前項では、若年者の適職探しを阻んでいる可能性のある企業の採用慣行について見てきた。しかし言うまでもなく、若年者側が企業の求める能力や資質を持っていなければ、企業に採用されることは難しい。特に、新卒採用市場と異なり職業能力が求められる中途採用市場においては、そのような若年者側の職業能力の問題が適職探しの壁となっている可能性がある。企業が中途採用を行う理由を聞くと、「即戦力になるから」が41.6%14と最も高い割合を占めており、職務経験で培われた職業能力を重視していることがうかがえる。したがって、中途採用市場での若年者の適職探しを円滑化するためには、就業形態が多様化する中で若年者が自身の職業能力をどう構築していくかが重要である。ここでは、こうした若年者側の能力開発に起因する適職探しの壁について分析する。
企業は中途採用者に対しどのような能力を期待しているのだろうか。中途採用で企業が重視する能力を見ると、「専門的な技術・知識」が75.6%で最も高く、「上司・同僚などとのコミュニケーション能力」が50.8%、「接客など顧客対応能力」が37.6%となり、中途採用では職務経験で培った専門的な技術や知識、円滑な人間関係を構築する能力が重視されることがうかがわれる(第1−2−9図)。
第1-2-9図 専門性が重視される中途採用者
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また、中途採用で企業が求める人材を職種別に見ても「専門・技術職」に対するニーズが最も多く、またここ数年で大幅な増加傾向を示していることから、中途で採用されるかどうかは、職務経験で培った専門性などを身に付けているか否かによるところが大きいことが分かる(第1−2−10図)。
それでは企業に評価される専門能力はどのように身に付けることができるのだろうか。個人が仕事に必要な能力を主に身に付けた場としては、正社員やパート・アルバイトに限らず「職場での実務経験」が圧倒的に多く、職業能力の多くは就業経験を通じて獲得される(第1−2−11図)。
他方、企業に勤めていない人にとっては、一般の教育訓練機関を利用することが考えられる。このような個人による自律的な能力開発はもちろん重要だが、教育を受けることに一般に大きな費用がかかる上に、受講に専念し仕事を辞めた場合、収入が得られなくなってしまう問題がある。また、専門能力を身に付けても、それを実際に活かすことができる仕事に就けるかどうかについてもリスクを負わなければならない。
そこで以下では、働く過程で獲得し得る能力に注目し、正社員の場合とパート・アルバイトの場合を対照して検討する。
第1-2-11図 仕事で必要な能力は職場での実務経験で身に付く
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