目次  前の項目に戻る  次の項目に進む
本文 > 第2章 女性のライフサイクルと就業 > 第2節 女性の継続就業を妨げる壁

2.継続就業を妨げる壁の現状

●子育てと仕事を両立できる環境が整っていない

女性が出産後も就業を継続するためには、どのような環境が必要なのだろうか。本節では、どのような属性の女性が就業している傾向にあるのかを、統計的に調べてみよう。

女性の就業に影響を与える要因を分析した結果、まず、0〜3歳の子どもがいると就業している確率は低いことが分かった(第2−2−6表付注2−2−2)。また4〜6歳の子どもを持っていても、0〜3歳の場合ほどではないが、やはり就業している確率は低い。配偶者がいる場合も就業確率は低く、また配偶者の収入が高いと就業確率は低い傾向にある。これは配偶者の収入が高い場合、女性が無理には働かない場合があることを示唆している。さらに配偶者の労働時間が長い場合も女性の就業確率は低く、親と同居していると女性の就業確率は高い。最後に、居住地における待機児童率4が高いほど就業確率は低い。

小さな子どもを持つほど女性が就業しなくなるという点は、[1]子どもが小さいうちは自分で面倒を見たいとの希望、[2]小さな子どもを持ちながら就業することの困難、などの要因を反映していると考えられる。実際、出産前に仕事を辞めた女性にその理由を尋ねてみると(複数回答)、「自分の手で子育てしたかった」との回答が53.6%と飛び抜けて多い(第2−2−7図)。しかし同時に、小さな子どもを持ちながら就業する環境が整備されていないことを示唆する回答も多く、「両立の自信がなかった」が32.8%、「就労・通勤時間の関係で子を持って働けない」が23.3%、「育休制度が使えない・使いづらい」が17.9%、「手助けしてくれる親族がいなかった」が13.7%、「子を持って働くことへの職場の無理解」が8.3%、「子どもの預け先がない」が6.4%となっている。このように、小さな子どもを持つ女性については、自らの希望で離職する場合も多いが、子育てと仕事の両立環境が整っていないため、やむを得ず職から離れる場合も多いことがうかがわれる。

就業の継続を阻害するものを就業の「壁」と言い換えると、育児と仕事の両立が難しいことはまさにその壁であると考えられる。しかも、以下に述べるとおり、その壁は更に何重にもそびえている。本節では、これらの壁について順次分析していくこととする。

第2-2-6表 子どもの有無、配偶者の有無、親との同居などが女性の就業に影響を与えている

第2-2-6表 子どもの有無、配偶者の有無、親との同居などが女性の就業に影響を与えている

第2-2-7図 出産前に仕事を辞める理由は、子育てと仕事の両立環境が整っていないこと

第2-2-7図 出産前に仕事を辞める理由は、子育てと仕事の両立環境が整っていないこと
 
4

待機児童率=待機児童数/(利用児童数+待機児童数)

●育児休業の取得が困難な女性

出産前に就業していた女性は出産前後に、[1]退職する、[2]育児休業を取得せずに就業を継続する、[3]育児休業を取得する、のいずれかを選択することになる。育児休業を取得して就業を継続した女性の割合は、79年以前に結婚した女性の1.5%から、95年から99年までに結婚した女性の11.0%まで大幅に増えている(第2−2−8図)。しかし、育児休業を取得せずに継続就業した女性の割合は23.7%から10.8%へと減少しており、出産を契機に退職した女性は逆に増加している結果となっている。

第2-2-8図 出産退職する女性は依然として多い

第2-2-8図 出産退職する女性は依然として多い

それでは、なぜ育児休業制度の導入後であっても、出産退職は減少していないのだろうか。出産退職した女性にその理由を尋ねたところ、17.9%が「育休制度が使えない・使いづらい」点を挙げている(前掲第2−2−7図)。したがって、育児休業の取得が容易であれば、出産退職者の一部は就業を継続した可能性がある。

育児休業制度を利用しなかった女性にその理由を尋ねたところ、4割強が「職場の雰囲気や仕事の状況から」と回答している(第2−2−9図)。この調査は育児休業を取らずに就業を継続している女性を対象としたものであり、育児休業を取得できなかったため退職した女性の状況を示しているわけではない。しかしながら、育児休業が制度上可能であっても職場の事情で取れず、やむなく退職する女性も相当数いるものと推察される。

第2-2-9図 職場の雰囲気や仕事の状況が育児休業の取得を躊躇させる

第2-2-9図 職場の雰囲気や仕事の状況が育児休業の取得を躊躇させる

●育児休業から復帰した後の問題

育児休業を取得したとしても、復帰後に継続就業の壁に直面する場合がある。育児休業の取得可能期間は通常は1年であり、企業が独自の休暇を加えない限り、出産1年後には職場に復帰することとなる。つまり育児休業後に復職しても多くの場合は子どもの年齢が1歳前後であり、0歳児ほどではないにしても目が離せない状態であることには変わりがない。

このため育休後に職場に復帰するに当たって、夫婦のいずれもが仕事をしている間、多くの場合子どもを保育所に預ける必要が生じる。しかし現状では、保育所に子どもを預けたいと考える親の希望が必ずかなえられるわけではない。政府は2期にわたるエンゼルプランや待期児童ゼロ作戦に基づき、過去10年間で約40万人の保育所受入児童数を増加させてきたが、特に大都市では、入所希望児童数が受入可能児童数を上回る傾向にあり、2005年には1〜2歳児を中心に全国で約2万3,000人の待機児童が存在する(第2−2−10図)。本項冒頭でも示したとおり、待機児童率の高い地域に居住する女性の就業確率は低い傾向にあり、このような状況では安心して職場に戻ることが難しいことを示している。

保育所に入所できれば問題がすべて解決されるわけではない。夫婦ともに残業や休日出勤を余儀なくされる場合には、延長保育、夜間保育、休日保育といった特別のサービスを利用する必要があるが、これらの多様なニーズに対しては必ずしも十分に応えられている状況にはない。

認可保育所に入所できなかった場合、また入所できても必要な保育サービスを受けられない場合、認可外保育施設を利用することが考えられるものの、その場合には高額なコストがかかることが多い(第2−2−11表)。ベビーシッターなどについても同様である。このように、仕事をしている間に子どもの面倒を見てもらう場所が確保できなかったり、必要な費用を負担できない場合には、就業を断念せざるを得ないことになる。

なお子どもの面倒を子どもの祖父母に見てもらっている夫婦は、23.5%と少なくない5。本項冒頭でも示したとおり、健康な祖父母と同居できる(または近くに住める)状況であれば、保育所などを利用できなくても、小さな子どもを持ちながら就業することは可能となる。しかしこうした条件が整っていて、その利点を享受できるかどうかはそれぞれの置かれた状況によるものであり、こうしたことによって就業の可能性が左右されることは好ましいことではない。

第2-2-10図 1・2歳児が待機児童数に占める割合は大きい

第2-2-10図 1・2歳児が待機児童数に占める割合は大きい

第2-2-11表 認可外保育施設の利用料金は月額3〜5万円

第2-2-11表 認可外保育施設の利用料金は月額3〜5万円
 
5

厚生労働省「人口動態統計特殊報告」(2003年)による。

 
テキスト形式のファイルはこちら

目次  前の項目に戻る  次の項目に進む