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今週の指標 No.1172 英国の物価及び労働市場の動向と金融政策

ポイント

2017年7月24日

  1. 英国では、イングランド銀行(BOE)が昨年8月に金融緩和策を行ったが(※1)、物価上昇や良好な労働市場を踏まえて、8月以降利上げがなされるのかどうか注目が高まっていることから、ここでは、金融政策の判断に影響を与える英国の物価及び労働市場の動向を整理することとしたい。

  2. 英国では、17年に入り消費者物価が上昇し、6月の総合消費者物価上昇率は2.6%、コア消費者物価上昇率も2.5%に達し、BOEの設定する2%のインフレ目標を超えている(図1)(※2)。このような物価の急上昇の背景にあるのは、昨年6月のEU離脱を問う国民投票で離脱派が勝利して以降、英国経済に対する先行き不透明感が高まったことでポンド安が進行し、輸入物価及び生産者投入物価が上昇、それが消費者物価に転嫁されたことが要因となっている(図2)。

  3. 消費者物価を寄与度分解してみると、特徴としては昨年後半より財及びエネルギー価格がプラスに寄与し始めてきたことに加え、14年後半以降長らくマイナス圏内で推移していた食料品価格が17年に入ってプラスに寄与してきたことがあげられる(図3)。

  4. BOEが6月に開いた金融政策委員会では、8人の委員中、利上げ票を投じた委員が3名と5月委員会時の1名から増加した。物価上昇率が、既にBOEが5月に予測した物価上昇率に達していること、17年後半に向けて物価が更に上昇すると予測していることが背景にあると考えられる(図4)。また、以下でみるように労働市場が良好なことも一因と考えられる。

  5. 英国の労働市場について、いくつかの指標を基に概観してみると、5月の失業率は4.5%と1970年代以来の低水準に達するとともに、労働需要を表す有効求人数はすでにリーマンショック前の水準を超えるまで回復している(図5)。労働供給側をみても、14年、15年と比較して労働参加率は高い水準を維持している(図6)。このことから、英国では労働市場の需給の緩み(スラック)が縮小しているとみることができる。

  6. 他方、失業率が低下する中でも、経済に対する先行き不透明感等の理由から、企業は賃金の引上げに慎重になっており、名目賃金上昇率は緩やかなものに留まっている。この結果、インフレを考慮した実質賃金の伸びは、5月は▲0.5%と4か月連続でマイナス圏に沈んでおり、個人消費の足かせとなっていることから、英国経済の景気回復を緩やかにさせる一因となっている(図7)。

  7. 6月の金融政策委員会後の公表文では、「全てのメンバーが政策金利の引上げは限定的かつ緩やかなペースで行われる旨に同意した」と述べられており、利下げの可能性が取り下げられた(※3)。ただし、賃金の低下に伴い個人消費に減速がみられること、先行き不透明感から民間企業設備投資や鉱工業生産が伸び悩んでいることから、金融政策の判断は難しい状況となっている。今後は、物価の先行き及び労働市場の現状、個人消費を中心とした景気の減速を考慮しながら金融政策のかじ取りが求められる。

(※1)16年8月3日の金融政策委員会において、政策金利の引下げ(0.5%から0.25%)、資産(国債)購入枠の拡大(3,750億ポンドから4,350億ポンド)、社債購入の再開(最大100億ポンド)、新たな貸出促進策を内容とする金融緩和策を実施した。

(※2)英国では、インフレ目標の2%から±1%以上の乖離をした場合、BOE総裁は、財務大臣宛てに、公開書簡を発出する必要がある。公開書簡においては、インフレ目標から乖離が生じた理由の説明、今後の金融政策委員会の対応等の記載が求められる。

(※3)Bank of England (2017) “Monetary Policy Summary and minutes of the Monetary Policy Committee meeting ending on 14 June 2017” より。


図1~7

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担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
平田 明日香 直通:03-6257-1582

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