「新しい公共」の考え方

(所信表明演説・新成長戦略・財政運営戦略などにおける「新しい公共」に関する主な記載)

<第177回国会における菅内閣総理大臣施政方針演説>(抜粋)(平成23年1月24日)

(「新しい公共」の推進)

こうした「最少不幸社会の実現」の担い手として「新しい公共」の推進が欠かせません。苦しいときに支え合うから、喜びも分かち合える。日本社会は、この精神を今日まで培ってきました。そう実感できる活動が最近も広がっています。我々永田町や霞が関の住人こそ、公共の範囲を狭く解釈してきた姿勢を改め、こうした活動を積極的に応援すべきではないでしょうか。そこで来年度、認定NPO法人など「新しい公共」の担い手に寄附した場合、これを税額控除の対象とする画期的な制度を導入します。併せて、対象となる認定NPO法人の要件を大幅に緩和します。

<第176回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説>(抜粋)(平成22年10月1日)

二 経済成長の実現―経済対策と新成長戦略の推進
(成長と雇用による国づくり)

まず最初の課題は、経済成長です。国内消費を取り巻く状況には、厳しいものがあります。需要が不足する中、供給側がいくらコスト削減に努めても、値下げ競争になるばかりで、ますますデフレが進んでしまいます。これでは景気は回復しません。供給者本位から消費者目線に転換することが必要です。消費も投資も力強さを欠く今、経済の歯車を回すのは雇用です。政府が先頭に立って雇用を増やします。医療・介護・子育てサービス、そして環境分野。需要のある仕事はまだまだあります。これらの分野をターゲットに雇用を増やす。そうすれば、国民全体の雇用不安も、デフレ圧力も軽減されます。消費が刺激され、所得も増えます。その結果、需要が回復し、経済が活性化すれば、さらに雇用が創造されます。失業や不安定な雇用が減り、「新しい公共」の取組なども通じて社会の安定が増せば、誰もが「居場所」と「出番」を実感することができます。こうした成長と雇用に重点を置いた国づくりを、新設した「新成長戦略実現会議」で強力に推進します。

<第174回国会における菅内閣総理大臣所信表明演説>(抜粋)(平成22年6月11日)

三  閉塞状況の打破―経済・財政・社会保障の一体的建て直し
(「一人ひとりを包摂する社会」の実現)

私は、湯浅さんたちが提唱する「パーソナル・サポート」という考え方に深く共感しています。様々な要因で困窮している方々に対し、専門家であるパーソナル・サポーターが随時相談に応じ、制度や仕組みの「縦割り」を超え、必要な支援を個別的・継続的に提供するものです。役所の窓口を物理的に一カ所に集めるワンストップ・サービスは、今後も行う必要がありますが、時間や場所などに限界があります。「寄添い・伴走型支援」であるパーソナル・サポートは、「人によるワンストップ・サービス」としてこの限界を乗り越えることができます。こうした取組により、雇用に加え、障がい者や高齢者などの福祉、人権擁護、さらに年間三万人を超える自殺対策の分野で、様々な関係機関や社会資源を結びつけ、支え合いのネットワークから誰一人として排除されることのない社会、すなわち、「一人ひとりを包摂する社会」の実現を目指します。鳩山前総理が、最も力を入れられた「新しい公共」の取組も、こうした活動の可能性を支援するものです。公共的な活動を行う機能は、従来の行政機関、公務員だけが担う訳ではありません。地域の住民が、教育や子育て、まちづくり、防犯・防災、医療・福祉、消費者保護などに共助の精神で参加する活動を応援します。

<新成長戦略>(抜粋)(平成22年6月18日閣議決定)

【第2章 新たな成長戦略の基本方針-経済・財政・社会保障の一体的建て直し
-「新成長戦略」のマクロ経済目標】

上記のような経済財政運営の下、「新成長戦略」においては、2020年度までの平均で、名目3%、実質2%を上回る成長を目指す。特に、景気回復の継続が予想されるフェーズⅠにおいては、実質成長率を3%に近づけるべく取組を行う。物価については、デフレを終わらせ、GDPデフレータでみて1%程度の適度で安定的な上昇を目指す。失業率については、できるだけ早期に3%台に低下させる。過去10年の低成長等を考慮すれば、これらの目標の達成には困難を伴うと考えられるが、政策努力の目標と位置付け、全力で取り組む。
国民の満足度や幸福度には、所得などの経済的要素だけではなく家族や社会との関わり合いなどの要素も大きな影響を持つ。「新しい公共」の考え方の下、全ての国民に「居場所」と「出番」が確保され、市民や企業、NPOなど様々な主体が「公(おおやけ)」に参画する社会を再構築することは重要な課題である。政府は、マクロ経済目標の実現に向け全力を尽くすとともに、官では行うことが困難な、国民の多様なニーズにきめ細かく応えるサービスを無駄のない形で市民、企業、NPO等が提供できる社会の構築に向け、国民各層による取組を支える。

【第3章 7つの戦略分野の基本方針と目標とする成果】】
(国民参加と「新しい公共」の支援)

国民すべてが意欲と能力に応じ労働市場やさまざまな社会活動に参加できる社会(「出番」と「居場所」)を実現し、成長力を高めていくことに基本を置く。
このため、国民各層の就業率向上のために政策を総動員し、労働力人口の減少を跳ね返す。すなわち、若者・女性・高齢者・障がい者の就業率向上のための政策目標を設定し、そのために、就労阻害要因となっている制度・慣行の是正、保育サービスなど就労環境の整備等に2年間で集中的に取り組む。
また、官だけでなく、市民、NPO、企業などが積極的に公共的な財・サービスの提供主体となり、教育や子育て、まちづくり、介護や福祉などの身近な分野において、共助の精神で活動する「新しい公共」を支援する。

【21世紀の日本の復活に向けた21の国家戦略プロジェクト】

「新しい公共」が目指すのは、一人ひとりに居場所と出番があり、人に役立つ幸せを大切にする社会である。そこでは、国民の多様なニーズにきめ細かく応えるサービスを、市民、企業、NPO等がムダのない形で提供することで、活発な経済活動が展開され、その果実が社会や生活に還元される。「新しい公共」を通じて、このような新しい成長を可能にする。政府は、大胆な制度改革や仕組みの見直し等を通じ、これまで官が独占してきた領域を「公(おおやけ)」に開く。このため、「「新しい公共」円卓会議」や「社会的責任に関する円卓会議」の提案等を踏まえ、市民公益税制の具体的制度設計やNPO等を支える小規模金融制度の見直し等、国民が支える公共の構築に向けた取組を着実に実施・推進する。また、新しい成長および幸福度について調査研究を推進する。

【第4章 新しい成長と政策実現の確保】

「新成長戦略」は、「強い経済」の実現により、できる限り早期に3%台の失業率を実現し、失業のリスクを減らす。加えて、長期失業や非正規就業で生活上の困難に直面している「孤立化」した人々を、個別的・継続的・制度横断的に支える「パーソナル・サポート」制度を導入する。
また、こうした活動の可能性を支援する「新しい公共」すなわち、従来の行政機関ではなく、地域の住民が、教育や子育て、まちづくり、防犯・防災、医療・福祉、消費者保護などに共助の精神で参加する公共的な活動を、応援する。
世界各国が、世界同時不況を一つの契機に、より公正で持続可能な資本主義と成長の在り方についての本質的な検討を深めている。日本政府としては、幸福度に直結する、経済・環境・社会が相互に高め合う、世界の範となる次世代の社会システムを構築し、それを深め、検証し、発信すべく、各国政府および国際機関と連携して、新しい成長および幸福度(well-being)について調査研究を推進し、関連指標の統計の整備と充実を図る。このことにより、新しい成長、新しい環境政策、新しい公共を、一体的に推進するための基盤を構築する。

<財政運営戦略>(抜粋)(平成22年6月22日閣議決定)

6.新政権の財政運営戦略-国民の安心と希望のために-(抄)

我が国の財政の効率性を高めていくためには、徹底した無駄の削減と予算の使い途の大胆な見直しは当然行わなければならない。思い切った歳出改革を行い、徹底的に歳出を見直して必要な財源を確保していくことが、まず何よりも必要である。また、「新しい公共」の下、国民のためのサービスを市民、企業、NPO等が提供していくことは、国民の満足度、幸福度を高めることになるとともに、結果として歳出の削減にもつながりうる。

<第174回国会における鳩山内閣総理大臣施政方針演説>(抜粋)(平成22年1月29日)

二  目指すべき日本のあり方
(「新しい公共」によって支えられる日本)

人の幸福や地域の豊かさは、企業による社会的な貢献や政治の力だけで実現できるものではありません。
今、市民やNPOが、教育や子育て、街づくり、介護や福祉など身近な課題を解決するために活躍しています。昨年の所信表明演説でご紹介したチョーク工場の事例が多くの方々の共感を呼んだように、人を支えること、人の役に立つことは、それ自体が歓びとなり、生きがいともなります。こうした人々の力を、私たちは「新しい公共」と呼び、この力を支援することによって、自立と共生を基本とする人間らしい社会を築き、地域の絆を再生するとともに、肥大化した「官」をスリムにすることにつなげていきたいと考えます。
一昨日、「新しい公共」円卓会議の初会合を開催しました。この会合を通じて、「新しい公共」の考え方をより多くの方と共有するための対話を深めます。こうした活動を担う組織のあり方や活動を支援するための寄付税制の拡充を含め、これまで「官」が独占してきた領域を「公(おおやけ)」に開き、「新しい公共」の担い手を拡大する社会制度のあり方について、5月を目途に具体的な提案をまとめてまいります。