| 第2章 デフレ下で厳しさを増す若年雇用 |
イギリス ニューディール政策
イギリスは、80年代に進められた急激な労働市場改革により、労働市場規制が少ない国の1つになったが、急激な市場改革は、成果が大きかった分、富裕層と貧困層の所得格差拡大といった新たな問題も発生させた。これは最低賃金制度を廃止したことにより、(特に若年を中心に)低賃金労働者が増加したためである。また、行き過ぎた低賃金は就労意欲を失わせ、若年の失業率を高めることとなった。97年に成立した労働党ブレア政権は、これらの問題に対処するためには、若年や長期失業者の就労意欲や技能を高め、労働市場への参加を促すことが必要であるとの観点から、「福祉から就労へ(Welfare to Work)」プログラムを策定し、一部の先行地域における導入期間を経て98年4月からニューディール(New Deal)政策を全国的に実施している。
ニューディール政策は、職業訓練・就業促進を目的とするものであり、当初は若年失業者や長期失業者を対象に開始され、その後、対象者を障害者、一人親、失業者の無収入の配偶者及び高齢者へと順次拡大しながら、人々の職業能力と就労可能性の向上を図っている。ここでは、その中から、若年失業者のためのプログラム(New Deal for Young People Aged 18-24)を詳しくみてみよう。
若年失業者のためのプログラムは、失業者対策の主要な柱の1つで、若年失業者に対し、長期失業者となる前に雇用、訓練もしくは適当な支援を提供することを目的としている。18〜24歳までの、6か月以上求職者給付(日本でいう失業給付)を申請している全ての人が対象となる。
対象者は、まず最初に、最長4か月間、個人アドバイザーによる集中的なカウンセリングやガイダンス、職業能力評価を受けながら就職を目指す。この期間で仕事が見つからなかった人、あるいは就職の準備が整っていない人は、.助成金付き就職(企業に対し6か月の賃金助成(週60ポンド(約1万2000円)まで)と訓練のための費用助成(750ポンド(約15万円)まで)を実施)、.最長12か月間の教育訓練(この間、求職者給付を受ける)、.ボランティア団体や公的環境保全事業での就労と訓練(6か月。求職者給付と同等の手当、訓練機会等が提供される)、.自営業の開業(6か月の助成)、の4つのオプションから1つを選択する。このいずれをも拒否した人は、求職者給付受給資格を失う。さらに、この2段階を経た後に、就職していない人は、更に最長4か月間、就職に向けた支援を受ける。
ニューディール政策が実施されてから2002年12月までに、若年失業者向けプログラムに参加した延べ人数は約91万人に上り、約41万人が就職し、そのうち約33万人が継続的な職(13週間以上)を得ている。労働党は、97年の総選挙の際に5つの公約の1つとして「25万人の若年失業者の就職の実現」を掲げていたが、ニューディール政策により、2000年9月末にその目標が達成されたと肯定的に評価している。しかし、一方で、同政策を通じて職に就いたかにみえる人の大半は、実際には経済状況が堅調であったために就職できたのであって、同政策が直接これに寄与したわけではない、とする見方もある。
ニューディール政策の背景にある考え方は、それまでのように過度に労働者保護的な政策に頼るのではなく、働くことにより社会の枠組みに参加させ失業者の自立を促すとともに、就労可能性を向上させ、かつ、若年失業者の就労インセンティブを高めて失業の長期化を予防しようとするものである。
雇用関連支出の対GDP比率をみると、日本は他の国に比べ、失業給付などの消極的雇用政策支出の比率が高く、職業訓練、職業紹介、若年雇用対策、雇い入れ支援や雇用維持支援のための給与助成などの積極的雇用政策支出の比率が低い(図)。就労可能性の向上のため、職業訓練を重視し、インセンティブを付けて就業経験を積ませようとするイギリスの手法は注目できる。
図 低い日本の積極的雇用政策支出の割合

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