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今週の指標 No.1158 対米ドル円レートの変動要因に対する定量的考察

ポイント

2016年12月26日

  1. 2016年の対米ドル円レートは、年初から8月半ばにかけ1ドルあたり約20円円高方向に推移したものの、その後は本稿執筆時点(※1)までに約15円円安方向に推移し、年間での日次変化率の標準偏差は、これまでのところ2010年以降で最も大きな値となっている(図1)。この変動の背景として様々な要因が報じられているものの、大きくは日米金利差によるものと投資家のリスク選好によるものに分けられると考える(※2)。そこで、以下ではこの2つの変動要因に着目し、それぞれが対米ドル円レートの動きにどのような影響を与えたのか整理する。

  2. まず、日米金利差と対米ドル円レートの関係を確認する。日米金利差は残存期間が同じ米国債利回りと日本国債利回りのスプレッドで示され、スプレッドが拡大すると米国債等の投資妙味が高まることから、ドル買い円売りの動きが強まるとされる。2016年の日米金利差の動きをみると、年初から9月初めにかけ振れを伴いつつ緩やかに縮小したものの、その後は大きく拡大に転じており、対米ドル円レートと相似した動きとなっている(図2)。

  3. 次に、投資家のリスク選好と対米ドル円レートの関係を確認する。グローバルな市場における投資家のリスク選好を示す指標として一般的にVIX(※3)など(※4)が用いられ、投資家のリスク回避姿勢が強まると、日米間の経常収支や対外債務・債権状況の違いなどを背景に、円買いドル売りの動きが強まるとされる(※5)。2016年のVIXと対米ドル円レートの動きをみると、VIXが上昇する局面では、対米ドル円レートの円高方向への振れ幅が大きくなっている(図3)。

  4. 続いて、対米ドル円レートに対する日米金利差と投資家のリスク選好の関係の違いについて考察する。金融資産の平均的な価格変動とボラティリティの分析などで用いられるEGARCH(※6)モデルにより推計を行ったところ、平均式においては、日米金利差が正で有意、VIXが負で有意となった。また、分散式においては、日米金利差が有意でない一方、VIXが正で有意となった(表1)。すなわち、対米ドル円レートの平均的な水準の変化に対して、日米金利差の拡大は円安方向に影響を及ぼす一方、投資家のリスク回避姿勢の強まりは円高方向に影響を及ぼす可能性が示唆され、また、ボラティリティの変化に対して、投資家のリスク回避姿勢の強まりはボラティリティの上昇に影響を及ぼす可能性が示唆される。

(※1)2016年12月13日。
(※2)この他、様々な投機的要因や実需的要因が考えられる。例えば、利益確定の売買やリパトリなど。
(※3)VIX(Volatility Index)とは、米国S&P500指数オプションの価格情報を用いて算出されている株価ボラティリティ指標で、オプション市場の参加者が予測する将来(先行き1か月)の株価変動の不確実性の大きさを表し、数値が高いほど市場参加者のリスク回避姿勢が強いとされる。
(※4)この他に、例えば、EMBIスプレッドやハイ・イールド債スプレッドなどが挙げられる。
(※5)あくまで市場参加者の一般的な見方であり、異なる見解があることに留意が必要。なお、直近では、日本は経常黒字かつ純債権国、米国は経常赤字かつ純債務国となっている。
(※6)Exponential Generalized Autoregressive Conditional Heteroscedasticity。


図1 図2、3 表1 備考



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