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今週の指標 No.1043 アメリカ:中古住宅市場の動向

ポイント

2012年9月24日

  1. これまで回復が鈍かったアメリカ住宅市場に、改善の兆しが見られる。新築住宅市場では、在庫圧縮が進み、着工件数は2011年秋以降、賃貸向けの集合住宅建設に牽引されるかたちで持ち直しに向けた動きが続いている。中古住宅市場でも、12年6月に、一戸建中古住宅の価格を示すケース・シラー住宅価格指数(以下「住宅価格」という)が1年9か月ぶりに前年比でプラスに反転するなど、一部に持ち直しの動きがでている。一方、中古住宅販売件数をみると、前年比ではわずかながら増加が続いているものの、年初からその足取りは重い(図1)。アメリカの住宅市場では中古住宅が市場の9割を占めており、その動向は新築の着工等にも大きな影響を与えることから、以下では中古市場の動向に焦点を当ててみていく。
  2. このところの中古住宅の価格上昇は、需要の増加というよりも、住宅在庫の減少による面が強い(注1)。中古住宅の在庫は、競売等を通じて中古市場に流入する差押え物件が減少したことなどにより(注2)、05年の水準まで減少している(図2)。一方、需要面では、中古販売件数は前年比増加を続けているが、年初の水準を大きく超えていない。11年以降、一戸建販売件数はローン申請指数を上回って増加しており(図3)、賃貸転用を目的とした投資家など住宅ローンを必要としない購入者が中古販売を牽引しているといえる。一方、これら現金での購入者は3割に満たず、本格的な需要の増加にはこうした購入者に加えて、居住用での購入や住み換えなどの増加が不可欠である。
  3. こうした中古住宅の価格上昇は、今後、需要を押し上げる可能性がある。まず、価格上昇は、これまで住宅の価格下落を予想し、購入を控えてきた需要を喚起すると考えられる。また、金融機関の住宅ローンの融資基準が依然厳しいことが販売件数を抑制する要因の一つとなっているが、住宅価格の上昇が継続すれば、新規貸付先の担保価値の上昇により金融機関が住宅ローン融資に前向きになることが期待される。一方、いまだ住宅ローン保持者の22%がネガティブ・エクイティ(住宅ローンの残高が当該住宅の現在価値を上回る状態)にあり(注3)、現在の住宅を売却できずに住宅の買換えを困難にしているといわれる中、消費者にとっても資産価値の向上はこうした状況を改善させうる。
  4. 今後、住宅価格の反転により需要が増加することになれば、住宅価格を更に押し上げ、中古市場に好循環を生み出す可能性もある。逆に、雇用情勢の改善の遅れなどから、価格上昇が持続せず再び下落に転じる場合は、需要の減退と在庫の増加を招き、更に長期に亘る調整を必要とする恐れもある。引き続き、中古住宅市場の動向を注視していく必要がある。

図1 住宅市場の動向 図2 中古住宅販売と在庫 図3 中古住宅販売と住宅ローン申請指数

(注)

  1. 全米不動産業者協会によると、特に、在庫の減少が進む西部地域で中古中位価格が好転しているほか、こうした地域では差し押さえ物件の販売件数が全体に占める割合が減少してきているとしており、こうしたことが住宅価格を押し上げていると考えられる。
  2. 2010年10月以降、差押え手続きの変更等により差押えの発生件数は減少しており、中古市場に放される物件も減少していると指摘される。ただし、差押え手続き中の物件など、未だ市場で取引対象でないものの、いずれ中古市場に放出されると考えられる潜在的な在庫は、2010年の210万件から減少したものの、依然150万件程度あるといわれ(コア・ロジック4月末調査)、これらが市場に放出される量が増えれば、再び住宅の需給バランスを悪化させる恐れもあることには、注意が必要である。
  3. コア・ロジック(9月公表の調査)より作成。ネガティブ・エクイティは、住宅を売却する場合には消費者に損が顕在化することとなり、またローンの借換えの際には必要な融資額を受け取れないことから、住宅の買換えや住宅ローンの借換えを困難なものにしている。
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