マルチステークホルダー・プロセスの種類

 マルチステークホルダー・プロセスは、以下のように、多様な目的において活用することができます。


利害の折衝


 ある問題において、3者以上のステークホルダー間に利害対立が存在し、特にその関係が複雑な場合に、関係する全てのステークホルダーが同じテーブルに着くことで、利害関係を明確にし、問題解決のための妥結点を模索していくことができます。

 また、2者間の利害対立に、行政が加わって、行政措置も含めた手段での解決策を模索していく場合もあります。

〔具体例〕
  • 「東京都気候変動対策方針」ステークホルダー・ミーティング(東京都)


情報および認識の共有


 多様なステークホルダーが同じテーブルに着いて情報交換や意見交換をしたり、問題認識を共有化することで、各ステークホルダーが自主的に問題解決への行動を図ることができるようになります。さらには、ステークホルダー間における協働のきっかけともなります。

 ステークホルダー間で問題認識の仕方に大きな違いがある場合や、お互いの考え方を理解できていない段階においては、先ずは参加しやすい形式や議題で進めていき、課題認識の共有化を図っていくことが重要となります。

 また、地域単位で多様なステークホルダーを集め、多様な問題の把握や情報交換の場とするために、定期的に開催していくことも考えられます。

〔具体例〕
  • 社会的責任に関する円卓会議
  • 化学物質と環境円卓会議


規範の作成


 広範なステークホルダーが参画し、議論をしていくことで、社会的正当性を持ったガイドライン等の規範を作成することができます。

 例えば、企業が果たすべき社会的責任に関するガイドラインや原則が定められ、企業がコミットメントしていくような活動や、消費者が環境問題や社会問題において正当性を有した製品を選べるようなラベリング制度をマルチステークホルダー・プロセスを活用している例もあります。

〔具体例〕
  • 国連グローバル・コンパクト
  • グローバル・レポーティング・イニシアティヴ(GRI)
  • 持続可能なパーム油のための円卓会議(RSPO)
  • FSC(森林管理協議会)
  • 社会的責任に関する国際標準(ISO26000)


社会的正当性の確保


 特定の組織が、その組織の事業に関するステークホルダーを集め、意見交換をしていくことで、その組織の計画や行動に対して、社会的正当性を確保していくことができます。
個別企業がCSRにおける社会的正当性の確保のために主催して行うこともあります。

〔具体例〕
  • 欧州マルチステークホルダー・フォーラム


政策提言


 関係する複数のステークホルダーから同じ場で意見を出し、政策について議論していくことになり、社会的正当性の確保された政策提言を作成していくことができます。

 行政が主催し、得られた結論を政策立案に反映させることもあります。この手法では、行政にとって、会議開催の手間はかかるものの、各ステークホルダーへは一定の理解が得られた状況となるため、実行性の高く、素早い施策展開が可能になります。また、各主体が同じテーブルに着いて議論を進めていくため、行政が個別にステークホルダーと調整を行う必要が軽減され、政策調整にかかるコストを削減できる利点もあります。

〔具体例〕
  • 「国連持続可能な開発のための教育の10年」円卓会議
  • 市民が創る循環型社会フォーラム(名古屋市)