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アイルランド:依然として脆弱性を抱えた経済情勢

ポイント

2012年4月16日

  1. アイルランドは2010年11月に欧州連合等に金融支援を要請した。住宅バブル崩壊や世界金融危機で痛んだ銀行部門に対する公的資金注入で財政赤字が膨らみ、市場での資金調達が困難になったからである。11年半ば以降は、財政状況の改善等を背景に同国の国債利回りは低下基調となっている(図1)。しかし、11年7~9月期と同年10~12月期の実質GDPが2四半期連続で減少する等、良い材料ばかりではない。以下では、同国が抱えるリスクを概観する。
  2. アイルランドが抱えるリスクには、まず内需低迷の長期化がある。その第一の理由は、家計のバランスシート調整圧力が残存しているからである。住宅バブルが生じた同国の家計は最大で可処分所得の1.6倍程度の債務を抱え(2009年の値)、バブル崩壊後にその調整を迫られた。家計は返済を進めているが債務残高は高水準のままで、個人消費回復の足かせとなる事が懸念される。
  3. 金融機関を取り巻く環境が厳しい事も、内需低迷を長期化させる一因となり得る。バブル崩壊等でアイルランドの銀行の不良債権比率が2010年に10%を超える中、カウンターパーティーリスクが意識され、銀行の資金調達環境は厳しい状況が続いていると考えられる。欧州中央銀行からの流動性供給を受けてはいるが、銀行の貸出態度は厳格化され、企業の資金調達コストが増加したり、借入が出来ないと言う弊害が生じている(図2)。住宅ローン延滞率が上昇を続ける中、不良債権問題が短期で解決されるとは考えにくい。銀行の資金調達環境は厳しい状況が続き、企業の資金調達環境の悪化が続くリスクがあるため、設備投資の回復は展望しにくい。
  4. 内需が低迷する中で景気を牽引してきたのは輸出であったが、アイルランドの輸出を主導しているのは同国に進出した外国企業であり、そうした企業が得た所得は本国に流出してしまう。実際、実質GDPは2009年10~12月期(金融危機後のボトム)から11年10~12月期にかけて1.1%増加したが、海外からの所得の純受取を考慮した実質GNPは同時期に2.6%も減少しており、輸出増が国内所得増に結び付きにくい状況がうかがえる。また、世界経済にも下振れリスクがある中、輸出依存度が高いアイルランドはその影響を受けやすい(図3)。
  5. 以上のようなリスクが顕在化してアイルランドのGDPが下振れれば、債務残高(対GDP比)の増加に繋がって市場での懸念材料となり、同国の国債利回りは再び上昇する可能性がある。その場合、企業の資金調達コストは増加し、更なる内需下押し要因になるだろう。同国は2013年に国債市場へ復帰する予定となっているが、国債利回りが大幅に上昇すれば、復帰がスムーズに進まないリスクもある。脆弱性を抱えたままのアイルランドの動向には、今後も注意が必要である。

図1 南欧諸国等の国債利回りの推移 図2 各国企業の資金調達に際しての問題 図3 アイルランドの実質GDPの見通し

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担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
松本 惇 直通:03-3581-0056

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