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本編 > 第3章 > 第2節 > 1. 地方公共団体との連携・協働

1. 地方公共団体との連携・協働
(1)町内会・自治会と地方公共団体との連携・協働
 町内会・自治会は、従来より地方公共団体とかかわりが深い。ここでは、両者の協働の実態がどうなっているのかについて見てみよう。

地方公共団体と住民との橋渡し役として機能する町内会・自治会
 町内会・自治会と地方公共団体との協働の形態について、全国の市・区に尋ねたアンケート調査によると、回答した地方公共団体の5割以上が町内会・自治会に対して行政情報の提供や事務・事業の委託を行っている。このことから、地方公共団体は地域に密着したサービスの提供に当たり、町内会・自治会という既存の住民ネットワークを活用しており、町内会・自治会は地方公共団体と住民との橋渡し役としての役割を果たしているものと思われる(第3−2−1図)。

町内会・自治会と地方公共団体との協働の形態は、行政情報の提供が多い


地域づくりの担い手として期待される町内会・自治会
 では、町内会・自治会との今後のかかわり方について、地方公共団体はどのように考えているのだろうか。
 まず、今後地縁型団体と協働したい分野について地方公共団体に尋ねたアンケート調査によると、「地域安全」や「災害救援」など公共性の高い分野を回答として挙げた地方公共団体の割合が高い(第3−2−2図)。

地方公共団体が今後地縁型団体との協働を望む分野は公共性の高いものが多い

 また、町内会・自治会の今後のあり方について見ると「自主的な活動を中心としつつ、市・区とのパートナーシップを確立すべきである」と回答した地方公共団体の割合が90.4%と圧倒的に高く、町内会・自治会の自主的な活動を尊重しつつ、協働を推進していくという地方公共団体側の意向があることが分かる((財)日本都市センター「自治体におけるコミュニティ政策等に関する実態調査」(2001年))。
 さらに、今後の町内会・自治会との協働のあり方に関する地方公共団体の考えについて見ると、「各種行政情報の提供を行う」と回答した地方公共団体の割合が66.9%と最も高く、「政策計画づくりへの参加促進」50.8%、「公共的仕事の一部を任せること」35.0%がこれに続いている(第3−2−3図)。このことから、地方公共団体は町内会・自治会に地域づくりの担い手としての役割を期待しており、現在多い各種行政情報の提供に加え、政策立案や事業実施においても今後町内会・自治会の力をいかしていこうという意向がうかがわれる。

地域づくりの担い手として期待される町内会・自治会


(2)NPOと地方公共団体との連携・協働
[1]NPOと地方公共団体との協働の実態
 近年NPOによる地域の活動は年々活発化してきており、地方公共団体がNPOと協働事業を展開する動きが見られる。NPOとの協働事業について地方公共団体に尋ねたアンケート調査によると、回答があったすべての都道府県で協働事業を実施している。また、市区町村についても約7割が協働事業を実施していると回答しており、協働事業がかなり普及していることが分かる(内閣府「コミュニティ再興に向けた協働のあり方に関するアンケート」(2004年)(「協働調査」))。ここでは、その実態について見ていくこととしよう。

NPOと地方公共団体との協働の形態は事業委託が多い
 では、地方公共団体はどのような形で協働事業を展開しているのだろうか。
 NPOと地方公共団体との協働の形態について見ると、「自治体からNPOへの事業委託」については回答があった都道府県のすべてが実施しており、市区町村についても80.9%と圧倒的に高い(第3−2−4図)。

NPOと地方公共団体との協働の形態は事業委託が多い

 また、地方公共団体がNPOに委託した事業の種類を見ると、都道府県、市区町村ともに「イベントの実施」と回答した地方公共団体の割合が高い。さらに、都道府県では「調査研究」、「専門的な相談事業」の割合が高いのに対し、市区町村では「自治体の施設の運営」、「介護・家事援助などのサービス提供」の割合が高い。これらのことから、都道府県では主に広域的に行うことが一般的な事業や専門性の高い事業を、市区町村ではより地域に密着したサービスをそれぞれ委託する傾向があることが分かる(第3−2−5図)。

広域型の都道府県委託、地域密着型の市区町村委託


地方公共団体はNPOとの協働による多様なサービスの提供に期待している
 地方公共団体が考えるNPOとの協働の意義については、都道府県、市区町村ともに「自治体だけでは提供できない多様なサービスの提供」と回答した割合が最も高く、NPOに対する地域サービスの担い手としての期待の高さがうかがわれる。また都道府県では「行政とNPOとの対等なパートナーシップの構築」、「行政サービスの民間開放による行政効率の向上」の割合が市区町村と比べて目立って高く、NPOを対等なパートナーとしてみなし、本来行政が行っていたサービスをNPOが担うことで効率化が図られることを期待している。一方、「事業経費の縮減」については都道府県、市区町村ともにあまり高くない(第3−2−6図)。

地方公共団体はNPOとの協働による多様なサービスの提供に期待している


地方公共団体は協働による地域の人々の生きがいや人と人のつながりの醸成に期待している
 地方公共団体がNPOとの協働事業が地域社会にどのような効果をもたらすと考えているかについては、都道府県、市区町村ともに、協働事業によって地域の人々の生きがいがもたらされることを期待している様子がうかがわれ、また市区町村では、地域社会の一体感や住民同士の交流など地域内での人と人のつながりが強まることを期待する傾向があると見られる(第3−2−7図)。

地方公共団体は協働による地域住民の生きがいや人と人のつながりの醸成に期待している


[2]協働事業をより良くするためには
 これまで地方公共団体とNPOとの協働の実態について見てきたが、「協働調査」によると「まちづくり」、「福祉」などを始めほぼすべての分野において、7割を超える地方公共団体が今後NPOと協働したいと考えている。では、今後より良い協働を進めるためにはどのようなことが必要なのだろうか。

地方公共団体・NPOの相互理解が協働事業をより良くするための出発点
 今後協働事業をより良くするためにNPOが地方公共団体に求めることについては、両者の対等なパートナーシップとなっている(第3−2−8図)。一方、地方公共団体として必要だと思っていることについては都道府県、市区町村ともに「NPOへの理解を深めること」、「庁内での横断的連携の促進」、「協働を行う目的の明確化」と回答した割合が高く、協働事業を円滑に行うためには意識面での改革が重要と認識されていることが分かる(第3−2−9図)。こうした認識から、地方公共団体においては職員のNPOへの理解を深めるための職員研修が実施されている。都道府県、市区町村では「NPO関係者や有識者による講演・講座」や「自治体関係者による講演・講座」など座学による研修が中心となっているが、体験型の研修の実施を推進していくことが効果を高める上で有効と考えられる(付図3−2−1)。
 このように、協働を円滑に進めるためにはまず地方公共団体とNPOの相互理解が必要であり、両者が情報や意見の交換を行う機会をより積極的に設けることが重要である。

NPOは地方公共団体との対等なパートナーシップの構築を求めている


地方公共団体はNPOへの理解が必要と感じている


両者の情報公開の促進や広報・普及活動が地域の活動を促す
 NPOが地方公共団体に求めることについては、「市民活動を促すための広報・普及活動」や「施策実施の初期段階からのNPOとの協議の実施」など、情報交換や情報発信に対する支援の割合が高い(前掲第3−2−8図)。このことから地方公共団体が行政に関する情報公開に努め、開かれた形で事業を進めるとともに、広報・普及活動を強化することが地域の活動を促進する上で重要である。
 他方、地方公共団体がNPOとの協働事業を実施していない理由としては「NPOに関する情報が足りない」、「協働になじむ事業が思い当たらない」と回答した地方公共団体の割合が高く、情報不足から協働事業が難しいことがうかがわれる(付図3−2−2)。地方公共団体が協働相手となるNPOを選択する際の情報収集方法について見ると、都道府県、市区町村ともに「事業報告書や収支計算書」、「NPOへのヒアリングやアンケート」を特に重視していることが分かる(付図3−2−3)。一方、地方公共団体と協働しているNPOに尋ねたアンケート調査によると、情報発信の方法として「NPOの事業報告書や収支計算書」の開示と回答した割合は21.2%にすぎず(「協働調査」)、NPO側もこれに関する十分な情報提供に努めることが重要である。

NPOに対する効果的な支援が重要
 地方公共団体による支援として「公共施設や機材の利用に関する便宜供与」を求めるNPOの割合が高い(前掲第3−2−8図)。第2章で見たように、廃校を有効活用したり既にある地域の公共施設を開放するなど、既存の施設を活用していくことも重要であると考えられる。
 また、NPOは資金面での基盤が弱い団体が多く、「資金提供など支援のあり方の見直し」を求める割合も高い(前掲第3−2−8図)。しかし、補助金による支援については、用途が制限されることなどから結果としてNPO活動の自由度を妨げてしまうという問題がある。このため、資金援助のための独自の制度が模索されているところも見られる。またNPOの安定した資金調達を可能とするためには、寄付の促進が重要である。地方公共団体の中にはそのための制度を設けているところもあり今後の参考となるだろう(後掲(コラム)住民による寄付促進のための仕掛けづくり −杉並区NPO支援基金)。


コラム 住民による寄付促進のための仕掛けづくり
―杉並区NPO支援基金

 NPOの多くは資金不足に悩まされているが、杉並区では独自の支援策として、2002年6月より「杉並区NPO支援基金」を運用している。
 この基金は地方公共団体のみならず、NPO・住民・事業者がともに育てていくものとして位置付けられており、基金に積み上げた寄付金からNPOに対する助成を行う仕組みとなっている。基金からの助成を希望するNPO法人は区に登録申請を行い、区民やNPOなどの活動の経験者、学識経験者などによって構成される「NPO等活動推進協議会」(協議会)による登録審査・助成審査を受けた後、区によって助成先の団体が決定される。
 またこの基金には、次のような特色がある。  

寄付者は税制上の優遇措置を受けられる
 基金への寄付を行った人や法人は、所得税や住民税、法人税の優遇措置が受けられる。その仕組みは、NPO支援基金に対する寄付金は地方公共団体に対する寄付となるため、税制上の優遇措置(寄付金控除等)が適用されるというものである。

寄付金の活用先について寄付者の意向が尊重される
 基金からの助成を希望する団体の登録や助成先については、協議会による審査を受けて決定されるが、寄付を行いたい人がそれを申し出る場合、寄付金の活用先として団体やNPO法人の活動分野を希望できる。

寄付者は寄付金の活用状況について知ることができる
 助成を受けた団体は実績報告などを区に提出し、区はそれについて協議会やホームページなどで公開することとなっており、登録団体や助成先を決定するための審査などを行う協議会の審議も原則公開となっている。また、寄付をした人は自ら行った寄付がどのように活用されたのかについて知ることができる。
 この制度を設けたことにより、当初の予想を上回る寄付があるようだ。地方公共団体の中にはこの制度をモデルとして、これに類似したNPO支援制度を設ける動きも出てきている。


NPOの事業実施能力の向上や人材育成が重要
 協働事業をより良くするために地方公共団体がNPOに求めることとしては、都道府県、市区町村ともに「団体の組織運営能力の向上」や「専門知識やノウハウの蓄積」など事業実施能力を求める割合が高い。なお、都道府県では「行政の制度やルールなどの理解」や「企画力の向上」を求める割合が市区町村と比べて目立って高いが、これは都道府県の協働事業で広域型のものが多いことからNPOに対して特に事業実施能力を求めるためと思われる。他方、市区町村では「人材の育成」を求める割合が都道府県と比べて目立って高い。これは市区町村の協働事業で地域密着型のものが多いことから質の高いサービスを提供するために人材育成を重要視するためと思われる。NPOもまた同様に人材育成が必要とされていることを認識している(第3−2−10図)。今後NPOが地方公共団体と対等の立場でパートナーシップを築くためには、NPOによる事業実施能力の向上や人材育成が重要であり、地方公共団体側がNPOに協働事業を実践する機会を提供することも事業実施能力の向上のために有意義と思われる。

NPOに求められているのは事業実施能力や人材育成


(3)地方公共団体と住民主体の活動との連携・協働が地域再生につながる
 地方公共団体がこれまで専ら担ってきた事業をNPOなどに委託するなど、住民主体の活動と地方公共団体とが連携・協働する動きが広まっている。こうした動きは、住民が地域の活動に参加するきっかけを生み出し、地域の事情に応じたサービスを効率よく提供することにつながる。こうして地域の独自性や魅力が生まれ、地域への愛着が強まることで、活力ある地域づくりにつながることが期待される。現在地域再生が重要な課題となっており、こうした好循環はその解決に必要と思われる。


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