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今週の指標 No.1167 韓国若年層の雇用について

ポイント

2017年5月19日

  1. 韓国の失業率は2016年に3.7%と、OECD加盟国と比較して低い水準にある(図1)。一方で、15~64歳の失業率に対する15~24歳の失業率の比率を比較すると、OECD加盟国の中でイタリア、ロシアに次いで3番目に高い数字となっている(図2)。このため、全体の失業率は低いものの、15~24歳の失業率との格差が大きく、若者の雇用が大きな問題となっていることがうかがえる。若者の雇用環境が悪化すれば、就業を通じた人的資本の蓄積の遅れや婚姻率の低下による少子化の進行によって、潜在成長率の低下につながりかねない。本稿では、中長期的にも韓国経済に影響を与えうる韓国若年層の雇用に着目して分析する。

  2. 韓国の失業率をみると、世界金融危機の影響から2009年と10年にやや上昇した後、3%台前半で推移したが、14年以降は景気減速などを受けて再びやや上昇している。若年層(※1)の失業率をみると、7~8%台と全体の失業率に比べて高い水準で推移しており、16年には9.8%に上昇した(図3)。

  3. 学歴別の失業率をみると、全年齢層では、高卒・短大卒の失業率は全体の失業率よりも高く、4年制大学卒以上は低いことから、学歴が高いほど失業率が低い(図4(1))。しかし、これを若年層についてみると、高卒の失業率が全体の失業率に比べて高いという傾向は全年齢層と同じだが、4年制大学卒以上が全体より低いとは言えない(図4(2))。韓国では大学進学率が高く、こうした高学歴者は期待所得も高い。他方、中小企業と大企業との間で賃金格差が大きく、中小企業に対する社会的評価も低いことから、高学歴者は大企業への就職を希望するものの、大企業の雇用は全企業の2割弱に過ぎず、高学歴でも就業できないという雇用のミスマッチが従来から生じていた。加えて、近年では25~29歳における中小企業と大企業(※2)の月平均賃金の格差が拡大していることから、高学歴若年層の大企業への就職意欲が一層高まっていると考えられる(図5)。

  4. また、若年層の失業率が高まっている背景の一つに、定年の引き上げが考えられる。13年に「雇用上の年齢差別禁止および高齢者雇用促進法改正法」が国会で可決され、従来は努力義務であった定年を60歳以上とすることが義務化された(※3)。企業は50歳代の労働者を60歳まで継続して雇用する必要性が生じ、年功賃金制が強く残る韓国では人件費の負担が急増したために、若年層の新規採用を控えたと考えられる。その他にも、14年以降の経済成長率の低迷など経済の先行き不透明感が高まり、製造業の景況判断指数が世界金融危機時よりも低下した中で、企業が人的資本への投資費用を削減するために、若年層の採用を抑制したことも一因であると思われる(図6)。

  5. このような若年層の雇用環境は所得にも影響し、世帯主が39歳以下の世帯(※4)の月平均所得(名目)の伸びは、全世帯よりも低い傾向にあり、2015年には統計を取り始めた2003年以来、初めてマイナスとなった(図7)。また、それに伴って、支出の伸びも鈍化している。こうした若年層の所得の低下は、中長期的に消費を鈍化させる一因になる可能性もあることから、若年層の雇用についてより一層注視が必要である。

(※1)統計庁が行っている「経済活動人口調査」では、若年層を15~29歳としているため、本稿でもこの定義を用いる。

(※2)韓国雇用労働部が行っている労働条件の調査において、企業規模がグループ1~6に分類されている。中小企業は従業員数300人未満のグループ1~4、大企業は従業員数300人以上のグループ5~6とした。

(※3)同法は、従業員300人以上の事業所では16年から、300人未満の事業所では17年から施行された。同法には、定年を60歳未満に定めたとしても60歳とみなすという規定が盛り込まれている。

(※4)韓国統計庁によると、2016年の平均初婚年齢は男性が32.8歳、女性が30.1歳である。結婚した後世帯主になる場合が多い点、世帯主が29歳以下の世帯数の全体に占めるシェアが不明である点などを考慮して、ここでは世帯主が39歳以下の場合と比較している。


図1~7

問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
石原 弘美 直通:03-6257-1582

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