内閣府 Cabinet Office, Government of Japan

内閣府ホーム  >  今週の指標  >  今週の指標 No.1014

今週の指標 No.1014 住宅市場は持ち直しの動き(確認申請件数を利用した住宅着工戸数の推計)

ポイント

2011年10月31日

  1.  リーマンショック後に急激に落ち込んだ住宅市場は、2009年8月を底にして持ち直しつつあったが、東日本大震災による建築資材の供給制約や住宅購入マインドの冷え込み等から、再度低迷した(図1)。しかし、住宅着工戸数(季節調整値)は、2011年7月95.5万戸(年率換算)、8月93.5万戸(同)と高い水準となり、「ゴールデンウィーク以降、客足は回復し、震災の影響は薄れてきている」(大手不動産会社)との指摘があるように、住宅市場は震災後の低迷から脱しつつあるように思われる。本稿では、住宅着工戸数のこの間の推移と見通しについて、7月にみられた住宅エコポイントの期限切れに伴う着工前倒しの影響に触れつつ、分析する。その際、住宅着工戸数の先行指標として相関の高い確認申請件数について、住宅着工の実務的な観点から整理し、同指標を用いて推計する。
  2.  住宅市場の指標は、景気判断に使われる住宅着工戸数の他、確認申請件数、マンション市場動向、地価LOOKレポート等、複数ある。例えば、持家(建築主が自分で居住する目的で建築するもの)の着工に至るまでの実務と各指標との関係を整理すると、着工の4~5ヶ月前の土地取得は「首都圏土地成約件数」(東日本不動産流通機構「月例マーケットウォッチ」)に、着工の約3ヵ月前の建築会社との建築契約は「戸建注文住宅受注棟数」(住宅生産団体連合会「住宅業況調査」)に、着工の約1ヵ月前の建築確認申請は「確認申請件数」(国土交通省)にそれぞれ反映される(図2)。
    このうち、確認申請件数(建築確認申請制度に基づく申請件数)は、住宅着工戸数と相関が高く、主要な先行指標とみなされている。
  3.  建築確認申請制度(建築基準法第6条に基づく)は、建築主が、工事に着手する前に確認検査機関(地方自治体や民間検査機関)に確認申請書を提出し、建築基準関係規定に適合することを示す確認済証を交付される制度であり、ほぼ全ての着工と大規模な修繕・模様替えが対象となっている。確認申請件数は、マンション等の1~3号建築物と、持家・戸建分譲等の4号建築物とに分類して公表される。確認申請書の提出から確認済証の交付までの期間(審査期間)は、1~3号建築物は約2~4週間、4号建築物は約1週間と異なっているため、申請のタイミングも、1~3号建築物は着工の約1.5ヶ月前、4号建築物は着工の約1ヶ月前となっている(表3)。
     確認申請件数と住宅着工戸数との関係では、4号建築物の確認申請件数は、その範囲が概ね持家・戸建分譲(以下「戸建系」という。)に一致しているため、戸建系着工の見通しを推測することが可能である。一方、1~3号建築物の確認申請件数は、1、商業施設等の非住宅建築物の多くを含んでいることや、2、棟単位で複数戸まとめて1件で申請されるものが多いことから、住宅着工戸数の貸家・共同建分譲(以下「共同系」という。)の動向を推測することは相対的に難しい。
     以上のことを踏まえ、4号建築物の確認申請件数から戸建系住宅着工戸数を推計し、住宅着工戸数の推移と見通しを分析する。
  4.  4号建築物の確認申請件数による戸建系住宅着工戸数の推計値と実績推移をみると、概ね一致しているが、7月と8月に大きな乖離がみられる(図4)。これは、7月末の住宅エコポイント期限切れに伴い、エコポイントの権利を得るため、確認申請の時期から通常のスケジュールで進めれば8月上旬の着工となる分が7月末に前倒しされたことによると考えられる。このため、7月の戸建系住宅着工戸数は2,400戸程度上振れ、その反動により8月に同程度下振れたと推察される。
     住宅着工戸数の総戸数に占める戸建系の割合が5割程度であることを踏まえると、総戸数では、4,800戸程度(年率換算5.8万戸、毎月の住宅着工全体の6~8%程度)の影響があったと試算される。
  5.  次に、東日本大震災の影響(建築資材の供給制約や住宅購入マインドの冷え込み等)により総戸数が押し下げられた戸数を、住宅エコポイントの期限切れに伴う着工前倒し(とその反動)の影響を除外した住宅着工戸数と、震災前の住宅着工戸数から推測されるトレンドラインとの差分を用いて推計すると、2011年3~6月の期間に、計2.1万戸程度の着工戸数が押し下げられたと考えられる(図5)。
     他方、7月以降の住宅着工は、震災以前からの回復過程に戻ったと考えられ、7、8月で実現されたトレンドラインからの上乗せ分、約1.0万戸を控除すると、9月以降の住宅着工戸数は計1.1万戸程度、上乗せされることが見込まれる。
  6.  また、住宅エコポイント制度及びフラット35Sの金利引下げ幅拡大措置の再開(ともに対象範囲や規模に変更あり)が9月21日に閣議決定されたこともあり、先行きについては、一時的に下振れることはあっても、住宅市場の基調としては、持ち直していくと期待される。

図1 住宅着工総戸数(年率、季節調整値)の推移 図2 持家着工に関わる手続きの流れ 図3 確認申請件数の集計分類 図4 住宅エコポイントの着工期限切れに伴う前倒し着工戸数の推計 図5 東日本大震災による着工押し下げ戸数の推計

(備考)

  1. 確認申請件数(4号建築物)を利用した着工戸数の推計方法は次のとおり。
    (a)推計に利用した期間は、着工統計ベースで2008年6月~2011年2月。
    (b)まず、住宅着工の先行指標として用いる確認申請件数を、着工の1ヶ月前と2ヶ月前の加重平均を用いて、次のとおり算出した。加重平均の比率については、幾通りかを設定した上でそれぞれ分析を行い、実績着工戸数との決定係数が高い比率を採用した。
    ・「確認申請件数(推計用)」= 0.7 ×「確認申請件数(1期前)」+0.3 ×「確認申請件数(2期前)」
    (c)続いて、「住宅着工戸数」(前年比)を「確認申請件数(推計用)」(前年比)で単回帰し、着工戸数を推計した。回帰係数αは、1.02と推定された(t値=14.8)。
    ・「住宅着工戸数」(前年比)= α×「確認申請件数(推計用)」(前年比)
    (d)足元の推計値については、前倒し着工戸数の推計をより正確に行うため、推計値と実績値とのずれを補正した。具体的には、足元で、推計した伸び率が実際の着工戸数の伸び率より2%ポイント程度低く推計されていたため、2011年2月からの推計値に2%ポイント上乗せした。
  2. 住宅着工戸数のトレンドラインの算出方法は次のとおり。
    (a)算出に利用した着工統計の期間は、2010年1月~2011年2月。
    (b)住宅着工戸数をトレンド項で単回帰し、住宅着工戸数のトレンドラインを算出した。「トレンド項」は2010年1月を1とし、以下1ヶ月経過するごとに+1加算される数値とした。定数項a は6.5(万戸)、回帰係数bは0.043と推定された(切片のt値=52.7。係数のt値=3.0)。
      ・「住宅着工戸数」= a + b ×「トレンド項」
問合せ先
担当:参事官(経済財政分析ー総括担当)付
等々力 淳 直通:03-3581-9527

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

内閣府 Cabinet Office, Government of Japan〒100-8914 東京都千代田区永田町1-6-1
電話番号 03-5253-2111(大代表)