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今週の指標 No.1120 新興国:フラジャイル・ファイブ再考

ポイント

2015年4月27日

  1. 2015年後半にもアメリカの金融政策の正常化が見込まれる中、これが世界の資金の流れ、とりわけ新興国に与える影響が注目されている。2013年5月~8月頃には量的緩和の縮小を示唆する発言を巡って新興国からの資金流出や通貨安が懸念され、外的ショックに脆弱な国の通貨はフラジャイル・ファイブ* (以下「F5」という)と呼ばれた。過去に市場の不安心理が高まった局面ではこうした新興国から資本が流出する動きもみられた(図表1)。以下ではF5諸国をはじめとする新興国の現状を確認する。

  2. 各国経済のファンダメンタルズをみると、F5諸国は引き続き双子の赤字を抱えている点で概ね共通しているが、為替の動きにはかい離がみられ、ファンダメンタルズ以外の要因も影響していると考えられる(図表2)。具体的には、(1)原油・資源安がベネズエラ、ロシア、インドネシア*等の資源国に悪影響を及ぼしていること、(2)国内の政治情勢や地政学リスクの存在が挙げられる。インドやインドネシアでは14年に誕生した新政権の経済改革への期待が高まる一方、6月に総選挙を控えるトルコでは政権による中銀への圧力によって金融政策に対する不透明感が増したと指摘されている。また、ブラジルでは国営石油会社を巡る汚職事件で現政権の支持率が急落し、市場の信認にも影響を与えているとの指摘がある。さらに、ウクライナ情勢やこれに端を発するロシアへの経済制裁については今のところ解除の見通しが立っていない。

  3. 外的ショックへのバッファーとなる外貨準備の水準は、量的緩和が始まる前の07年と比べて目減りしている国が多いものの、ベネズエラやウクライナといった国を除きなお適正とされる水準にある(図表3)。加えて、過去の通貨・経済危機の頃に比べると、多くの国は変動相場制*に移行しており、危機時に資金を融通し合う通貨スワップ協定等が整備されているという制度面での違いもある。

  4. しかしながら、金融危機後の量的緩和によって世界の金融取引は拡大しており(図表4)、過去に比べて市場の変動も大きくなる可能性があることには注意が必要である。今後を展望する上では、アメリカの金融政策の転換のタイミングを注視するとともに、双子の赤字等のファンダメンタルズの脆弱性、資源依存、地政学・政治リスクといった要因から一部の国に端を発する市場の混乱が他国に伝播するリスクにも留意する必要があると考えられる。

  (注1)フラジャイル・ファイブは、ブラジル、インド、インドネシア、南アフリカ、トルコの通貨の総称。

  (注2)インドネシアは石油の純輸入国であるが、石炭・パーム油・天然ガス等を加えた資源全体でみれば純輸出国。

  (注3)ロシアは2014年11月に通貨バスケットの変動幅の上下限に達した際に実施していた為替介入を取りやめ、変動相場制に移行している。


図表1:VIX指数とフラジャイル・ファイブへの証券投資

図表2:各国の国債の格付けとリスク耐性

図表3:各国の外貨準備高の変化(07年末→14年末)

図表4:拡大する世界の金融取引



問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
鈴木 一成 直通:03-6257-1582

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