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今週の指標 No.1202 イタリアの南北格差について

ポイント

2018年6月20日

  1. イタリアは欧州政府債務危機以降、EU主要国経済が緩やかな回復を続ける中で、相対的に低成長に甘んじてきた。イタリアについては、国内において北部と南部・島しょ部との間の格差(図1)(注1)が大きいことも問題として指摘されており、地域間の経済動向の違いにも着目する必要がある。本稿では、イタリア経済における南北間の格差の状況について概観する。

  2. 北部、南部・島しょ部及びEUの一人当たり実質GDPの推移から経済格差をみると、北部がEU平均を上回っているのに対して、南部・島しょ部はこれを大きく下回り、北部の6割弱の水準で推移している(図2)。

  3. 南北格差の要因を産業構造の違いからみると、労働生産性の高い鉱工業就業者の割合が、北部では22.2%と南部・島しょ部の13.4%と比較して高く、逆に労働生産性の低いサービス業就業者の割合は北部では69.3%と南部・島しょ部の72.8%に対して低い(図3)。また、企業規模別の就業者割合をみると、労働生産性の高い大企業(従業員250人~)の就業者が、北部では25.3%と南部・島しょ部の9.1%を大きく上回る一方、生産性の低い零細企業(従業員0~9人)の就業者は、北部では42.0%であるのに対し、南部・島しょ部は61.6%と高い割合を占める(図4)。このような産業構造や企業規模の違いが、経済格差の背景にあるものと考えられる。

  4. 次に、家計の所得(家賃除く)格差を北部と南部・島しょ部の所得比でみると、欧州政府債務危機に直面していた2010年を境に、それまでの約1.30倍から約1.34倍に上昇しており、その後も南北差が拡大したままとなっている(図5)。

  5. この要因をみるため、南北の失業率を確認すると、南部・島しょ部は北部を一貫して大きく上回っている(図6(1))。特に2011年以降、南部・島しょ部の失業率が急上昇し、近年20%前後で高止まりとなっているのに対して、北部の失業率は2015年以降わずかではあるが低下傾向にあることから、南北差は拡大傾向にある(図6(2))。こうした失業率の違いが、南北間の家計の所得格差をもたらしているものと考えられる。

  6. この失業率の違いの背景には、南北間の人材の質の違いもあるとみられる。15~64歳の労働力人口における最終学歴の構成比をみると、大卒・大学院卒の割合が、北部では22.2%と南部・島しょ部の18.4%を上回り、また中卒以下の割合は、北部が29.9%なのに対し、南部・島しょ部は39.0%を占めている(図7)。こうした人材の質の違いが、南部・島しょ部の高い失業率の一因となっていると考えられる。

  7. 以上のように、南北イタリアには、産業構造や企業規模の違い、さらには人材の質に違いがみられ、これらを背景に、一人当たり実質GDPや家計所得に格差が生じている。格差の縮小には、人材の質向上といった労働生産性改善等の長期的な取組が必要となる。現在、EUの地域結束政策(2014-2020年)(Cohesion Policy 2014-2020)(注2)の下で、労働市場への参加の拡大や人的資本の質の向上等が取り組まれており、今後の政策効果が期待される。

(注1) 本稿では、「イタリア北部」を、ピエモンテ州、ヴァッレ・ダオスタ州、リグーリア州、ロンバルディア州、トレンティーノ=アルト・アディジェ州、ヴェネト州、フリウリ=ヴェネツィア・ジュリア州、エミリア=ロマーニャ州、トスカーナ州、ウンブリア州、マルケ州、ラツィオ州の12州、「イタリア南部・島しょ部」を、アブルッツオ州、モリーゼ州、カンパニア州、プッリャ州、バジリカータ州、カラブリア州、シチリア州、サルデーニャ州の8州と定義する。2017年の人口比は、北部の66に対し南部・島しょ部は34。

(注2) 地域結束政策(2014-2020年)(Cohesion Policy 2014-2020)は、EU域内の地域間格差是正を目標とした政策であり、274地域(州や広域的な地域の単位)を基本に、一人当たりGDPから対象地域を3地域(後進地域、移行地域、中進地域)に区分し、EU基金等を割り当てている。イタリアでは南部・島しょ部の5つの州が後進地域に区分されており、222億ユーロの予算が充てられている。2007-2013年の取組では、例えば、後進地域における「学校機構」プロジェクト(the‘school mechanism’project)により、2013年末までに40万人以上の生徒が職業訓練や留学等に参加する機会を得ている。


図1~図7



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担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
橋田 静、 直通:03-6257-1582

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