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本編 > 第1章 > 地元のスキー場を守ろう(不忘アザレア)

地元のスキー場を守ろう
NPO法人 不忘アザレア

 宮城県白石市では、スキー場を経営していた会社が破たんし、市に対して市営または第三セクター方式で継続を要請。しかし、市は財政的に余裕がなく、民間企業を模索していた中、地元市民が中心となってNPO法人を設立し、スキー場運営を引き継ぐ。市民に支えられて、直近の決算は2期連続黒字を計上している。

〇破たんしたスキー場の施設の所有を市が継承、NPO法人が管理運営を行っている。
〇コスト削減とともに、市民の協力が得られたことで、大幅に収益が改善した。


1. 活動開始の背景と経緯
白石スキー場経営会社の破たんと市民からの存続要望
 1997年に白石スキー場を経営していた会社が破たん(和議申請)した。同社はスキー場をやめて国有林地を原状回復するのに多額の費用を要するため地元の白石市に対して、譲渡を申し出た。白石市側にはその意思はなかったが、市内で唯一のスキー場であったこともあり、市民やPTA、子供育成会、旅館組合など幅広い地縁組織から存続の要望が強く出された。市は様々な形態での経営を協議した結果、市が施設を所有し、スキー場の運営をNPOに委託する方式での存続を決定した。市役所と市民との共同勉強会を経て、99年にスキー場を管理運営するNPO法人不忘アザレアを設立した。

不忘アザレアが運営するスキー場
不忘アザレアが運営するスキー場

2. 活動の内容
不忘アザレアが担うスキー場運営と自然教育事業
 ゲレンデの整備やリフトの運行管理、レストランやレンタルスキーなど付属事業の経営、スキー大会・教室の開催など年間延べ約5万人が利用するスキー場の運営を行っている。
 また、不忘アザレアとNPO法人蔵王のブナと水を守る会(ナショナルトラストとグリーンレンジャー活動を行っている)が協力して近隣登山道の整備やボランティア清掃、植栽事業を年に数回実施している。

3. 運営の状況
市の協力
 スキー場のリフトなど各施設は白石市が所有し、施設管理と運営を不忘アザレアが行っている。市からは事業委託を受けているが、管理運営に対する委託料を受け取らない代わりに、大規模な設備投資や修繕は市が行っている。このため、不忘アザレアは設備投資の資金負担や税金の支払い負担が軽減されている。また、多くの市民がスキー場を利用するばかりでなく、市内及び近隣市町村の各学校の授業(体育)の一環としてスキー教室が開かれている。

地域住民が会員に
 不忘アザレアは、資金がゼロからのスタートだったため、会員制度を取り入れ、その発起人が中心となって積極的に会員を募集した。自発的に会員となってくれる市民も多く、現在337名の会員がいる(2004年1月現在)17
 会員は顧客の紹介やポスター掲示、パンフレットの配布、市内各子ども会、スポーツ少年団への勧誘など地道な営業活動も行っている。

家族でも利用しやすい料金体制へ見直し
 リフト券は1日券2種類、半日券4種類と利用時間により細かい料金設定を行った。また、親子パックリフト1日券を設定し、最大で4,000円の割引となるなど、家族でも気軽に利用できる料金設定を行った。さらに、レストランの料金も値下げを行うと同時に質を向上させ、地元の家族客を確保する経営努力を行った。

ルールの徹底と迅速な意思決定
 NPO法人化以降、現場に任されていた購買業務を金額によってスキー場長、事務局長などの承認や入札が必要な仕組みへと変更し、権限の所在を明確にした。以前は大きな企業組織の一部であったために、改革を行うにも1、2か月を要していたが、現在では、意思決定者である理事長や事務局長が身近にいるために意思決定のスピードが大幅に向上した。

従業員の再雇用と人件費の抑制
 旧経営会社の職員を70%から75%の給与水準で再雇用した。5年間にわたって収益が安定するにつれて、徐々にではあるがベースアップしている。

徹底的なコストダウン
 リフトや人工降雪機など通常は外部に委託するメンテナンスについても、可能な限り職員が対応している。外部に発注が必要な場合は、必ず競争入札を行っており、NPO法人化前と比べて4割近い割引金額で購入している例もある。
 ただし、地元密着型のNPOであることから、食材などは地元からの仕入れを心がけており、他都市の方が安い場合には、その水準まで引き下げることを条件に地元商店から購入している。

顧客アンケートの実施と活用
 アンケート用紙と回収箱を設置し、顧客の声を集めている。回収されたアンケート用紙はアルバイトを含む全従業員に回覧するようにしたことで、アルバイトの意識が大きく変った。

4. 成 果
大幅な収益改善による地元スキー場の存続
 減収抑制やコスト削減効果により、直近決算(平成14年11月期)は、2期連続で黒字を計上することができ、1,000万円近くあった繰越損失も175万円まで縮小した。

市民の愛着の高まり
 経営主体がNPO法人に変わったことで、白石スキー場は自分たち市民のものであるという意識が高まった。またNPOの会員がスキー場を自らの財産として、スキー客集客の営業を自発的に行って売上確保に協力している。その結果、市民の利用頻度が高まり、周辺のスキー場の利用者数が前年割れを起こす中、ほぼ5万人で安定している。


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