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今週の指標 No.1149 中国を巡る国際投資資金の動向について

ポイント

2016年8月29日

  1. 2015年以降、中国人民元は主要通貨に対して下落基調が続いている(図1)。人民元レートの変動の背景には、外国人投資家による対中投資の減少や、中国人投資家による対外投資の増加等の動きがある。

  2. 国際投資マネーのフロー面を国際収支統計で確認すると、14年4~6月期以降に金融収支(除く外貨準備変動)はマイナス(資金流出超)に転じており、直近16年1~3月期までマイナスが継続している(図2)。同統計を細かく見ると、直接投資収支のマイナスは、国内投資家による対外投資の増加を要因としている。また、証券投資収支のマイナスは、国内投資家による対外投資の増加と外国人投資家による対中投資の減少を要因としている。その他投資収支(※1)については、14年は国内投資家による対外投資の増加が、15年以降は外国人投資家による対中投資の減少がマイナスの要因となっている(図3)

  3. 次に、国際投資マネーのストック面を国際投資ポジション(International Investment Position)で確認すると、外国人投資家による対中投資は直接投資が中心であることが分かる(図4)。一方、対中投資の満期を調べるために、世界銀行が公表している対外債務統計(External Debt Statistics、※2)を見ると、1年以内に満期が到来する短期債務が減少傾向にあることが分かる(図5)。外国人投資家による対中投資の減少は、証券投資とその他投資を中心に、満期が到来した資金を中国に再投資せず本国に引き揚げているものと推測される。なお、対外債務の減少については、資金の借り手である中国企業が、元の先安観から外貨建て債務の一部を繰上げ返済したとの見方もある。

  4. 国内外の投資家が中国から資金を引き揚げている背景には、中国の景気減速、人民銀行の金融緩和による投資収益率の低下、アメリカの利上げによるドル調達コストの上昇、人民元の先安感等、様々な要因が考えられる。中でも中国経済については、内外投資家が抱いている景気の現状認識と見通しが低下している可能性がある。中国人民銀行が四半期毎で行っている調査では、企業、銀行共に自社の経営環境に対して慎重な見方を強めている様子が窺える(図6)。また、IMFが発表している世界経済見通し(World Economic Outlook)を見ると、中国の成長率見通しは13~14年にかけて水準が切り下がっており、5年先の中期見通しも悪化している(図7)。これは、14年3月の全人代において、過剰生産能力の解消や不動産投資の抑制など、投資依存型成長からの脱却が明確に打ち出されたことなどが背景にあると考えられる。

  5. 現在、中国経済は2016~20年の経済成長率目標を6.5~7%程度としており、一定程度の景気減速を容認しつつ、構造改革を優先する方針を取っている。構造改革の一例として、中国政府は15年5月にイノベーション能力向上を目的とした「中国製造2025(メイドインチャイナ2025)」という方針を打ち出している。この方針に従い、16年7月28日には「十三五(第13次5か年計画)国家科学技術イノベーション規画」が発表され、R&DのGDP比、国際学術論文における被引用数順位や特許保有数など、12に渡る具体的な数値目標が設定された。こうした改革が進めば、景気が減速する中でも新たな投資機会が生まれ、中国が魅力的な投資先であり続ける可能性は高いと思われる。中国の構造改革の進捗と国際投資資金の動向には、引き続き注視が必要である。

(※1)その他投資の内訳は、現預金、保険、貿易信用、その他貸出など。

(※2)対外債務統計は、国際投資ポジションの「負債」の項目から、直接投資の中の「その他資本」、証券投資の中の「債券」、その他投資全てを合算し、部門別、満期別に再集計したもの(IMF国際収支統計マニュアル第5版より)。


図1~7

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