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今週の指標 No.1024 所得収支の動向

ポイント

2012年2月27日

  1. 2011年の経常収支の黒字幅は、2年ぶりに縮小した。また、貿易収支は、鉱物性燃料価格の上昇等により輸入金額が増加し、震災や海外経済の回復が弱まったことなどの影響により輸出が減少した結果、現統計開始以来初の赤字となった。一方、2005年以降貿易・サービス収支を上回る状況が続いている所得収支については、4年ぶりに黒字幅が拡大し、経常収支黒字を支えることとなった(図表1)。本稿では、所得収支の動向について整理する(貿易収支については、マンスリートピックスNo.004を参照)。
  2. 所得収支は、「雇用者報酬」のほかに、投資収益である「直接投資収益」、「証券投資収益」および「その他投資収益」で構成されており、「直接投資収益」と「証券投資収益」で所得収支の95%(2011年速報)を占めている(図表2-1)。2011年の所得収支は前年比2.3兆円と増加したが、そのうち「直接投資収益」が同比0.9兆円、「証券投資収益」が同比1.3兆円増加した(図表2-2)。以下では、「直接投資収益」と「証券投資収益」について整理する。
  3. 「直接投資収益」は、「利子所得」と「出資所得」からなるが、「出資所得」が大部分(直接投資の99.7%(2011年速報))を占めている。「出資所得」は、海外子会社などから得た「配当金・配分済み支店収益」と、投資先現地企業などの留保利益である「再投資収益」に分けられる。(図表3-1)。2011年の「直接投資収益」増加の大半は、「再投資収益」によるものである(図表3-2)。※
  4. 「直接投資収益」を生み出す「対外直接投資」については、海外需要を取り込むことや、海外企業との競争力維持などを目的に、製造業を中心に国内企業が海外進出・海外展開するようになって久しいが、そうした流れは2011年も続いていたと言える(図表4-1,2)。(なお、直接投資残高は、年末時点の為替レートで円換算されている。2010年末残高は対2009年末で約5,190億円減少しているが、うち、取引フロー等の要因で約49,820億円増加したものの、為替相場変動要因で約55,000億円減少しており、為替相場の影響が少なくない(財務省「本邦対外資産負債残高」増減要因(試算)による)) また、地域別に見た直接投資収益率(直接投資収益(受取)÷投資残高)を確認してみると、北米やEUといった先進国諸国向けの投資は、リーマンショック以降減少傾向にある一方で、アジアやその他地域向けの投資は、相対的には高い収益率を維持している(図表4-3)。
  5. さらに、対外直接投資残高について主要国と比較すると、日本企業の海外展開は、経済規模を考慮すれば、依然として低い水準にある。「対外直接投資残高/名目GDP比率」は、1990年以降、アメリカやドイツなど他の先進国がその比率を徐々に高める一方、日本はこの20年間あまり変化していない。また、「対外直接投資残高/名目GDP比率」は、「対内直接投資残高/名目GDP比率」とほぼ比例関係にあり、アメリカ、ドイツ、イギリスなどは、対外直接投資によるグローバル展開を進める一方、対内直接投資も同様に受け入れている(図表5)。今後、日本も主要国と同じように、対内投資の受け入れを促進しつつ、対外投資を展開していくとすれば、対外・対内直接投資収益の収支である「直接投資収益」は縮小していく可能性がある。「直接投資収益」を高めていくには、直接投資収益率をより一層高めていくことも必要であろう。
  6. 次に、「証券投資収益」について整理する。「証券投資収益」は、国債などの利息収入である「債券利子」と、株式配当金、投資信託分配金、投資信託運用会社の運用益(外国株式配当金および外国債券利息など)である「配当金」で構成され、「債券利子」が「証券投資収益」の約7割(2011年速報)を占めている(図表6-1)。リーマンショック以降、世界的な長期金利(利回り)低下を反映して「債券利子」は減少が続いているものの、2011年は、「配当金」が増加したことにより「証券投資収益」が増加した(図表6-2)。
  7. 「配当金」の増加要因について整理すると、企業業績の回復により株式配当金が増加したことや、相対的に収益率が回復しつつある新興国向けの証券投資が増加していることが挙げられる(図表6-3、4)。ここでは国内の公募投資信託における外貨建て資産運用状況(株式、債券)を確認する。近年、公募投資信託全体の運用資産に占める外貨建て資産の割合は高まっており、特に、外国債券での運用割合が高い(図表7-1)。この外国債券の運用先については、リーマンショック以降、オーストラリア、ブラジルといった新興国向けの比率が高まっており、2011年にはオーストラリア向けが34%、ブラジル向けが13%となっている(図表7-2,3)。これら新興国資産で運用する投資信託は、高い経済成長率を背景とした相対的な高金利・通貨高などへの期待から個人投資家の人気を集めてきた。2011年半ば以降、当該国の政策金利引き下げが不安視されたことなどから、関連の投資信託残高は減少している模様だが、総じて高金利国の債券利子収入に裏付けられた投資信託の運用収益についても、「配当金」に反映されているものと考えられる(図表8)。
  8. 今後の所得収支の動向については、対外・対内直接投資動向、対外投資の収益性に加え、外国為替相場や海外金融マーケットの動向に着目していく必要がある。

※投資先現地企業などの留保利益は、企業会計上は投資元の国内企業利益には計上されないが、国際収支統計上は、現地企業の決算後、半年程度経過した後から、当該留保利益を1/12ずつ向こう1年間にわたって計上される。従って、2011年に計上された「再投資収益」は、実際には2010年度決算以降の現地企業の留保利益が計上されていることになる。


図1 経常収支の推移 図2 所得収支の推移 図3 直接投資収益の推移 図4 対外直接投資の推移 図5 対外・対内直接投資残高の推移 図6 証券投資収益の推移 図7 証券投資信託の外貨建て資産運用状況

(備考)

  1. (図表1)日本銀行・財務省「国際収支統計」により作成。原数値(2011年は速報値)。(以下、特に記載がない場合は同じ)
  2. (図表5)OECD Statisticsにより作成。(米ドルベース)
  3. (図表7)投資信託協会により作成。
  4. (図表8)Bloombergにより作成。

問合せ先

担当:参事官(経済財政分析-総括担当)付
八木澤 一朗 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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