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今週の指標 No.1013 ロシア:ロシア経済の現状と課題

ポイント

2011年10月24日

  1. 本年12月の下院選、来年3月の大統領選を控え、政治情勢に注目が集まるロシアでは、世界経済の減速懸念が強まる中、原油価格の軟化傾向等により経済成長に減速がみられる。以下では、ロシア経済の現状を概観し、今後の課題について明らかにする。
  2. 石油、天然ガスをはじめ豊富な資源を保有(注1)しているロシアでは、輸出額の6割強をエネルギー関連商品が占めており(注2)、資源を巡る世界的な動向が経済発展に大きな影響を与える。資源採掘(注3)や石油等エネルギー商品の輸出により獲得した資金が、政府の財政を安定させるとともに、国内企業の投資や家計消費等の内需へ波及することで経済を拡大させていく資源依存型の経済構造下では、原油価格の動向が経済成長の鍵を握っている。例えば、2008年の世界金融危機前後の原油価格の急落は、ロシア経済へ深刻な影響を及ぼし(注4)、08年IV四半期、09年第I四半期の実質経済成長率は、前期比年率▲16.0%、▲16.3%となった(図1、2)。
  3. 08年7月以降に急落した原油価格は、その年末を底に上昇へ転じ、それに連動する形でロシアの輸出額も再び増加した(図3)。ロシアの実質経済成長率は、政府の景気刺激策(注5)等に支えられた個人消費の押し上げ等により、09年第III四半期以降、干ばつで農業生産が大きく減少した10年第III四半期を除き、前期比プラスで推移している。しかし、足元では原油価格に軟化傾向がみられること等により、11年第II四半期の実質経済成長率は前期比年率0.7%と、成長率の低下がみられる(図1、2)。
  4. また、本年8月以降、米国の債務上限問題や世界経済の減速懸念等により、市場でのリスク資産に対する逃避傾向が顕在化し、大統領選を控えた政治的な不透明感も相まって、国外からの資本流入が大きく縮小するとともに、ルーブルに対する売り圧力が強まっている(図4、5)。これまでロシア中央銀行は、資金流入による自国通貨高への過度な変動を抑制するため、ルーブル売り介入を続けていたが、8月以降一転し、急速な通貨安によるインフレ懸念等からドルやユーロを売り、ルーブル買い介入を行っている(図6)。こうした中で今年の上半期平均で対ドル28.6ルーブル、対ユーロで40.2ルーブルだった為替レートは、10月18日時点で対ドル31.2ルーブル、対ユーロ42.8ルーブル近傍で推移している(図5)。
    なお、国外銀行のロシア向け与信残高の8割以上は南欧諸国等の債務危機に揺れるヨーロッパの銀行が占めており(図7)、今後、安全資産への逃避の流れからヨーロッパの銀行がロシア向け与信を縮小させていく可能性もあることから、こうしたルーブル売り圧力が働きやすい状況はしばらく続くものと思われる。
  5. 石油等資源依存度の強い経済構造により、今後もロシア産原油への需要とそれに伴う原油価格の動向に大きく影響されると考えられるロシア経済は、減速懸念が強まる世界の経済情勢とは無関係ではいられない。
    来年3月に誕生する政治的リーダーには、産業構造の多様化や技術立国へ向けた投資環境の改善及び世界金融危機後の戻りが弱い対内直接投資の活性化(図8)等、外的要因に対して脆弱である資源依存の経済構造から脱却するための具体的な取り組みが期待されることになる。

【注釈】

  1. 石油生産量は世界第1位、天然ガス生産量は世界第2位(いずれも2009年。米エネルギー情報局(EIA))。
  2. 輸出総額に占める燃料・エネルギー製品の割合は68.4%(通関ベース、2010年)。
  3. 2010年の鉱物資源採掘税は歳入の約2割弱を占め、企業収益だけでなく政府の財政安定にも寄与する。
  4. 原油価格の急落が原油生産量抑制へ働くとともに、在庫を取り崩して供給することになるため一般的に実質経済成長率へマイナスに寄与する(図1)。
  5. 新車買換え支援策を2010年3月に開始。本年7月に担当相より支援策終了が宣言された。

図1 実質経済成長率と需要項目別寄与度 図2 ウラル原油価格 図3 輸出動向 図4 民間資本収支 図5 為替レート 図6 ロシア中央銀行の為替介入 図7 国外銀行のロシア向け与信残高(国外銀行別の比率と対GDP比(上位5位)) 図8 直接投資動向
問合せ先
担当:参事官(経済財政分析-海外担当)付
柿澤 佑一朗 直通:03-3581-0056

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