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今週の指標 No.1030 シンガポール:物価上昇抑制重視で金融引締めへ転換

ポイント

2012年5月21日

  1. アジア各国・地域で欧州債務危機懸念を発端とした自国経済の成長鈍化の局面に対し、政策金利の引下げ等金融緩和の動きがみられる中、4月13日シンガポール政府金融管理庁(MAS)は半年に一度(4月と10月に開催)の定例金融政策決定会合を開催し、金融引締めという対照的なスタンスを打ち出した。これは、原油高、家賃や車両購入権価格の上昇等のインフレ圧力が高まっていることを背景としている。MASは、12年通年の見通しについて、コアインフレ率は2.5~3.0%(11年10月時点の見通し1.5~2.0%)、家賃や車両購入権価格を含むインフレ率は3.5~4.5%(11年10月同2.5~3.5%)に引き上げた。しかし、コアインフレは12年1~3月期3.1%、インフレ率は同4.9%と見通しを上回っている状況である(図1)。
  2. MASは、政策手段として短期金利ではなく為替レートを用いており、名目実効為替相場のコントロールを通じて金融政策運営(注1)を行っている。すなわち、インフレ局面では、通貨高方向への為替誘導を行い、国内経済に大きく影響する輸入物価の低下を促すことで、インフレ圧力を抑制することが目指されることになる。今回の会合では、「穏やかで段階的なシンガポールドルの上昇を引き続き容認する」という基本的なスタンスは変更しなかったが、「シンガポールドルの上昇ペースをわずかに高める」とし、実質的な金融引き締めを実施する方針を示した。一方、MASは12年の経済成長率見通しを下方修正しており、この中で金融引締めを強化することは、インフレ抑制重視の姿勢を示したともいえる
  3. インフレ圧力の要因としてみられる家賃や車両購入権価格の上昇の背景には、外国人労働者の増加がある。シンガポール政府は、外国人労働者にも国内雇用法を適用する等、外国人を積極的に受け入れることで高成長を維持する戦略を採用してきたが、それによって人口が増加し、家賃や車両購入権価格(注2)の高騰などの問題を生じている(図2、図3)。そうした中で10年2月に打ち出した新経済戦略で、外国人労働者の流入を抑制し、労働生産性を引き上げることで成長を持続させる戦略に転換している。さらに、12年の新年度予算では、外国人労働者の雇用比率を引き下げ、外国人労働者への依存をさらに低下させる方針を明確にし、人口増によるインフレ圧力をさらに緩和させる狙いがみてとれる。
  4. しかし、外国人労働者の多くは建設業やサービス業に従事する単純労働者が多く、平均賃金の上昇につながりかねない。シンガポールはインフレ抑制重視の姿勢を打ち出しているが、このように外国人労働者雇用抑制策はインフレ率に対して双方向の影響があり、今後のインフレ率上昇圧力の加速につながるリスクになりうると考えられる。
(注1)政策では、国別の貿易高でウェイト(非公表)付けされた名目実効為替レート(NEER)を用いている。金融政策の具体的な内容は、1.中心値の水準 2.方向性(シンガポールドル高は引締めを意味し、シンガポールドル安は緩和を意味する)3.許容する変動幅(バンド)の三つ。MASは、NEERの算出法や1~3の詳細を公表していない。
(注2)新車を取得するための権利証のことで、政府より発行された権利証を入札制で落札する仕組み。政府は車両購入権の権利証の発行部数を一定の範囲で制限しており、入札の競争率が高くなった結果、車両購入権価格が上昇していった。なお、12年4~6月期の車両購入権価格は、1600cc以上の車で約7万3,000シンガポールドル(約455万円)、1600cc以下の車で約5万2,000シンガポールドル(約324万円)。

図1 消費者物価上昇率:運輸の伸びが高まっている 図2 シンガポール居住者の人口構造:外国人居住者が増加傾向 図3 車両購入権の価格の推移:上昇

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平野 真依子 直通:03-3581-9537

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