内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  今週の指標  >  今週の指標 No.1093

今週の指標 No.1093 米英;住宅価格をめぐる動向

ポイント

2014年3月31日

米国、英国の景気は、消費の堅調な増加などから緩やかに回復している。 この要因の一つは、住宅価格の上昇による資産効果である。 ここでは、両国の住宅価格の動向について概観し、今後の景気動向に対する意味合いを整理したい。

  1. 米英の住宅バブル崩壊後の住宅価格の比較
  2.   世界金融危機以後の住宅価格の動きを比較すると、 1 米国の下落幅が英国に比べ大きい (危機前ピーク比:米国▲31.9%、英国▲13.6%(危機前のピークは米国が06年4月、英国が08年1月))。 2 危機前のピークと比較した水準も米国が英国を下回っている(危機前ピーク比:米国81%、英国102%) という違いがみられる(図1)。また、住宅価格の可処分所得対比、家賃対比の長期平均からのかい離をみると、 1 米国においては、住宅バブル崩壊後、 長期平均を下回る水準まで価格が下落した一方で、 2 英国においては引き続き長期平均を 上回る水準にあることがわかる(図2)。 こうした動きの背景には、両国の住宅市場の構造的な違いがあるとみられる。 英国においては、厳格な建設規制や用地不足などの制約から慢性的に供給不足となっており、 両国の価格の違いの一因と考えられる(注1)。

  3. 米英の住宅価格の動向
  4.   米国においては、08年にサブプライムショック問題を背景に価格が急落した。 その後持ち直しの動きがみられるも、失業率の高止まりや所得の先行き懸念、住宅減税終了をうけた需要減退により 、10年6月から価格は再び低下へ転じた。価格の変動を大きくする要因の一つは、差押えの際の司法介入の有無である。 これがない州では価格調整のスピードが速くなる(注2)(図3)。12年になると、住宅価格は上昇に転じ、比較的速いペースで上昇している。 この背景には、景気回復が続くなか、 1供給不足;在庫件数が低水準となり、 在庫と販売の比率も適正6か月を下回ったまま推移(図4) 2低価格物件の減少; 市場価格の8割程度で販売され住宅価格を下押しする差押物件が減少傾向にあること等、住宅市場の調整の進展がある。

      英国においては、住宅価格は金融危機の影響により大きく下落した後、 政府の経済対策等から持ち直しに転じた。 しかし、10年以降は欧州政府債務問題等による先行き不安や景気停滞の影響から横ばいとなった。 その後、欧州政府債務問題の影響が弱まるにつれ価格が上昇し、特に13年以降はそのペースが速まっている。こうした動きの背景としては、 1移民の流入などによる世帯数増加しているのに対し、前述のとおり供給が不足していること(図5)、 2イングランド銀行の金融政策や政府の購入支援策(Help to buy)による需要促進効果(注3)、 3住宅価格の上昇をけん引しているロンドンにおける海外資本の流入の影響(注4)(図6)等があげられる。

  5. 先行きのポイント
  6.   米国においては、雇用・所得環境の改善が見込まれ、住宅金利も歴史的にみれば低水準にあることから 住宅市場の回復が続くことが期待される。また、べビーブーマーの子供世代が世帯形成を進める時期にさしかかっており 住宅購入の需要も見込まれることから、住宅価格の上昇が継続すると推測される。 一方で、 1住宅ローン金利の先高感(図7) 2値ごろ感の喪失;可処分所得の伸びが住宅価格の伸びを下回り、住宅取得可能指数も落ち込んでいること(図8)(注5) 313年1月より施行された住宅ローンに関する新基準の影響(注6)、 4いわゆるオバマケアと呼ばれる医療保険改革に伴う資産取引に関する新規の付加税等の影響などにも注視していく必要があろう。

      英国においては、住宅の供給制約が続く状況の下、政府の政策の終了時期やイングランド 銀行の利上げがポイントとなるといえよう。具体的には、 1政府のHelp to Buyの一部が16年3月末で終了となることに留意が必要である。また、 2住宅ローン金利は政策金利との連動する傾向にあり(図9)、イングランド銀行の政策金利引き上げの時期が重要となる。 この点、イングランド銀行はフォワードガイダンスを示し、当面の金融緩和姿勢の維持と利上げを行う場合も非常に緩やかな ペースとなることとしており、市場の期待もそうした見方に整合的で向こう1年程度は利上げを見込んでいない(図10)。 住宅価格の上昇基調の持続性についてはこうした政策動向が注目点と考えられる。


(注1)英国の環境、景観等の建設規制の厳しさや用地不足などの供給面での制約があり、 英国のIMF4条協議(2013年)では、都市計画の非効率性が需給ギャップの原因となっており、 推定100万戸の供給不足が生じていると指摘している。 また定量的には、住宅供給の価格弾力性は英国0.4、米国2.0と比べ小さく、 英国における供給制約を示している (*Caldera Sanchez, A. and A. Johansson (2011)“The Price Responsiveness of Housing Supply in OECD Countries” OECD WORKING PAPERS No.837より)。
(注2)米国には、抵当権実行の際に司法が関与する州としない州があり、後者は裁判官の許可を必要としない。 法廷尋問を受けず裁判外で金融機関が住宅を売却することが可能であったため法外な低価格が設定され、 価格の急落が散見されたと考えられる。S&Pケースシラー住宅価格指数でみると、司法が関与しない都市 ((例ロサンジェルス、サンフランシスコ、アトランタ)では、価格急落後の調整が比較的早く進展したのに対し、 司法が関与する都市(例ニューヨーク)では、価格の変動幅は相対的に小さく、価格調整のペースも遅い。
(注3)イングランド銀行と英国財務省は12年7月にFLSを導入し、銀行の貸出金利引下げや貸出促進を行っている。 ただし、住宅ローン向けの融資については14年1月末に対象から除外された。また、Help to buy は、 政府が一部を直接融資・保証し住宅ローンを借りやすくする政策。第1弾は13年4月、第2弾は13年10月より導入された。 前者は16年3月、後者は16年9月までが期限。
(注4)英国不動産会社Savillsの報告書によると、12年度のロンドン主要部の50%弱が海外からの購入。 地域別では、西欧・北欧諸国(13.6%)、香港・中国(7.4%)、東アジア・東南アジア・オーストラリア(6.4%)、 中東・北アフリカ(5.4%)、東欧・CIS諸国(5.1%)となっている。新築物件に限れば、80%弱が海外からの購入。 地域別では東欧・CIS諸国(19.4%)が最大のシェアをとなっている。(”Spotlight The World In London”2013より)
(注5)住宅取得可能指数とは、中位所得世帯が中位価格の住宅を所得する ローンの元利払い費用に対し十分な収入があるかどうかという基準値。 100を超えると住宅購入者にとって比較的買いやすい状況にあることを示す。
(注6)米消費者金融保護局(CFPB)が定めた新基準では、貸し手に対し 住宅ローン組成前に借り手の返済能力を確認、証明することなどを義務づけている。 基準を満たした住宅ローンは適格住宅ローン(Qualified Mortgage)として認定され訴訟リスクが低減する一方、 厳格な審査を行うためコストもかかる。


図1 米英;住宅価格の推移 図2 米英;住宅価格の水準

図3 米国;都市別価格 図4 米国;在庫の動向

図5 英国;戸数・移民の増減と着工数 図6 英国;地域別価格の推移

図7 米国;住宅ローン金利の推移 図8 米国;住宅取得可能指数

図9 英国;住宅ローン金利と政策金利 図10 英国;OIS(SONIA)カーブ

(備考)


(図1)英国統計局、Standard & Poor'sより作成。
(図2)OECDより作成。横軸、縦軸ともに、それぞれ住宅価格の可処分所得比、家賃比の長期平均からのかい離。
(図3)Standard & Poor'sより作成。
(図4)全米不動産協会(NAR)より作成。中古住宅の在庫動向を示す。
(図5)英国コミュニティ地方自治省より作成。戸数の増減の予測は2011年国勢調査をベースとする予測を使用。海外からのネット流入は、 長期移民数(net long-term migration)を1世帯あたり平均人数で除して算出。 13年の住宅着工戸数は、第2四半期までの実績と第3、4四半期のイングランド地方の着工数から試算 。実際には世帯数の内7割程度が持家保有率であり、その分を勘案するとギャップは見た目ほど大きくない。
(図6)英国統計局より作成。ロンドン、イングランド南東部の全体に対する販売件数の割合は、合わせて30%程度。
(図7)ブルームバーグより作成。住宅ローン金利はフレディマックの30年固定金利。
(図8)全米不動産協会(NAR)より作成。
(図9)イングランド銀行より作成。住宅ローン金利については変動金利を使用。
(図10)Bloombergより作成。3月20日時点。

問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
浅岡 嵩博 ・ 早川 真央 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)