平成9年2月13日
経済企画庁
国民生活局
目次
第1章 重要度、充足度とニーズ得点
第2章 人々が生活の上で重要視している領域
第3章 人々の満足度、幸福度、階層帰属意識等
第4章 国民生活の安全・安心をめぐる意識
第5章 教育に対する意識
第6章 雇用に対する意識
第7章 医療に対する意識
参考 60項目の領域別対応表
本章では、人々の生活に関係する60項目の事項について、人々の評価を尋ねた。調査したのは重要度と充足度であり、これによって、人々が各事項についてどの程度重要と考えているか、また、それがどの程度満たされているかを分析する。
災害対策に関する重要度が上昇
この調査では、60項目それぞれについて、その重要である程度について「きわめて重要」から「まったく重要でない」まで5段階で回答を求めた。集計にあたっては5段階それぞれに「きわめて重要」=5点から「まったく重要でない」=1点までの得点を与え、各項目ごとに回答者数で加重した平均得点を求め、重要度に関する人々の評価の指標(重要度得点)とした。
重要度得点の高い上位10項目は、前回の調査結果と共通しているが、重要度得点の最も高かったのは「食品や薬品など商品の安全性が高いこと」<30>(< >内の数字は項目番号、以下同じ)であった(第1−1表)。この項目は、前回調査でも第2位と高かったが、薬害エイズ事件やO-157の影響などによって重要性が再認識されたことによるものと考えられる。
2番目に高かったのが、「地震、台風、火災などへの対策がしっかりしていること」<39>であり、これは、95年1月の阪神・淡路大震災等による影響と考えられる。
また、老後に関する事項が前回同様重要度が高く、「老後に十分な年金が得られること」<28>は、順位は前回より下がったが、重要度得点それ自体は上昇している。
重要度得点の低い項目をみると、「地域生活」に関する項目が並び、前回と大きな差はなかった。
前回と比較して重要度得点の上昇が大きい項目についてみると、「自殺や一家心中が少ないこと」<50>が最も大きい。小中学生の子供を持つ女性と、60歳以上の独身者の上昇幅が特に大きく、小中学生のいじめや老後の一人暮らしを意識しての回答と考えられる。
次に上昇幅が大きかったのは、「希望する職業への転職が容易なこと」<14>であり、最近の厳しい経済情勢の影響であると考えられる。
前回と比較して重要度得点の低下が大きい項目についてみると、「収入が年々確実に増えること」<24>が最も大きかった。この項目は81年以降は重要度が低下傾向にあった項目であった。前回はいわゆるバブル景気の崩壊により一時的に所得への重要度が高まったが、今回は従来の低下傾向に戻ったため、前回との差だけをみると、低下幅が大きくなったものと考えられる。
「収入と消費生活」に関する項目の充足度が低い
充足度についても重要度と同様に、60項目それぞれについて、充足している程度について「十分満たされている」から「ほとんど満たされていない」まで5段階で回答を求めた。集計にあたっては5段階それぞれに「十分満たされている」=5点から「ほとんど満たされていない」=1点までの得点を与え、各項目ごとに回答者数で加重した平均得点求め、充足度に関する人々の評価の指標(充足度得点)とした。
充足度得点の低い項目は「収入と消費生活」に関するものが多く、これは現在の厳しい経済情勢を反映したものと考えられる。また、「老後に十分な年金が得られること」<29>の充足度得点が前回より大きく低下し、今後の高齢化社会の進行に伴う不安が反映されたものと考えられよう(第1−2表)。
充足度得点の低い10項目は、前回と大きな変化はみられなかったが、前回9番目に低い項目だった「希望する職業への転職が容易なこと」<14>が4番目に低い項目となった。<14>について年齢別に充足度得点をみると、30歳代後半から40歳代にかけて充足度が低くなっている。
充足度得点が比較的高い項目については、前回と大きな変化はみられない。
前回と比較して充足度得点の大きく低下した項目について注目すると、「勤労生活」に関するものが多く、厳しい雇用情勢を反映する結果となった。最も充足度得点が低下したのは「失業の不安がなく働けること」<18>であった。<18>は女性の充足度得点が低く、特にパートの充足度得点が低い。また、職業別でみると「専門・技術的職業」の充足度得点が比較的高く、「手に職を持つ」者は不況に強いことがわかる。
前回と比較して充足度得点の上昇が大きい項目については、大きな変化はみられない。
本章では、人々の生活に関連した諸側面を10の福祉の領域に分類し、それぞれの領域の重要度(問4)、政策優先度(問5)および未充足度などについて分析する。
重要度の高い「医療と保健」「収入と消費生活」「家族」の領域
10の福祉の領域の中で、人々が最も重要であると評価している領域は、「医療と保健」「収入と消費生活」「家族」の順で高く(問4)、1981年以降、この傾向に変化はない(第2−1(2)図)。各領域について、最も重要であると評価した人だけでなく、2番目または3番目に重要と回答した人を含めてみても同様の傾向にある。
上位3位内に重要であると評価している領域を、長期的にみると、「医療と保健」「収入と消費生活」の上位2項目が低下傾向にあり、水準は低いが「休暇と余暇生活」が上昇している。また、前回調査(93年)と比較すると、「安全と個人の保護」が大きく上昇しており、銃器使用犯罪の多発や地下鉄サリン事件などが影響しているものと考えられる。
政策優先度は高いが、低下傾向にある「医療と保健」「収入と消費生活」の領域
次に、実際に国や自治体の政策として力を入れてほしい領域についてみてみよう。人々が最も力を入れてほしいとしている領域は、「医療と保健」「収入と消費生活」「勤労生活」の順で高くなっている(問5)(第2−2(2)図)。
「医療と保健」「収入と消費生活」については、81年以降、その順位に変化はない。
第3位は前回まで「公正と生活保障」であったが、今回の調査では「勤労生活」に入れ替わった。各領域について、最も力を入れてほしいと回答した人だけでなく、2番目または3番目に力を入れてほしいとした人を含めてみても、「医療と保健」「収入と消費生活」の順に高く、同様の傾向を示している。
上位3位内に力を入れてほしいとしている領域を、長期的にみると、「収入と消費生活」「教育と文化」が低下し、「医療と保健」については、90年以降、低下している。
一方、「安全と個人の保護」「休暇と余暇生活」が上昇傾向にあり、特に、「安全と個人の保護」は前回調査(93年)から大きく上昇している。
「家族」を除き、重要度が高いと政策優先度も高い
次に、各領域の重要度(最も重要であると評価した領域)と政策優先度(最も力を入れてほしいと答えた領域)との間の関係をみてみよう。各領域の重要度と政策優先度との関係をみると、「家族」を除くすべての領域について、右上がりの関係がみられ、重要度が高いと政策優先度も高いという傾向がみられる(第2−3図)。特に、「医療と保健」「収入と消費生活」「勤労生活」などは、45度線上に分布しており、重要度と政策優先度がほぼ同水準となっている。
ところが、「家族」についてみると、重要度の水準に比べて政策優先度が低く、重要度と政策優先度との間に明確な関係はみられない。「家族」という領域について、人々は政策に馴染まないものと考えていることがわかる。
「医療と保健」については、現状に満足しているが、政策としてさらに力を入れてほしいと望んでいる
3.では、各領域の重要度と政策優先度の関係についてみたが、ここでは、人々が現在それぞれの領域についてどの程度充足されていないかを表す未充足度と政策優先度(最も力を入れてほしいと答えた領域)の関係をみてみよう。
領域別未充足度と政策優先度の関係をみると、「医療と保健」を除く9領域については、未充足度が高くなるほど(すなわち、充足度が低くなるほど)、政策優先度も高くなるという右上がりの関係がみられる(第2−4図)。
しかし、「医療と保健」については、未充足度が低いにもかかわらず、政策優先度が高くなっており、その他の9領域の傾向から乖離している。人々は医療の現状に満足しているにもかかわらず、政策としてさらに力を入れてほしいと望んでいるようである。
さらに、年齢別に領域別未充足度と政策優先度の関係をみても、「医療と保健」を除く9領域については、右上がりの関係にあるものの、「医療と保健」については、30歳代を過ぎると、未充足度が低くても政策優先度が高くなるという右下がりの関係がみられる。
特に、年齢が上がるほど未充足度は低く、政策優先度は高くなっており、高齢者ほど「医療と保健」の現状には満足しているにもかかわらず、政策としてさらに力を入れてほしいと望んでいる。これは、高齢者ほど健康への関心が高まることによると考えられる。
家族形成期、家族成長期で「家族」が高く、家族成熟期、老齢期で「医療と保健」が特に高くなっている
人の一生を6ステージに分け、領域別重要度の特徴をみると、学校教育期は「教育と文化」が高く、独身期は、「勤労生活」「休暇と余暇生活」といった勤労に関する領域が高くなっている。家族形成期および家族成長期では、「家族」の重要度が最も高くなっている。家族成熟期および老齢期では、「医療と保健」が第1位となっており、家族成熟期および老齢期にある人にとっては、自分の健康が最大の関心事という結果となっている。
本章では、人々の満足度、幸福度、階層帰属意識等について考察し、その特徴を明らかにする。
生活全般についての満足度は低下
人々の生活全般に対する満足度について5段階で回答を求めた(問8)。
生活全般に満足している(「満足している」+ 「まあ満足している」)と答えた人の割合は、1990年代に入ってから低下傾向にあり、96年度は47.5%とこの問いの調査を開始した78年度以来最も低い(第3−1図)。また、不満(「不満である」+「どちらかといえば不満である」)と答えた人の割合は22.5%、「どちらともいえない」と答えた人の割合は29.7%であった。
男女別にみると、男性よりも女性の満足度が高いという傾向が続いている。これは、平成7年度国民生活選好度調査で分析したとおり、専業主婦の満足度が高いことによると思われる。ここで回答者全体に対する専業主婦の比率をみると、78年度には27.8%であったが、年々低下し、96年度には16.3%となっている。このような専業主婦の減少が、全体の満足度の低下の一因となっているとも考えられる。
また、年齢別にみても、男女とも10歳代と60歳代以上が高いという傾向は従来と同じである。
定着している中流意識
階層帰属意識については、回答者の現在の生活が「上の上」、「上の下」、「中の上」、「中の下」、「下の上」、「下の下」の6段階のうちどれに属しているかを尋ねた(問10)。
上流意識(「上の上」+「上の下」)は前回の4.6%から5.6%へと僅かに上昇し、中流意識(「中の上」+「中の下」)は85.3%から84.3%へと僅かに低下した(第3−4図)。 調査を開始した72年度からの傾向をみると、78年度までは中流意識が高まり、下流意識が低下しているが、それ以降は上流意識と中流意識にはほとんど変化がみられない。下流意識については、87年度に質問形式を変更し、選択肢から「わからない」を外したため(以後、無回答を「わからない」と分類している)、以前と比べ多くなっている。
上流意識の内訳
現在では84.3%の人が「中流」と答えている中で、どのような人々が中流以外の意識を持っているのだろうか。
ここでは、今回わずかに上昇した上流意識についてみていくこととする。男女別にみると前回は男性より女性のほうが上流意識が僅かながら多かったが、今回は男性が4.1%から6.2%へと上昇し、女性の5.1%を僅かに上回った。
次に、年齢別にみると、男性は10歳代が15.7%と高く、女性は70歳代が10.6%と高い。これは、10歳代は学生が約9割と多く、経済的に親に依存しており、上流の生活が何を指すのかが分かっていないこともあると思われる。70歳代については、豊かな老後を迎え、生活に満足している人が多いためであると考えられる。他の年齢層ではほとんど差がみられず、3〜6%の人が上流と認識しているに過ぎない。
世帯年収との関係をみると、年収が高くなると上流意識を持つ人が多くなる(第3−6図)。特に1400万円以上では男性の27.5%、女性の22.6%が上流と答えている。1400万円を境に大きく増えていることから、世帯年収が1400万円以上であることが上流意識の目安となるのではないかと思われる。
学歴との関係をみると、年収ほど大きな差はないものの、学歴が高くなると上流意識高くなる傾向があり、大卒の男性の9.4%、女性の8.8%が上流と答えている。
さらに、住宅所有形態別にみると、給与住宅に住む人では2.4%が上流意識を持っているのに過ぎないのに対し、一戸建ての持ち家に住む人では6.4%と比較的上流意識が高くなっている。
暗くなっている老後の見通し
「自分の老後に対して明るい見通しを持っているか」を尋ねると(問3−イ)、明るい見通しを持っている(「全くそう」+「どちらかといえばそう」)と答えた人の割合は、84年度の35.8%を境に年々低下しており、今回は24.3%と前回の26.9%からさらに減少した(第3−9図)。
年齢別にみると、男女とも10歳代から30歳代までは年齢が高くなるほど、見通しが暗くなっており、30歳代では男性の15.8%、女性の14.4%しか明るい見通しを持っていない(第3−10図)。
30歳代を底としてそれ以降は年齢が高くなるにつれ、明るい見通しを持つ人が増え、70歳代では男性の55.3%、女性の44.8%が明るい見通しを持つようになる。 このように、30歳代が最も見通しが暗く、70歳代が最も明るい理由を考えてみると、30歳代は子育ての最中の人が多く、精神的にも金銭的にも余裕がない場合があること、一方、70歳代は既に年金を給付され、老後の見通しが立っていることもあり、明るい老後を迎えた人が多いこともあるためと思われる。
次に、世帯年収についてみると、年収が1400万円以上になると、比較的明るい見通しを持つ人が多くなり、男性の38.7%、女性の36.3%が明るい見通しを持っている。
「社会の成り行きや政治には人並み以上の関心を持っているか」と尋ねると(問3−ウ)、持っている(「全くそう」+「どちらかといえばそう」)と答えた人は前回に引き続き低下し、54.0%となった(第3−12図)。
男女別にみると、男性は61.2%、女性は47.5%と男性のほうが高くなっている。また、男女年齢別にみると、10歳代では関心を持っているのは男性の28.3%、女性の25.6%であるのに対し、男女とも年齢が上がるにつれ関心が高まり、70歳代では男性の77.1%、女性の62.8%が関心を持っている。
職業別にみると、男性は管理職が75.2%と関心が高い。無職の人も管理職に次ぎ、70.2%と高いが、これは無職の人には年齢の高い人が多いためであると考えられる。一方、女性は専業主婦が52.0%とパートの主婦46.5%を僅かに上回っている。
学歴別にみると、男性は専修学校でやや低く、大学で68.3%とやや高くなっている。女性は小中学校卒から短大卒までは大きな差がみられないが、大卒では女性57.3%と関心がやや高い。
世の中に関心を払うことの大切さは自覚
「暮らしをよくするために世の中に関心を払うことが大切か」と尋ねたところ(問3−エ)、大切(「全くそう」+「どちらかといえばそう」)と答えた人の割合は前回(93.1%)からは僅かに低下したものの、91.1%であり、依然として大部分の人が自覚を持っている。
個人の負担増には懐疑的
「社会施設の整備や社会保障の充実を図るにあたり、個人の負担を増加させること」について尋ねたところ(問6)、肯定する考え方(「個人の負担は当然」+「ある程度はやむを得ない」)は前回より低下して48.7%となった(第3−16図)。
男女別にみると、男性は48.6%、女性は45.1%が肯定しており、前回と同様、男性のほうが女性よりやや肯定的である。男女年齢別にみると、男性は20歳代が36.2%、女性は30歳代が39.3%と低く、それ以降は年齢が高くなるにつれて増加するという傾向がある。
次に、年収との関係をみるため、まず、働いている人を対象に本人の年収と個人の負担増との関係をみてみた。年収100万円未満では男性の39.6%、女性の38.8%しか賛成していないのに対し、1000万円以上の男性は66.9%、600万円以上の女性は51.4%が賛成しており、年収が上がるほど肯定的な意見が多くなっている。
また、回答者全体について、世帯年収との関係もみてみた(第3−19図)。やはり年収が上がるほど肯定的な意見が多くなっている。ただし、世帯年収が1200万円以上になると、男性は僅かながら賛成意見が減少する。サンプルが少ないものの、本人の年収でみても男性では1200万円以上になると「個人負担の増加は当然」という意見が減る傾向にあることから、年収が多くなると税率が上がり、既に十分負担していると考えるようになるのではないかと思われる。
老後は子供と別
「老後働けなくなったときの暮らし方」について尋ねた(問7−1)。選択肢に「子供の家のすぐ近くに住む」を追加した90年度以降についてみると、90年度に37.0%であった「子供と一緒に暮らす」が96年度には30.6%に低下している。「子供と別に暮らす」、「高齢者用施設に入る」と答えた人が増え、「子供の家のすぐ近くに住む」も約30%と多い。
日本は、これまで、経済成長を背景に生活水準は向上し、社会的にも一定の安全や安心が保たれてきた。しかし、最近、国民生活の安全や安心について、人々が漠然とした不安を高めているように思われる。
本章では、国民生活の安全・安心に関わる意識を中心にみていくこととする。
安全と個人の保護が望まれている
国民が安全をどの程度重要と考えており、その意識がどのように変化しているかをみてみよう。第2章でみたとおり、福祉の領域を「医療と保健」、「教育と文化」など10の領域に分け、最も重要と考えているのは何か尋ねたところ(問4)、「安全と個人の保護(犯罪など)」は2%前後と低い水準で推移していたが、93年度の2.3%から96年度には4.1%へ上昇した(第4−1図)。次に、同じ10領域のうちで、国や自治体の政策として最も力を入れてもらいたいと考えているのは何か尋ねたところ、「安全と個人の保護(犯罪など)」は93年度の3.9%から96年度には7.1%へ上昇している。
このように、国民意識における安全に対する重要性が低かったのは、これまで日本が安全であったことが背景にあったと考えられるが、今回の調査結果では安全の意識や政策への要望がやや高まっているといえる。
家族が大切と考える人が増えている
第1章、第2章でみたように、失業の不安や老後の年金への不安などがある中で、今回の調査結果の特徴の一つとして、家族が自分にとって最も重要と考える人が93年度の14.8%から96年度には18.6%へ上昇したことが挙げられる。将来への不安が高まる中で、人々は家族を改めて重要と考えるようになっているとも考えられる。
ここで、どのような人が家族を「最も重要」と考えているかをみると、子供が小さい親ほど重要と考えている(第4−5図)。前回の結果と比較すると、例えば第一子が小学校入学前の親では男性は22.2%から39.2%へ、女性は25.7%から37.2%へと上昇しており、特に子供が小さい親ほど、より重要と考えるようになってきている。
今回調査では、教育に対する意識について追加的な質問を行っている。本章はその回答について分析を行う。
学力の向上は学校よりも塾でと考えている人が増えている
文部省「学習塾等に関する実態調査」(1993年)によれば、小学生の23.6%、中学生の59.5%が塾に通っており、通塾率も上昇傾向にある。この動きに伴って、「学力の向上は塾で」と考える人が増えている。
今回調査を含めた、3時点での変化をみると「あなたは学校での勉強と、進学塾、進学教室、家庭教師等から教わる勉強とどちらの方が子供にとって学力の向上に役立つと思いますか」という問に対し、塾、進学教室、家庭教師(以下「塾など」)と回答した者は1976年には9.2%だったのが、82年には12.5%、今回の調査では15.3%と増加している(第5−1図)。
都市規模別にみると、大都市ほど「学校」と答える人が減少し、「一概に言えない」と答える人が増加している。
また、世帯年収が高くなるにつれて「塾など」と回答する人が多くなっている。
常に約2割の人は学校の教育内容は今よりもやさしいほうが良いと思っている
学校で教わる教育内容についての意識を調べてみる。子供たちが小中学校で教わる内容は1970年以降やさしくなっており、平成8年度国民生活白書」によれば、教科書も中学生で約2割程度ページ数が減少し、薄くなっている。
しかし、人々の認識はこの事実とは異なり、過去3回の調査とも「現在程度でよい」、「わからない」と答える人が多いものの、約2割と一定数の人は学校は「もっとやさしければよい」と考えている。
どのような人が「もっとやさしければよい」と考えているかをみると、男性では、子供の有無、子供の年齢であまり差はみられないが、女性については、全体的に男性よりも高く、一般に第一子が小・中学校、高校、大学などの親で高くなっている(第5−6図)。
これは子供を持つ母親は、我が子の成績や受験などの問題に直面しているからではないかと考えられる。
本章では、労働者の雇用に対する信頼感の動向と、若年層の失業に対する見方を取り上げ、分析する。
雇用に対する信頼感は低下
「あなたは、業績や生産などが少しくらい落ちても、勤め先が雇用を守ってくれるといった信頼感をお持ちですか、それとも信頼感は持っていませんか。」(問12)と労働者(勤め人)にたずねたところ、「信頼感を非常に持っている」「信頼感をある程度持っている」とした人の割合はそれぞれ、9.6 %、47.1%と、合計すると56.7%になっており、勤め先に信頼感を持っている労働者の割合は過半数を越えている(第6−1図)。
しかしこの結果を、1982年に同じ質問をしている総理府「勤労意識に関する世論調査」(以下、82年調査)と比較すると、男女ともに82年に比べて労働者の雇用に対する信頼感が低下していることがわかる。
大企業で大きく低下した信頼感
雇用に対する信頼感を持っている人の割合と勤め先の企業規模との関係を82年調査と比較してみると、いずれの規模においても信頼感が低下しており、特に従業員1000人以上の大企業において信頼感の低下が著しい(第6−2図)。この結果、82年調査で明確に現れていた、企業規模が大きくなるほど信頼感が高まるという傾向は、ほとんどみられなくなっている。
所得とともに高まる信頼感
所得と信頼感との関係をみてみると、年収1000万円未満の所得階級においては、所得が高まるほど信頼感が高まる傾向にある。しかし、年収1000万円以上の所得階級では、サンプル数が少ないために断言はできないが、「信頼感を非常に持っている」人の割合が高くなっている一方、「信頼感は全く持っていない」人の割合も高くなっている。
今回の調査では、「かかりつけの医者」の有無、また、それが開業医か病院の医者かどうか、さらに、病気になったときに感じる医者に対する不満についても調査を実施した。
減少している「かかりつけの医者を決めている」と答える人
かかりつけの医者を決めているかどうかを、総理府「医療保険に関する世論調査」(1967年)と当庁「国民生活選好度調査」(1996年)で二時点比較を行なった。その結果、「現在かかりつけの医者を決めている」と答えた人の割合は67年の48.4%から36.4%に低下した。一方、「かかりつけの病院や診療所は決めているがどの先生に診てもらうかまでは決めていない」と答えた人は17.5%から23.4%に上昇し、「どこの病院にいくかも決めていない」と答えた人も34.1%から39.6%に上昇した。
年齢が上がるほど「かかりつけの医者を決めている」と答える人が多い
年齢別にみると、10歳代を除いて年齢が高いほど「かかりつけの医者を決めている」と答える人の割合が高い(第7−2図)。
逆に「どの病院にいくかも決めていない」と答える人の割合は、若い年代ほど高い。病気になりやすく、医者にかかる機会の多い年代ほどかかりつけの医者を決めていると思われる。
30歳代で高い医者に対する不満
病気になったときに感じる医者に対する不満を年齢別にみると、「薬について詳しく説明してくれない」や「病状をよく説明してくれない」のように、「インフォームドコンセント」への不満が30歳代を頂点とした山型となっている(第7−5図)。
また、「ていねいに診察してくれない」と答える人も、30歳代を頂点とした山型となっている。
「「もの足りなさ」を感じたことがない」と答える人の割合は高齢者で高くなっており、これは、医療保険制度が整備され国民皆保険になったのが61年で、それ以前は個人負担が多く、医者にかかることの困難な人もいたからではないかと考えられる。