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今週の指標 No.1002 アメリカ:ガソリン価格の上昇が個人消費に与える影響

ポイント

2011年7月25日

  1. アメリカのGDPの約7割を占める個人消費の動向をみると、2009年半ば以降、緩やかな増加を続け、アメリカの景気回復をけん引してきた。しかし、11年4月及び5月の実質個人消費(前月比)はマイナス0.1%となり、足元では増加のテンポが鈍化している(図1)。背景として、失業率が上昇に転じるなど雇用環境の改善が遅れていること、家計のバランスシート調整が続いていること、そして、ガソリン価格の上昇が消費者の家計を圧迫していること等がある。車社会のアメリカにおいて、ガソリンは代替のきかない生活必需品としての位置づけであるため、価格の上昇は消費者にとって、他の消費を抑制させる効果をもたらす。

  2. ガソリン価格は、09年夏以降1ガロン2.7ドル程度で推移していたが、10年秋以降上昇を続け、11年5月には3.9ドルに達した(図2)。アメリカ労働省の家計調査を元に推計すると(注1) 、一か月あたりのガソリン代支出(全世帯平均)は09年と比べ、約83ドル増加している。また、可処分所得に対するガソリン支出の割合は、低所得者層ほど高いことから、ガソリン価格の上昇による家計への負担は、低所得者層ほど重い(図3)。この影響を業種別小売売上げの動向からみると、11年1~3月期には、他の業種に比べて1ドルショップの売上げが大きく増加しており、低所得層の人々が支出を切り詰めるため、価格のより安い店舗に向かっていることが推測される(図4)。また、消費者のマインドの変化をみても、10年秋以降、所得5万ドル以上の階層では株価の上昇などを背景にマインドを改善させているなかにあって、同5万ドル以下の各層では大きな改善がみられない(図5)。

  3. また、ガソリン価格の上昇により、自動車販売の動向にも変化がみられる。車種別の販売動向をみると、比較的燃費のよい、小型乗用車及び中型乗用車の占める割合は、今年4月以降は東日本大震災の影響により特に日本車の販売が落ち込んだことを受けて低下しているものの、ガソリン価格の上昇がみられた10年秋以降、増加基調にあった(図6)。また、低燃費車の人気も高まっており、自動車販売台数に占める低燃費車のシェア(注2)をみると、同じく足元では震災の影響から低下しているが、10年10月以降少しずつ増加を続け、11年3月には販売台数のうち約40%が1ガロンあたり25マイル以上の低燃費車であった(図7)。これらは、ガソリン価格の上昇を受けて、自動車に対する消費者の選好にも変化が起きていることを示唆している。

  4. ガソリン価格は足元で再び上昇に転じており、今後も高止まりが続くことになれば、引き続き低所得層を中心に消費が抑えられることが懸念される。一方で、自動車販売は、足元の落ち込みは震災の影響を反映しており、生産台数が回復に向かうにつれて、先送りされた需要が年後半にかけて販売台数の増加として表れてくる可能性がある。個人消費の項目別寄与度をみると、足元の個人消費の落ち込みは自動車販売の減少も寄与しているため(図9)、今後の動向には注目していく必要がある。


図1 実質個人消費の推移 図2 ガソリン小売価格の推移 図6 自動車販売台数の推移 図3 可処分所得に対するガソリン支出の割合 図4 業種別小売売上高の推移 図5 所得階層別消費者信頼感指数 図7 新車販売における低燃費車の推移 図8 自動車生産台数の推移 図9 実質個人消費の項目別寄与度

(備考)

  1. 米労働省家計調査(2009年)において、09年時のガソリン支出及び可処分所得の全世帯平均が公表されている。ガソリン消費については、ガソリン消費量が一定であると仮定した上で、価格上昇分を反映した支出額を算出。可処分所得については、同家計調査を基に、米商務省公表の名目可処分所得(前年比増加率)を反映させて算出。また、2011年のガソリン価格及び名目可処分所得(前年比増加率)は共に、直近までの実績による。
  2. 2009年7月に行われた自動車買替え支援策において、買替え対象の新車を1ガロンあたり22マイル以上の車としたことを踏まえて、ここでは低燃費車の定義として、1ガロンあたり25マイル以上の車とした。燃費は米エネルギー省環境保護局算出の数値による。また、データの制約上、BIG3(GM、フォード、クライスラー)、日系3社、韓国系2社の新車販売を対象とした。
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