内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  今週の指標  >  今週の指標 No.1147

今週の指標 No.1147 新興国債券市場における資金流出の動向について

ポイント

2016年6月27日

  1. 15年夏以降、世界的に金融資本市場や商品市場が大きく変動する局面が繰り返しみられる中で、グローバルな資金の流れ、とりわけ新興国への資金の流入状況(※1)が注目されている。内訳をみると、2005年1月以降の累計流入額は株式0.54兆ドル、債券1.52兆ドル(※2)と、債券への流入額が株式の約3倍程度となっている。以下では、新興国債券市場の資金流出入動向について考察する。

  2. 世界金融危機以降の低金利環境において、新興国債券は相対的に利回りが高かったこと等から資金の流入超が続いていたが、2015年第3四半期以降は流出超に転じている(図1)。この要因としては、原油価格が低下する中で中国経済減速への懸念が高まり、投資家のリスク回避姿勢が強まったことが指摘されている。これに加え、資金流出が発生する直前の新興国債券市場の状況を整理すると、1新興国債券保有者に占める海外投資家(※3)比率が高まっている状況の中で、2市場全体の流動性リスクが嫌気されたことが、資金流出を更に加速させた可能性がある。

  3. 07年第2四半期と15年第2四半期における各国10年債の海外投資家保有比率を比較すると、ほぼすべての新興国で上昇している(図2)。海外投資家が新興国債券の買い入れを進めた結果、ポートフォリオに占めるリスク資産の割合が上昇し、市場全体のリスク許容度が低下していたとみられる。また、主要な流動性指標をみると、10年債のビッド・アスクスプレッド(※4)はほぼすべての新興国で上昇しており(図3)、特にアジア新興国においては国債・社債ともに売買回転率(※5)が低下している傾向がみられる(図4)など、資金流出が起きる直前の債券市場では流動性リスクが高まっていた可能性がある。

  4. 流動性リスク上昇の要因としては、低金利環境を背景に、海外投資家による新興国債券の買い持ちが行われた可能性や、金融機関の経営体力が低下し、マーケットメイキング業務に取り組む余力が奪われた(※6)可能性が考えられる。

  5. 以上から、原油価格の低下や中国経済減速への懸念の高まりを背景に起きた15年後半以降の資金流出は、市場全体のリスク許容度が低下する中で新興国債券の流動性リスクが嫌気された結果、一層加速したものと考えられる。新興国債券への資金流入を分析するにあたっては、資源価格や中国経済の動向以外に、市場のリスク許容度や流動性といった要因が資金の流れに影響を与える可能性がある。本年6月23日に実施された英国のEU残留・離脱を問う国民投票の結果を受けた世界の金融資本市場の変動の影響も含め、引き続き十分な注視が必要である。

(※1)ここでは、資金流出入の対象国はIIF定義に従い、中国・インド・インドネシア・韓国・フィリピン・タイ・アルゼンチン・ブラジル・チリ・コロンビア・メキシコ・ベネズエラ・チェコ・ハンガリー・ポーランド・ロシア・ウクライナ・エジプト・レバノン・ナイジェリア・サウジアラビア・南ア・トルコ・UAEとする。

(※2)IIFによる。

(※3)ここでは、「海外投資家」を(※1)の対象国外の投資家とする。

(※4)ビッド・アスクスプレッドは、対象資産の価格を提示する仲介業者の買値と売値の差。小さいほど対象資産の流動性が高いとされる。

(※5)売買回転率は、期中の取引額を前期末と当期末の平均残高で除したもの。

(※6)マーケットメイクは、仲介業者自らが顧客との売買に応じ、金融資産の値付けを行う業務である。一定の証券在庫リスクを負うことが必要となるため、仲介業者には一定の財務基盤の頑健性が求められる。


図1~4

問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
阿部 龍斗 直通:03-6257-1581

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)