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今週の指標 No.1089 メキシコ:エネルギー改革を巡る動向

ポイント

2014年2月24日

  1. 13年5月にFRBの金融緩和縮小観測が生じて以降、新興国の通貨安が続いているが、メキシコペソは他の新興国通貨と比べ底堅く推移している(図1)。13年の実質経済成長率が前年比1.1%に留まり、景気は力強さを欠いているが、政権交代に伴う公共投資の執行の遅れや9月のハリケーン被害などの一時的要因で成長率が押下げられた面もある(図2)。こうした中、ペソが底堅く推移している背景には、経常収支赤字の規模が小さく、インフレ率が落ち着いているなど、ファンダメンタルズが相対的に良好なことに加え(注1)、構造改革への期待がある。以下では最近の構造改革の動向について概観する。

  2. 12年12月に就任したペニャ・ニエト大統領は就任からわずか1年で、一連の構造改革を進めた(表1)。特に注目されているのは、国家独占となっている炭化水素(石油・天然ガス等)、発電事業への民間参入を促すエネルギー改革である。メキシコは世界有数の産油国で石油産業はGDPの4.6%、輸出の14%を占める重要産業であるが、地下資源は国家に帰属することが憲法で規定されており、石油産業は国営石油公社であるぺメックス(Petroleos Mexicanos)が独占している。

  3. 原油の生産量や価格の変化が経済にもたらす影響は大きいといえるが、原油生産量はピークの04年から約24%減少しており、確認埋蔵量も減少が続いている(図3)。これは利益の約6割という重い税負担等によりぺメックスが資金不足に陥り、新規油田探査や既存設備の更新などの投資が停滞していたことによる。今般の改革に伴い外資を含む民間企業の参入が可能となり、民間の潤沢な資金、高度な技術力により、減産と確認埋蔵量の減少に歯止めがかかることが期待される。

  4. また、メキシコの国家財政は歳入の約3割を石油関連の税収に依存しており、原油価格の変動といった不安定要素を有してはいるものの、石油の増産は税収の増加をもたらし財政基盤の強化につながると考えられる(図4)。加えて、財政改革では増税による税収基盤の強化を進めており石油関連からの税収以外の安定した歳入確保を進めている(注2)。

  5. 前述したように、構造改革により今後石油産業を含むエネルギーセクターへの対内直接投資の増加が見込まれるが、これは経常収支赤字をファイナンスしている資本収支の証券投資依存からの転換につながる(図5)。近年注目されている非在来型資源の開発ポテンシャルも高く(注3)、中長期的な資金の流入による、国内投資の増加、雇用創出といった循環により、経済成長率の押し上げが期待されている。

  6. なお、構造改革の進展を評価し、13年12月にS&P、14年2月にムーディーズが債務格付を引上げた(注4)。市場の評価は高まっており、メキシコに対する投資家心理の好転は通貨ペソの下支えに働くとみられる。ただし、エネルギー改革については2月以降に関連法・細則が審議され、詳細が決定される見通しであり、今後の動向が注目される。

(注1)13年3Q経常収支GDP比▲0.5%。(直近4四半期の経常収支と名目GDPの平均値との比較)。
    13年消費者物価上昇率3.8%。インフレターゲティングを導入しており、中期目標3%(±1%)の範囲内で推移している。

(注2)食品、医薬品への付加価値税導入は盛り込まれず、住宅関連・私学授業料への課税案は審議で否決されたことから不十分であるとの指摘もある。

(注3)技術的回収可能量はシェールオイルでは世界8位(13億バレル、シェア3.8%)、シェールガスでは世界6位(545兆立方フィート、シェア7.5%)。
    米エネルギー省情報局13年6月10日公表。技術進歩、規制等により見直される可能性がある。

(注4)13年12月19日:S&P    「自国通貨建て長期債務格付 A」・「外貨建長期債務格付 BBB+」
    14年 2月 5日:ムーディーズ「自国通貨建て長期債務格付 A3」・「外貨建長期債務格付 A3」


図1:新興国為替レート 図2:実質経済成長率

表1:構造改革の概要

図3:原油生産量と確認埋蔵量 図4:歳入と原油価格

図5:経常収支・資本収支



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担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
大和 昭広 直通:03-3581-9536

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