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今週の指標 No.1111 英国:物価上昇率の動向と金融政策

ポイント

2014年12月22日

  1. 英国では、14年7~9月期の実質GDP成長率が前期比年率2.8%となるなど、景気回復が続いている。一方で、14年11月の消費者物価指数(CPI総合)は前年同月比+1.0%となっており、他の欧州諸国と同様に、低下傾向にあるCPI上昇率は、13年年末以降イングランド銀行(英国中央銀行)の設定するインフレ目標(+2.0%)から下回って推移している(図1)。

  2. CPI上昇率について項目別にみると、ホテル・飲食といったサービス価格は横ばいで推移しているものの、エネルギー、食料・飲料、衣類といった商品価格の上昇率が低下傾向にあり、CPI上昇率を押し下げていることがわかる(図2)。商品価格の上昇率低下については、新規参入によるスーパーマーケットセクターでの価格競争激化なども指摘されているが、ポンド高や12年後半からの小麦価格の低下、14年年央から始まった原油価格の急落などによるところが大きいとみられる(図3)。小麦価格の低下を受け、食料・飲料の価格上昇率の低下が続いており、14年5月には、マイナスに転じマイナス幅が拡大している。また、14年年央から始まった原油価格の急落は、足下でエネルギーの価格上昇率をマイナスに押し下げている

  3. 一方で、原油価格の下落は、英国経済にとってプラスとも考えられる。英国は原油輸出国であると同時に輸入国でもあり、2005年以降において原油の純輸入国となっており、輸入超は12年まで緩やかに拡大していた(13年では対GDP比0.6%)(図4)。原油価格の下落は物価上昇率を低下させるため、企業収益の押し上げや家計の実質所得の押し上げによる投資や消費の拡大を通して最終需要の増加が見込まれる。エネルギー企業の利幅縮小によるマイナスの影響はあるものの、全体としてみれば英国経済に対するプラスの影響が大きいと考えられる。

  4. 金融政策については、イングランド銀行は、09年3月以降、政策金利を過去最低水準である0.5%に据え置いているが、景気回復が続く状況の下、15年後半の政策金利の引き上げが見込まれている。ただ、原油価格の低下が景気回復のペースを速めることが考えられるものの、CPI上昇率を押し下げることにもなり、政策金利の引き上げ時期の後ずれの可能性も指摘されている。

  5. すでにイングランド銀行は、14年11月の「インフレーション・レポート」において、インフレ見通しを大幅に引き下げている(図5)。この見通しでは、15年第1四半期に、CPI上昇率が1%を割り込む可能性が示唆されている。英国では、インフレ目標の2%から±1%以上の乖離した場合、イングランド銀行総裁は、財務大臣向けに公開書簡を発出する必要がある。公開書簡においては、インフレ目標から乖離が生じた理由の説明、今後の金融政策委員会の対応等の記載が求められることになる。過去に、イングランド銀行総裁が目標の下振れに対して公開書簡を発出した例はなく、下振れに対する公開書簡が発出されれば、今回が初めてのケースとなる。仮にそのような事態となった場合、イングランド銀行総裁が公開書簡においてどのような説明及び対応を示すかが、今後の利上げ時期との関係で注目される。



図1:消費者物価上昇率の推移 図2:項目別物価上昇率の推移

図3:原油価格と小麦価格の推移 図4:原油純輸出額の推移

図5:イングランド銀行のインフレ見通し
(備考)英国統計局、イングランド銀行、ブルームバーグより作成。
問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
田中 智也 直通:03-6257-1582

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