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第1章 デフレ下の国民生活

将来不安が現役世代の消費を抑制

このように、40代までの世帯を中心に消費性向が落ちているが、その要因についてみてみよう。
 90年代に入って長引く経済の低迷やデフレから多くの企業の収益が悪化している。勤め先企業の倒産や解雇により職を失うことや、ボーナスや残業代をはじめとする賃金の切り下げが行われるおそれから、雇用・所得環境の先行きに対して不安を抱いている人は多い。また、将来の収入や資産の見通しに対する不安は90年代後半に大きく高まっており、特に20代から40代にかけての不安が大きい(第1−4−7図)。雇用・所得の不安が高まっていることが、40代までの比較的若い世代の消費を抑制する要因となっていると思われる。

 

第1−4−7図 20〜40代で高い今後の収入や資産の見通しに対する不安

第1−4−7図 20〜40代で高い今後の収入や資産の見通しに対する不安

また、かつては失業することはないと思われていた大企業においても、雇用不安の状況は例外ではなくなっている。従業員規模別に、雇用者に対する離職失業者の比率をみると、従業員規模が500人未満の企業では高いが、96年以降はそれほど大きく上昇してはいない。一方、従業員規模が500人以上の企業では低いものの、98年以降上昇を続け、従業員規模が500人未満の企業との差は小さくなってきている(第1−4−8図)。雇用調整の波は大企業にも押し寄せつつあり、大企業に属する人々の失業に対する不安も高まっていることが推測できる。このように、従業員規模にかかわらず雇用不安は高まっており、家計の消費抑制を助長している。

 

第1−4−8図 大企業でも高まる失業のリスク

第1−4−8図 大企業でも高まる失業のリスク

デフレが直接影響しているわけではないが、現在の雇用環境の悪化や将来の雇用不安に加えて、年金など老後の生活に対する不安が高まっていることも、家計が消費を抑制する一因となっている。そこで、老後の家計が心配と考えている人の割合をみると、90年代に大きく上昇しており、30代、40代では9割を超える人が不安を抱いている(第1−4−9図)。また、将来に対する不安と支出の関係についてみると、内閣府「若年層の意識実態調査」(2003年)によれば、支出を減らしている理由(複数回答)では「将来の仕事や収入に不安があるから」(55.5%)、「収入が頭打ちになっているから」(49.6%)をあげる人の比率が高くなっており、「年金給付等が少なくなるという不安」(26.2%)、「増税等が行われるとの不安から」(18.5%)が続いている。年齢層別では、若年の中でも、年齢層が上昇するほど将来不安から支出を減らしている人の割合が高い。

 

第1−4−9図 現役世代で高い老後の不安

第1−4−9図 現役世代で高い老後の不安

以上のように、雇用・所得環境や老後の生活など将来への不安が高まっていることから、人々の消費行動が慎重になった可能性がある。



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