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今週の指標 No.999 スペイン:銀行部門の損失拡大により欧州全体の金融システム不安が高まるリスク

ポイント

2011年7月4日

  1. 2000年~07年までのスペイン経済は、建設・不動産部門を中心に経済活動の拡大が続き、平均成長率(00年~07年の年平均実質GDP成長率)は3%を上回っていた。しかし、世界金融危機や住宅バブル崩壊を背景に景気は08年半ばから急激に悪化し、09年の実質GDP成長率は▲3.7%と大幅に落ち込んだ。こうした中、07年にはGDP比1.9%の黒字であったスペインの財政収支は、08年に▲4.2%、09年に▲11.1%と大幅な赤字に転じ、ギリシャ、アイルランド、ポルトガル(以下、その他南欧諸国等と表記)と同様にソブリン・リスクが意識されるようになった。また、スペインの銀行部門が悪化したことも、銀行に対する救済費用が増加して財政赤字が拡大するとの見方を生じさせ、ソブリン・リスクの高まりに寄与したとみられる。スペインの銀行は建設・不動産部門に対して多額の融資を行っていたが、住宅バブルが崩壊したことで、それらの一部が不良債権となってしまったことがその背景にある。

  2. 2010年を通じて緩やかに上昇したスペインのソブリンCDS(クレジット・デフォルト・スワップ)のプレミアムは、11年に入ってからは概ね安定的に推移しており、プレミアムが上昇を続けるその他南欧諸国等とは対照的な状況となっている(図1)。では、スペインのソブリン問題について懸念すべき材料は無いだろうか。以下では、スペインのソブリン・リスクがこのところ和らいでいる背景を概観した上で、先行きをみる上で注意すべき点について述べる。

  3. スペインのソブリンCDSが安定的に推移している第一の要因として、付加価値税の税率引上げや公務員給与の削減等が行われ、10年の財政赤字が▲9.2%と政府の目標(▲9.3%)並みに縮小するなど、財政再建が進んでいることが挙げられる。また、銀行再編のための基金(Fund for Orderly Bank Restructuring;FROB)が設立され、銀行の資本増強や統合が行われていること等も評価されているとみられる。

  4. しかし、明るい材料ばかりではない。スペインの住宅価格は2007年末のピークから約20%下落しているものの、過去のトレンドから大幅に上振れたままで、今後も調整が進む可能性がある(図2)。欧州中央銀行(ECB)は11年4月に利上げを実施したが、今後も利上げが続けば、それによる住宅ローン金利上昇が住宅需要を一段と冷え込ませることも考えられる。スペインの銀行は、特にカハと呼ばれる貯蓄銀行を中心に建設・不動産部門向けの多額の与信を抱えたままだ。11年3月時点の貯蓄銀行の与信残高は、住宅価格が騰勢を強める前の2000年と比べて約4倍となっており、建設・不動産部門向けの割合は50%以上まで高まっている(図3)。銀行部門を強化するための取組みが進められているものの、不良債権比率は過去と比べて高水準のままで、下げ止まりの兆しはうかがえない(図4)。更なる住宅価格下落によって与信が焦げ付けば、不良債権比率は一段と上昇するリスクもある。その結果、銀行部門に対する不安が再燃し、スペインのソブリン・リスクが再び意識される可能性がある。

  5. スペインのソブリン・リスクが高まれば、国債価格の下落(利回りは上昇)による損失が同国の銀行の収益を圧迫するとみられる。また、現地企業の資金調達が困難となって貸し倒れが発生し、銀行の損失が拡大するリスクもある。加えて、損失が拡大するのはスペインの銀行だけではないだろう。図5に示す通り、欧州の銀行のスペインに対する与信残高は、公的部門、銀行部門、民間非銀行部門のいずれにおいても、その他南欧諸国等向けと比べて圧倒的に多い。そのため、スペイン国債価格の下落や現地企業の貸し倒れは、欧州の銀行の収益悪化、ひいては欧州全体の金融システム不安に結びつく可能性がある。懸念材料を抱えたスペインの動向には、今後も注意が必要である。

図1.南欧諸国等のソブリンCDSプレミアムの推移
図2.スペインの住宅価格の推移
図3.スペインの銀行の国内向け貸出の内訳
図4.スペインの銀行の不良債権比率
図5.南欧諸国等に対する欧州の銀行の与信残高
問合せ先
参事官(経済財政分析-海外担当)付
松本 惇 直通:03-3581-0056

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