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今週の指標 No.1186 歯止めがかかりつつある人的資本ストック(教育資本)の減少

ポイント

2017年12月19日

  1. 人的資本ストック(教育資本)とは、教育課程を修了した人が将来生み出すと期待される所得の総額の現在価値である。これは15歳以上の人口や、1人当たりの教育を受けた期間、将来働くことの可能な期間、働いた際の雇用者報酬から計算できる。平均的な教育期間が長く、労働力人口の中で若年層の割合が高いほど、相対的に人的資本ストックは大きくなる。

  2. 地域の「稼ぐ力」の源泉である人的資本ストックは、全国的に1980~1990年の10年間では大きく伸びていたが、1990~2000年にはほぼ横ばいとなり、2000~2010年には減少に転じている(図1)。その背景には、高学歴化は進んだものの、高齢化による残存勤続年数の減少と、1人当たり雇用者報酬の低下がある。

  3. 各地域の教育資本は「15歳以上人口」と「一人一人が残る生涯で稼ぎ出す雇用者報酬(1人当たり生涯雇用者報酬)」の積であらわされる。この伸び率の内訳を見ると、1980~1990年では人口増加の大きい首都圏が顕著だが、全国的にも人口増と1人当たり生涯雇用者報酬の増加がプラス寄与となっている(図2-1)。しかし、1990~2000年には人口増は続くものの、1人当たり生涯雇用者報酬の伸び悩みでプラス幅が縮小する(図2-2)。2000~2010年には、都市部を除く地域での人口減少と全国的な1人当たり生涯雇用者報酬の大幅な低下で人的資本ストックは減少に転じた(図2-3)。

  4. 1人当たり生涯雇用者報酬の伸び率は、「教育水準に伴う賃金の上昇分」と「将来の雇用者報酬の現在価値」とに分けられる。また後者はさらに、労働者の年齢構成から算出した「予想残存勤務年数要因」、各時点での実質雇用者報酬から算出した「雇用者報酬要因」に分けられる。「教育水準に伴う賃金の上昇分」についてはどの時点においても教育期間が長期化(高学歴化)していることによりプラス寄与となっており、地域間の差も小さい。一方、「予想残存勤務年数要因」は労働力人口の高齢化に伴い、どの時点でもマイナス寄与となっている。「雇用者報酬要因」は、バブル期を含む1980~1990年に大きく伸びていたことからプラス寄与だったが、バブル崩壊後の1990~2000年はそれらが伸び悩み、2000~2010年には全国的にマイナス寄与となった(図3-1~3-3)。都道府県別にみると、高齢化が進み、比較的雇用者報酬の低い地域では、特に人的資本ストックの低下幅が大きくなっている。

  5. 足元までの動向をデータの取得可能な全国で見ると、2010~2016年にかけて人的資本ストックの減少には歯止めがかかり、ほぼ横ばいとなっている。これはリーマンショック後の景気回復により雇用者報酬が増加したこと、女性や高齢者の労働参加が進み、高齢化に伴う予想残存勤務年数の減少を相殺したことによる(図4)。

  6. このように人口動態の趨勢が大きく変化しない中で、将来的に人的資本ストックを増加させるには、実質の雇用者報酬が増加する必要があり、そのためには生産性向上に向けた各種取組を進めていく必要がある。また、働き方改革を通して、女性や高齢者の労働参加率の上昇を促すことも、予想残存勤務年数の低下幅を縮小させるために必要である。


図1 都道府県別の人的資本ストック(教育資本)の推移(実質 1980年~2010年)
図1a
図1b

図2-1 都道府県別の人的資本ストック(教育資本)の伸び率の内訳(1980~1990年)
図2a

図2-2 都道府県別の人的資本ストック(教育資本)の伸び率の内訳(1990~2000年)
図2b

図2-3 都道府県別の人的資本ストック(教育資本)の伸び率の内訳(2000~2010年)
図2c

図3-1 都道府県別の1人当たりの生涯雇用者報酬の伸び率の内訳(1980~1990年)
図3a

図3-2 都道府県別の1人当たりの生涯雇用者報酬の伸び率の内訳(1990~2000年)
図3b

図3-3 都道府県別の1人当たりの生涯雇用者報酬の伸び率の内訳(2000~2010年)
図3c

図4 全国の人的資本ストックの伸び率の内訳
図4


(備考)
1.総務省「国勢調査」、国立社会保障・人口問題研究所「生命表」、内閣府「県民経済計算」「国民経済計算」により作成。数値は実質値(2005年基準)。
2.長期的な一国の生産基盤の変動を評価するため、国連は包括的な豊かさの指標(IWI   Inclusive Wealth Index)として「包括的富報告書」を公表している。この報告書で人的資本ストックは、教育資本と健康資本の合計としているが、本稿では特に教育資本に注目する。
3.人的資本の計算式は、以下の通り。
人的資本ストック
=15歳以上人口×一人一人が残る生涯で稼ぎ出す雇用者報酬
=15歳以上人口×教育水準に伴う賃金の上昇分×労働者の年齢構成、雇用者報酬から推計される1人当たり生涯雇用者報酬の現在価値

数式
ただし、population(>15):15歳以上の人口、Edu:平均教育年数、ρ:教育を1年増やすことによる対数賃金の増加率 8.5% 、T:予想残存勤務年数、r:1人当たり雇用者報酬、δ:割引率, 4%
Population(>15)は、「国勢調査」の産業等基本集計より取得。
Eduについて、学歴別の教育年数を最終学歴別の人口及び在学者の人数で加重平均したもの。学歴別の教育年数は小中学校卒:9年、高校・旧制中学卒:12年、短大・高専卒は:14年、大学・大学院卒:16年として計算。在学者おいては小中学生:7.5年、高校生:10.5年、短大・高専生:13年、大学・大学院生:14年として計算。最終学歴別の人口及び在学者の人数は、「国勢調査」の産業等基本集計より取得。
Tについて、男女別の各都道府県別平均勤続年数を男女別15歳以上人口で加重平均したもの。都道府県別平均勤続年数は「国勢調査」の人口等基本集計より取得した男女別の年齢階層別の人口及び、産業等基本集計より各年齢別の労働力状態のデータから計算した各年齢別労働力率、「生命表」に基づき、将来の各年齢階層別の予想勤続年数を算出し、年齢階層別人口で加重平均したもの。
rについて、「県民経済計算」より雇用者報酬及び雇用者数を取得し、1人当たり雇用者報酬を計算。
図4に関し教育期間について、1980~2010年の伸び率の教育期間の伸び率のトレンドに鑑み、2010~2016年は1.6%の伸びと仮定。

問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-地域担当)付
大野 悠治 直通:03-6257-1577

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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