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本編 > 第1章 > なくてはならない住民の足、守ろう自分たちのバス(生活バス四日市)

なくてはならない住民の足、守ろう自分たちのバス
NPO法人 生活バス四日市

 三重県四日市市では、赤字による路線バスの廃止に対して、地域住民が地域の生活に密着したバス運行の企画・運営に地元の企業などの協力を得ながら取り組んでいる。

地域住民が主体となったNPO法人が定期バスの運行を企画・運営。住民たちの間に「私たちのバスを利用しなければ」との意識が高まっている。
地域の人々が利用しやすいようなルートや運行時間帯の設定、また、地元企業や地方公共団体から協賛金や補助金を得るなど運行を継続するための努力を行っている。

1. 活動開始の背景と経緯
赤字バスの廃止への住民の「困る」に自治会などが立ち上がる
 2002年2月、三重県四日市市のバスが利用者減少によって赤字路線となり、5月末の廃止が決定された。路線沿線の自治会が住民アンケートを実施したところ、「買い物・病院へのアクセス手段がなくなるのは困る」という意見が圧倒的だったにもかかわらず、バス廃止の方針は変わらなかった。
 このため、同年6月から自治会を含む有志で、沿線住民の生活に密着した「生活バス」としての路線や運行計画などについて検討を始めた。地域住民の総意を示すために、周辺自治会にPR書類を配布して、生活バスの必要性を説き、周辺自治会からも理解を得た。

地域の住民も企業もバス会社も協力したNPO法人で有料バスの運行開始
 9月には地域住民、協賛企業(スーパー、病院など)、運行事業者(三重交通)からなる「生活バス四日市運営協議会」を発足。2003年4月にNPO法人「生活バス四日市」としての認証を受けると同時に、国土交通省による道路運送法の許可を得て、有料でのサービスを開始した。

バスを利用するお年寄り
バスを利用するお年寄り


2. 活動の内容
スーパー、病院、郵便局などをつなぐ生活に密着したバス
 NPO法人生活バス四日市が三重交通に運行業務を委託しており、私鉄駅から、複数の病院、郵便局、市民センターなど公共施設を経て、スーパーの間の路線を平日に1日5.5往復している。

3. 運営の状況
バスを取り巻く住民、企業、地方公共団体が少しずつコストを負担
 地域住民の利用料金は1回あたり100円に抑え、応援券(定期券)や回数券を発行して、利用しやすい価格設定としているため、バス運行で得られる事業収入は月10万円程度。運行ルートにある地元の大手スーパーや病院などからの毎月計50万円の支援金と、市からの補助金(30万円)で賄っている。もともとは路線を廃止した三重交通も存続に協力的で、採算ギリギリの金額で運行業務を受託している。
 バスを取り巻く各主体が、バスの運営のコストを少しずつ負担し資金不足を解消することによって、NPO法人運営のバスを実現している。

地域社会での理解を得るための情報開示を積極的に
 行政や支援企業の理解を深めるために、利用者数や収益の状況をまとめた広報誌を毎月発行している。
 また、NPO法人が運営している有料バスということで注目を浴びており、全国各地の地方行政からの問い合わせなども多く、これを地域社会での認知や理解を得るための情報開示の一つと捉え、バス運営に関する説明を積極的に行っている。

4. 成 果
「自分たちのバス」だから「もっと利用しよう」に結び付く
 バスが運行され、地域の中に公共交通手段が確保されていることが最大の成果と言える。
 特に高齢者が一人で外出しやすいため、スーパーや病院などへの外出回数が増えている。また、地域住民が立ち上げたNPO法人が中心となり、自らのニーズを踏まえてバス運行を企画・運営していることで、住民の間に「自分たちのバスを利用しなければ、支えなければ」という意識が高まり、乗客が増える効果があった。

地方公共団体の負担も軽減
 不採算により廃止された市内のバス路線については、一般的に行政が経費を負担し事業者に委託する市自主運行を行うことで存続させてきたが、財政難に伴いこれ以上支えきれなくなっている。このバスが住民主体となったことで、市民協働のもと行政側の負担も軽減している。

地域におけるバス
 バス利用者は年々減少しており、多くの路線バス事業は赤字を抱え、相次いで路線が廃止されている(民営事業者の72%が赤字を計上しており、廃止路線キロ数は10,293km(2001年度))。さらに、2002年2月から実施された路線バス事業の規制緩和により、道路運送法が改正され、採算路線を廃止する際の退出規制が許可制から事前届出制となり、原則自由に退出(路線廃止)できるようになった。
 一方、過疎地や空白地帯では、住民の要求で地方公共団体を中心に運営される地域のための“コミュニティバス”の導入が増えている。採算が取れない地域を通ったり、停留所の間隔を短くして公共施設と住宅街をきめ細かく結ぶことが多いのが特徴である。


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