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今週の指標 No.1018 ブラジル:金融政策の転換とブラジル経済の課題

ポイント

2011年12月26日

  1. ブラジルでは、鉱物資源や農作物など輸出資源となる一次産品価格の高騰などから、10年後半以降、物価上昇率は高い伸びで推移した。これに対し、ブラジル中央銀行(以下、中銀)は、物価上昇率をインフレ目標値の範囲内(4.5%±2.0%)に抑えるべく、11年に入ってから8月まで、5回連続して政策金利を引き上げるなど金融引締めを実施してきた(図1)。しかし、8月の金融政策委員会では、インフレが未だ治まっていない中で、世界経済の先行き懸念の高まりが国内経済に波及し、経済活動をますます減速させることや、ディスインフレの傾向が強まることなどを理由に、それまでの引締め策から一転、政策金利を0.5%引き下げる決定を行った。中銀は、その後も3回連続して金利引下げを行うなど、金融緩和に軸足を移している。
  2. こうした金融政策の方向性を転換させた背景として、12月6日に公表された11年7-9月期の実質経済成長率が、前期比0.04%減と09年1-3月期以来のマイナス成長に転じていることが着目される(図2)。金融政策の引締め効果や10年央から11年8月にかけてのレアル高を受けて、製造業の生産活動は大きく鈍化したほか、物価上昇や先行き不透明感から個人消費も減退するなど、国内需要は急減速した。また、世界経済の減速感は、株価など金融資本市場の影響を通じて景気を下押しする懸念もある。
  3. ブラジルの国際収支をみると、資源輸出により財貿易が黒字である一方、海外への利子・配当払いによる所得収支の大幅な赤字により慢性的な経常赤字となっており、資金調達を直接投資や証券投資などの資本収支の黒字に依存しているが、11年央以降、資本収支の黒字の規模は縮小傾向にある(図3)。特に、欧州の政府債務問題を受けて投資家によるリスク回避の動きが強まっており、証券投資による資金流入は鈍化し(図4)、ブラジル株価(ボベスパ指数)の下落(図5)につながっている(注1)。また、政策金利引下げの影響も受けて、ブラジルレアルの対ドル為替レートは8月以降、大幅に減価した(図6)。
  4. また、ブラジルでは、国内銀行の資産総額上位15行(注2)のうち4行が欧州資本の銀行となるなど、金融資本市場での欧州の存在感は大きい。国外銀行のブラジル向け与信残高をみても、7割以上を欧州の銀行が占めており、更にその半分を債務問題に揺れるスペインの銀行が占めている(図7)。欧州の政府債務問題が、ますます深刻化するような事態になれば、欧州の金融機関の資産圧縮を通じて信用収縮の影響が波及しかねず、景気をさらに下押しする可能性もある。
  5. 一方、物価動向を見ると、11年11月の拡大消費者物価指数(IPCA)は前年同月比6.6%となり、依然インフレ目標値を上回っているものの、9月以降、食料・飲料品価格の伸びが大幅に鈍化したことを受けて、物価上昇率はこのところ低下している(図8)。中銀は、11年の物価上昇率を6.4%(9月時点)と見込んでおり、「緩やかな政策金利の誘導はインフレ目標の達成につながる」として、今後も政策金利を引き下げる余地があることを示唆している。しかし、医療・私的支出などのサービス価格は高止まりしており、失業率が低水準に推移していることや、次年度以降も最低賃金の大幅引き上げなど賃金上昇が続く可能性が高いことから(注3)、財やサービス価格への転嫁を通じて、物価上昇率を押し上げる懸念は残る。
  6. 景気の下振れリスクが強く懸念される中、当面の金融政策運営においては、景気動向や金融市場の動向への配慮がより重視されていくものと考えられる。一方で、行き過ぎた金融緩和策は、インフレを加速させる恐れがあり、今後もブラジルの金融政策の動向が注目される。

【注釈】

  1. ブラジル政府は、12月1日に資本流出抑制と内需の喚起を目的に、株式や一部長期債への外国投資家に対する金融取引税(IOF)減免、消費者ローン減税、一部家電製品等の工業製品税(IPI)減免等の措置を実施している。
  2. 銀行15行には、ブラジル中央銀行やBNDES(ブラジル国立経済社会開発銀行)など政府系銀行を含む。
  3. ブラジルでは、前々年の経済成長率や前年の物価上昇率を踏まえ、最低賃金が決定されるといわれており、12年は10%以上の最低賃金の上昇が予想されている。

図1 政策金利とCPI 図2 実質経済成長率 図3 国際収支 図4 対内証券投資推移 図5 ブラジル株価(ボベスパ指数)動向 図6 ブラジル為替(対ドルレート)動向 図7 国外銀行のブラジル向け与信残高のシェア 図8 消費者物価指数
問合せ先
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