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今週の指標 No.1008 株価による景気予測

ポイント

2011年9月5日

  1. 我が国の景気は、東日本大震災の影響により依然として厳しい状況にあるものの、最近では、サプライチェーンの立て直しなどにより持ち直している。しかしながら、本邦株価は、8月以降、世界的な景気減速懸念等を背景に下落しており、先行きの景気減速または後退を織り込んでいるとの指摘がある。そこで本稿では、景気に対して先行性があると言われている株価について、その関係性をTOPIX(東証株価指数)に加えて業種別株価指数を用いて検証し、最近の株価が示唆する景気後退確率を推定する。
  2. 先ず、TOPIXと景気動向指数のCI一致指数の推移を比較すると、概ねTOPIXはCI一致指数と同様の動きを示している上、同指数に先行して推移していることがうかがわれる(図1)。両者の時差相関をとると、TOPIXはCI一致指数に対して4ヵ月先行する場合の相関係数が最も高い結果となった(図2)。
  3. 同様の視点から業種別株価指数と景気の関係をみる場合、一般的には、素材業種や機械等の設備投資関連業種が景気敏感株と呼ばれ、相関係数が高いとみなされている。他方、食料品や電気・ガス、陸運業といった業種は、ディフェンシブ株と呼ばれ、相関係数が低いとみなされている(表1)。これら業種別株価指数とCI一致指数との時差相関をとると、第一に、1.ガラス・土石や化学、非鉄金属、鉄鋼といった素材業種や、2.機械といった設備投資関連業種、3.精密機器や電気機器、輸送用機器、卸売業(商社等)といった外需関連業種の相関係数はTOPIXの値を上回っている。また、電気・ガスや陸運等のディフェンシブ株の相関係数は、TOPIXの値を下回っており、一般的な見方を支持する結果が得られた(図2)。第二に、相関係数がTOPIXを上回る業種のラグ数は、TOPIX全体と同程度となっており、先行性に大きな違いはみられない。
  4. こうしたことを踏まえ、1.株価の景気に対する予測力と、2.景気局面(景気基準日付による拡張期と後退期)での予測力の違いについて、TOPIX及びCI一致指数との相関係数が高い業種別株価指数を用いて分析する。具体的には、景気局面を株価で説明するモデル(拡張期を0、後退期を1とするプロビットモデル)を推定し、その予測値が、実際の景気局面とどの程度一致するか(的中率)を検証する。結果として、拡張期と後退期を合わせた通期の的中率は、TOPIXと選定された業種別株価指数の何れにおいても70%~80%と高い(図3)。ただし、局面別の的中率を見ると、拡張期には概ね90%と高まるが、後退期では、全ての業種において低下する。しかしながら、機械や電気機器、精密機器、卸売業(商社等)といった業種の的中率は、低下しても55%程度を維持しており、ある程度の予測力を有しているとみなせる。
  5. こうした業種の株価をみると、7月の前年同月比変化率は全てプラスであったものの、8月に入ると、機械や卸売業(商社等)の上昇幅は縮小し、電気機器、精密機器では、下落に転じている(図4)。そこで、これらの株価動向を図3で推計したモデルに代入して景気後退確率を求めると、いずれの業種においても0.5を下回り、最近の株価は、景気後退を織り込んでいない(景気後退と示唆する程の下落ではない)結果となった(図5)。今後の景気動向をみる上では、こうした視点から業種別の株価動向を注視することも有意義と考えられる。

図1 株価と景気動向指数 図2 業種別株価と景気動向指数の時差相関 表1 景気敏感株とディフェンシブ株 図3 業種別株価による景気予測力の推計 図4 業種別株価の動向 図5 累積分布関数による景気後退確率
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