内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  今週の指標  >  今週の指標 No.1021

今週の指標 No.1021 中国:沿海地域の労働者不足と労働争議の急増

ポイント

2011年01月30日

  1. 中国では、毎年春節の時期になると、内陸農村部からの出稼ぎ労働者が一斉に帰省することから、沿海地域の労働者不足が指摘される。しかし今、沿海地域の労働者不足は一時的な問題ではなく恒常的な問題となりつつある。また、中央政府は国民の所得向上を目指し、賃金引上げ目標を打ち出しているものの(表1)(注1)、労働者の権利意識の向上等によりストライキは後を絶たない。以下、単純労働者を中心とした沿海地域の労働者不足及び労働者の権利意識向上に伴う労働争議の急増について概観する。
  2. 沿海地域の労働者不足の要因については、以下3点が挙げられる。1.若年労働者不足(16歳から34歳までの若年労働者の不足)、2.学歴上昇と職業選択意識の高まり(学歴水準が上昇し、生産現場等での従事を避ける傾向にあること)、3.内陸部での就業機会の増加(08年の金融危機以後内陸部への投資が促進され、内陸部での就業機会が増加していること)等である。
  3. 特に、1.の影響は大きい。年齢別求人倍率をみると、若年労働者(16歳から34歳)の中でも「25~34歳」の求人倍率は2010年以降1.0を超えて推移している(図2)。しかし、人口ピラミッドでみると、一人っ子政策の影響等から年少人口が減少しつつあり(図3)、09年の全労働者に占める若年労働者の割合は3割程度に過ぎない(図4)。
  4. 労働争議の急増については、08年の労働者保護が強調された「労働契約法」や「労働紛争調停仲裁法」の公布以後急増しており(図5)、労働者の権利意識が向上したことによるものが大きい。11年の労働争議急増の背景には、高い物価上昇率によって労働者の生活が圧迫されていることも挙げられる。
  5. 中央政府はこうした労働争議案件の急増に鑑み、企業内の労働紛争を早期解決する目的で、同年11月30日に「企業労働紛争協議・調停規定」(12年1月1日施行)を公布しているが(注2)、企業は金融引締めや世界経済の減速の影響等を受け(注3)、賃金引上げ等には慎重な姿勢を示している。
  6. 上述した問題は中国社会独特の構造的な問題と結びついており、短期的に解決することは難しい。今後も引き続き中国の労働事情について注視していく必要がある。
(注1) 中央政府は、第12次5か年計画(2011年~2015年)で、「可処分所得年平均成長目標は7%以上、最低賃金の伸び率は年平均13%以上とする」 と明記している。全体の8割弱を占める全国24の省・直轄市・自治区が11年中に最低賃金を引き上げており、平均上昇率は22%と高く、着実に目標を達成している。
(注2) 本規定は「労働紛争調停仲裁法」(08年5月1日施行)の付属法規で、労働争議解決手続きである協議、調停、仲裁、訴訟という4つのうち、協議と調停行為を規範化し、労使関係の調和・安定を促進することを目的としている。
(注3) 特に、輸出向け製品を主とする労働集約型産業の多い地域の企業は、11 年半ば以降の欧州政府債務危機を背景とした欧州経済の減速や、人民元高等の影響等による輸出の鈍化や受注数の減少により、経営難に陥っている。

表1 主要地域にみる最低賃金の状況 図2 年齢別求人倍率の推移 図3 人口ピラミッドの2時点比較 図4 年齢別労働者の割合(2009年) 図5 労働争議受理件数の推移
問合せ先
参事官(経済財政分析ー海外担当)付
嶋 亜弥子 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)