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第2章 デフレ下で厳しさを増す若年雇用 

1.若年の就業構造変化が引き起こす問題

若年の就業構造の変化は、経済社会に次のような問題を生じさせると考えられる。

まず第一に、フリーター(注16)であることによりフリーター自身が、不利益を被ったり、不安を感じたりすることが多いと考えられる。フリーター自身による評価をみても、年齢層が上がるにしたがい、「いざというときの保障がない」、「病気したときに収入がなくて困る」などのデメリットを感じるようになっている(第2−4−1図)。正社員に就いていないとさまざまな面で不安定となることから、フリーターの多くは正社員になることを希望しており(第3節2参照)、より安定した職業に就きたいと考えている。

 

第2−4−1図 年齢層が上がるにしたがい、フリーターのデメリットへの意識が高まる

第2−4−1図 年齢層が上がるにしたがい、フリーターのデメリットへの意識が高まる

第二に、若年の職業能力が高まらなければ、日本経済の成長の制約要因になるおそれがあると考えられる。失業したり、パート・アルバイトをしている間は十分な職業能力開発の機会が得られないため、このような人の職業能力は高まりにくい。その結果、正社員になりたいと思っても門戸が狭くなり、なかなか正社員にはなれない。今後もフリーターは増加し、また長期にわたってフリーターを続ける人も増えると考えられる(第3節2参照)。職業能力を蓄積できない人が増加すれば、日本全体の生産性を押し下げる要因になり、日本経済の成長を阻害するおそれがある。

第三に、社会を不安定化させると考えられる。今後の若年の就業形態は画一的なものではなくなり、引き続き日本的雇用慣行の下、企業に守られ企業による就業教育や年功賃金を享受することができるグループと、企業から一定の距離を持ち、自ら将来設計を立てていかなければならないグループとに二極化していくものと考えられる(第2節3参照)。現状の若年の意識や就業環境が継続した場合、二極化はより鮮明なものとなることが考えられ、そうした中で、失業者や身分の不安定なパート・アルバイトが増加すると、若年犯罪の増加などの社会不安が生じる可能性がある。

第四に、未婚化、晩婚化、少子化などを深刻化させると考えられる。現在のパート・アルバイトの収入は年齢とともに増加することはなく、世帯形成期になっても収入は少ない(第2節3参照)。したがって、パート・アルバイトや収入のない無職の人が増加すると、結婚して世帯を持ち、子どもを生んで育てることが困難になり、未婚化、晩婚化、少子化などを助長する懸念がある(第3章第3節参照)。

中期的に日本の雇用環境をみると、今後、経済が成長軌道に乗って景気が回復すれば、労働需要が高まり、また、5年から10年後には団塊世代が退職を迎えることが見込まれ、さらに若年人口は減少していくことが想定される(第2−4−2図)。そうすれば、若年の就業環境は改善されると期待されるが、当面の経済の低迷や企業の雇用戦略の変化、ワークシェアリングの進展などにより正社員からパート・アルバイトへの転換の流れは継続するものと考えられる。

 

第2−4−2図 今後減少が見込まれる若年人口

第2−4−2図 今後減少が見込まれる若年人口

したがって、政府としてはデフレを克服し、構造改革を進めて、持続的な成長を実現し、企業が若年の雇用を拡大できる環境を整えていくことが重要であるのはいうまでもないが、現在生じているフリーターの増加の問題にも対応していく必要がある。


(注16)同調査のフリーターとは、「学生でも正社員でも主婦でもなく『アルバイター』として働いている30歳未満の者(派遣スタッフ・契約社員などを含む)」とされている。


 

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