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今週の指標 No.1155 中国 鉄鋼輸出の動向について

ポイント

2016年11月28日

  1. 2008年のいわゆる「4兆元の景気対策」以降、中国の鉄鋼業界は需要拡大を見越して生産能力の増強を続けてきた。しかし、生産能力に見合うほど需要は増加せず、不動産市況の低迷の影響もあって、過剰生産能力問題が深刻化した。こうした中、14年以降、中国の鉄鋼輸出量が急増し、過剰生産された鉄鋼が安価で輸出されているとの見方が広まった(※1、2)。

  2. 中国の鉄鋼輸出量は、足元では3か月連続で前年比マイナスとなっており、輸出増に頭打ちの動きがみられる(図1)。以下では、こうした動きの背景について、中国国内の需給動向から分析するとともに、今後の見通しについて検討する。

  3. 中国の固定資産投資の動向をみると、減速が続いていた不動産開発投資及びインフラ関連投資が16年に入り大幅に拡大しており、これらは鉄鋼需要を増加させていると考えられる(図2)(※3)。国内需要の増加を受け、粗鋼生産量は16年に入り増加傾向に転じている(図3)。また、13年後半以降、増加を続けていた鉄鋼在庫も16年に入って大幅な減少に転じている(図4)。世界的な商品市況の改善もあり、粗鋼の原材料である鉄鉱石価格は16年初より持ち直しの動きに転じているものの、需要増加を背景に鉄鋼製品の価格も持ち直していることから、鉄鋼企業の総利潤は急回復している(図5)。こうした国内需要の増加や事業環境の改善は、鉄鋼企業にとって安値輸出の必要性を低下させるものである。

  4. 鉄鋼輸出の動向を国別にみると(※4)、アメリカやEU向けの輸出は15年中に既に減少傾向に転じていたことがわかる(図6)。その背景には、中国からの安価な鉄鋼輸出に対抗し、アメリカ及びEUがアンチダンピング(AD)措置を講じたことが影響していると考えられる(※5)。一方、新興国向け、特に地域別で最大の輸出先であるASEAN向けや、中東向け輸出は14年の伸びが急激だったため、前年比の伸び率では15年に既に鈍化していたものの、16年に入ってからようやく前年比横ばいないし減少に転じた。ASEANの鉄鋼需要はインフラ投資等に支えられ堅調に増加しているが、特に14年の伸びが急速だったこともあり、鉄鋼消費量に占める中国産のシェアは近年大幅に増加している(図7)。

  5. 中国政府は鉄鋼の過剰生産能力の調整を進めており、国有大手企業の統合も発表されている(※6)。一方で、中小企業には政府主導の調整が及んでいないとの指摘もあり、実際、中国の粗鋼生産に占める大手企業以外の割合は高まってきている(図8)。国内需要の増加とそれに伴う価格の持ち直しを受けて、中小企業が増産を行う可能性もあり、過剰生産能力の解消には不透明さがある。足元の需要増を支えているインフラ関連投資や不動産開発投資が今後減速した場合、過剰生産された鉄鋼が再び輸出に振り向けられる可能性がある。ASEAN諸国においても、安価な鉄鋼の流入が地場の鉄鋼企業にマイナスの影響を与えているとの指摘がある他、中国産鉄鋼へのAD措置を発動する動きもみられており(※7)、今後の鉄鋼輸出動向には引き続き注視が必要である(※8)。

(※1)14年に鉄鋼輸出が急増した背景には、「ボロン鋼」という特殊鋼材の輸出に補助金(輸出税の還付)が付加されていたところ、国内需要の減退等に伴い、一般鋼材にも微量のボロンを添加し「ボロン鋼」として輸出し始めていたと指摘されている。なお、この補助金は15年1月に撤廃されている。

(※2)15年の中国の粗鋼生産は世界全体の約49.6%、鉄鋼純輸出は9,840万トンでいずれも世界第一位(World Steel Association“World Steel in Figures 2016”)。

(※3)PIMCO(2015)によれば、中国国内の鉄鋼需要の約50~60%が建築関連に使われている。

(※4)15年のASEAN、中東、韓国、EU、アメリカ向けは中国からの鉄鋼輸出数量全体の約64%を占めた。

(※5)アメリカは16年5月、EUは15年8月よりAD課税を実施。なお、経済産業省「不公正貿易報告書(2016年版)」によると、15年の世界全体の鉄鋼に関するAD調査開始件数は43件と、2014年の23件を大きく上回った。

(※6)中国政府は、16年より5年間で1~1.5億トンの鉄鋼生産能力の削減を進めるとしている。また16年9月には国有大手鉄鋼企業2社が経営統合を発表、11月には国家発展改革委員会が16年の削減目標を前倒しで達成したと発表している。

(※7)各種報道による。

(※8)16年9月に開催されたG20杭州サミットでは鉄鋼の過剰生産能力に関するグローバル・フォーラムの設立等が合意された。


図1~8

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