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今週の指標 No.995 インドにおける経済と農業の関係

ポイント

2011年6月6日

  1. 5月31日に発表されたインドの1~3月期の実質経済成長率は、前年同期比7.8%となり、伸びは10~12月期の同8.3%より低下したものの、引き続き高い伸びとなっている。07年以降の実質経済成長率を産業別にみると、金融・保険・不動産部門(10年度シェア:17.4%)や商業・ホテル・運輸・通信部門(同:27.0%)等の第3次産業は高い寄与が続き、実質GDP全体の成長を支えている(図1)。他方、農林水産業部門(同:14.4%)は、寄与度がマイナスとなっている時期があるなど、変動が激しい。これは農林水産業部門の大半を占める農業部門の動きが、大きく影響している(図2)。以下では、農業部門と、(1)成長率、(2)物価、(3)消費との関係についてみてみる。

  2. まず、インドの農業の生産高は、6~9月のモンスーン期における降雨量に大きく左右される。例えば、96年以降のモンスーン期の降雨量の前年比と秋の穀物生産量の前年比を比較すると、おおむね同じ動きをしていることが確認できる(図3)。すなわち、降雨量が少ない年は生産高も減少し、農業部門の実質成長率もマイナスとなっている。

  3. 次に、穀物生産高に影響を与えるモンスーン期の降雨量と、食料品の物価上昇率の関係をみてみよう。秋以降の半期(11月~4月期)の一次食品の物価上昇率とモンスーン期の降雨量の長期平均降水量(注)とを比較すると、関連性は必ずしも高くない。09年は、秋以降の半期の一次食品の物価上昇率がモンスーン期の降雨量が1972年以来最低となった影響を受け、前年同期比20.1%と非常に高い伸びとなった。しかし、09年以外で一次食品の物価上昇率が同10%を超えた年の降雨量は、インド気象庁が示す例年並み(注)の範囲内に収まっている(図4)。このことから、一次食品価格の上昇は、モンスーン期の降雨量やこれに影響を受ける生産高以外の要因も大きく寄与しているとみられ、モンスーン期の降雨量のみで、秋以降の食料品価格の動向を予測することは難しい。

  4. さらに、インドでは7割以上が農村人口であるため、穀物生産の減少により農家の所得が減少すると、消費への影響が懸念される。また、農村地域では、家計消費に占める食費の割合が57.7%(05年度)と非常に高いため、所得減少による国民生活への影響は大きいと考えられる。このため、インド経済の安定的成長や国民生活の安定を維持するためには、農業の生産性を高め、安定した農業生産・収入を確保することが重要である。

  5. 農業生産性の一つの目安となる単収について、インドとその他のアジア各国とで比較すると、インドの水準が低いことが分かる(図5)。農業生産性が低い要因には、灌がい整備や化学肥料導入の遅れ等があるが、さらに、農村地域の低い教育水準があると考えられる。農業生産性の向上には、トラクター等の農業機械の導入や農業技術の向上が不可欠であるが、GDPに占める農業部門の割合が高い州ほど非識字率が高めの傾向もみられ(図6)、農業関連の知識の普及が困難な状況にあると考えられる。また、低い生産性は、インドの耕地率の高止まりの要因ともなっているとみられる。インドの耕地率(注2)は6割を超え、アジア各国の中でも高い(図7)。耕地率の高止まりは、大規模な工場等の設備用の土地面積率が低いということでもあり、農業部門以外の産業の発展阻害やそれら産業への外資参入意欲低下につながると考えられる。さらに、インドは、人口の伸びが95/09年度比26.8%増であるのに対し、単収の伸びは17.8%増となっており、人口の伸びが単収の伸びを上回る状況にある。そのため、農業の生産性が向上しない場合、今後の食料不足や更なる物価上昇の可能性が懸念される。

  6. このように、インドの農業は国内経済に大きな影響を与える要素となっているものの、多くの課題を抱えている。しかし、直面する課題に対し適切に対処することができれば、今後、大幅な成長の余地がある分野であるともいえる。


実質GDP成長率 インドの産業別実質GDPのシェア(09年度)
モンスーン期の降雨量と農業生産 一次食品価格とモンスーン期の降雨量の関係
アジア各国の穀類生産の単収(09年) 州別の農業部門比率(GDP比度)(05年)と非識字率(10年度)
アジア各国の耕地率(08年)

(備考)

(注)インド気象庁は、長期平均降雨量(LPA:Long Period Average)を算出しており、LPAから±4%の範囲を例年並み(normal monsoon)としている。
(注2)耕地率(%)=耕地面積/総土地面積×100(%)
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