上の必要から働かざるを得ないという面が大きい。ただし、前節で見たように高齢者の消費意欲が以前よりも旺盛になっていることから、生活に困っているというほどではなくても、これまでの生活水準を維持するために就業している高齢者もある程度いる可能性がある。

●希望する働き方は短時間勤務

若年者や育児後の女性については、正社員としての就業を希望しても、パート・アルバイトとしての就職しかできない者が多いことが問題であったが、高齢者については事情が異なる。役員を除いた雇用者に占めるパート・アルバイトの割合は60〜64歳で54.0%、65〜69歳で68.4%とほかの年齢層に比べて高い11が、正社員になれずにパート・アルバイトになった人はそれほど多くないと考えられる。

パート・アルバイトとして働いている高齢者で正社員への転職を希望している者の割合は、60〜64歳の男性で2.2%、65〜69歳では0.6%とほかの年齢層と比べてかなり低い(第3−2−4図)。また就業希望者のうち、パート・アルバイトとしての就業を希望する男性の割合は、55〜59歳では24.2%であったものが、60〜64歳で57.8%、65〜69歳では56.5%と高くなる(第3−2−5図)。このように高齢者は、余り時間的な拘束が強くないパート・アルバイトとしての就業を希望する傾向にある。

第3-2-4図 パート・アルバイトの高齢者は正社員への転職願望が低い

第3-2-4図 パート・アルバイトの高齢者は正社員への転職願望が低い

第3-2-5図 60代になるとパート・アルバイトを希望する就業希望者の割合は増加する

第3-2-5図 60代になるとパート・アルバイトを希望する就業希望者の割合は増加する
 
11

総務省「就業構造基本調査」(2002年)。

 

高齢者がこのような働き方を希望する背景には、その健康状態がある。高齢者に肉体的な面から見た就業可能性を尋ねたところ、59歳までは男性の8割前後が「フルタイムとして働くことが可能」と回答したが、60歳以降その比率は急速に低下し始め、65歳では41.8%、69歳では27.5%に過ぎなくなる(第3−2−6図)。他方、「職場・勤務の条件によっては就業可能」と回答した高齢者が65歳で45.0%、69歳では45.5%いる。このようにフルタイムとして働ける人は加齢とともに少なくなるが、全く働けない人は60代ではまだ少数であり、パート・アルバイトとして柔軟に働くことを希望する高齢者が多い。

第3-2-6図 加齢とともにフルタイムで働くことができる割合は減少する

第3-2-6図 加齢とともにフルタイムで働くことができる割合は減少する
 
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