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今週の指標 No.991 アメリカ:地方債市場の動向

ポイント

2011年5月16日

  1. 州・地方政府(注1)全体の財政状況(投資等を除いた経常的歳入・歳出の収支)をみると、08年秋以降、収支は大きく悪化したが、連邦政府による財政支援等を背景に09年10~12月期には黒字に転換し、以後、改善の動きが続いている(図1)。しかし、個々の地域をみると、景気の回復状況にばらつきがみられ、税収の低下から歳入不足に陥る自治体も発生している。こうした自治体では、財政の均衡を維持するため(注2)、医療や義務教育等のサービスの縮小、政府職員の解雇が実施されており、政府支出は減少している(図2)。11年1~3月期には、これらの政府支出の減少が実質GDP成長率を0.4%押し下げており、回復テンポを鈍らせる一因となっている。

  2. こうした中、州・地方政府では、地方債を通じた資金調達が重要となっている。地方債発行額をみると、09年4月に導入されたビルド・アメリカ債プログラム(注3)の効果もあり、09年及び10年には毎期100億ドル程度で推移してきた(図3)。しかし、同プログラムが10年末に終了したことを受けて、11年1~3月期は発行額が大きく減少しており、特にインフラ整備等の原資となるレベニュー債(注4)の発行額が大きく落ち込んでいる。また、州・地方財政の先行きに対する懸念の高まりなどを背景に、10年秋以降、地方債投資信託ファンドから資金を引き揚げる動きも続いている(図3)。

  3. 地方債利回りの推移をみると、08年以降急上昇し、同年秋頃をピークに低下傾向が続いたものの、州・地方政府の財政難や地域経済の悪化等を受けて再び上昇している(図4)。地方債市場では、金融機関による信用保証の付与が重要な役割を果たしているが(注5)、08年に発生した金融危機の影響により金融保証保険会社(いわゆるモノライン)の信用力が低下し、地方債に対する信用保証機能が低下している(注6)。こうした背景から、州・地方政府の資金調達コストは大幅に上昇しており、利払い費の拡大を通じて更なる財務状況の悪化がもたらされている。

  4. 地方債の発行の減少が続く場合には、政府支出の減少を通じて地域経済の回復が遅れる可能性がある。また、連邦政府による財政支援は10年度をピークに大幅に縮小する見通しである(図5)。地方公社が発行する債券では既にデフォルトの発生もみられるが、こうした事情から、来年以降、デフォルトに陥る自治体が現れる可能性も指摘されている。地方債の保有構成をみると(図5)、金融機関や海外投資家のシェアが比較的小さく、金融市場への影響は限定的との見方がある一方、投資信託も含めた家計の保有が全体の約7割を占めていることから、今後、消費等への影響が懸念される。

図1.州・地方政府の財政状況 図2.州・地方政府の雇用者数・支出 図3.地方債市場の動向 図4.地方債利回りの推移 図5.連邦政府による財政支援・地方債保有構成

(備考)

  1. 地方政府は、地方自治体である市町村、準地方自治体のカウンティ、タウン、タウンシップ、学校区、特別区等で構成(商務省センサス局)。
  2. 一般会計予算(政府の一般的な活動に係る予算)については、多くの自治体で均衡財政が義務付けられている。
  3. 利回りスプレッドが拡大し資金調達コストの上昇に苦しむ州政府等への支援策として、アメリカ再生・再投資法(オバマ大統領就任後の09年2月に導入された財政刺激策)により実施された措置。地方発行体は、連邦政府から利払いの35%相当を補助金として受け取る。
  4. レベニュー債は、償還財源を特定事業の収益に求めるものであり、空港、上下水道、病院等の整備に充当。これに対し、一般財源保証債は、徴税権のある団体が発行し、州や自治体が直接運営する事業(学校、裁判所、消防署等)に充当。
  5. 米国地方債市場では、金融機関による保険付与や信用状等を通じて信用補完が広く行われている。これらの保証が付与された債券は、デフォルトリスクが軽減される結果格付けが上がり、資金調達も容易となる。
  6. アメリカ証券業金融市場協会(SIFMA)によると、01~07年には長期債発行全体の約半分で保証が利用されたが、08年は8.7%に留まっている。
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