今週の指標 No.978 目次   前へ   次へ 2010年12月27日

アメリカ:パートタイム労働者の増加

<ポイント>

  1. アメリカでは08年9月のリーマン・ブラザーズの破たんを契機とした世界金融危機と景気後退の深刻化に伴い、雇用者数が大幅に減少し失業率は急速に上昇した(図1)。この間、フルタイム労働者は大幅に減少する一方で、パートタイム労働者数は増加しており、就業者全体に占めるパートタイム労働者の割合は17%程度から20%近傍まで高まっている(図2、図3)。以下では、パートタイム労働者の雇用形態を概観した上で、今後の雇用環境と消費や住宅需要への影響について検討する。

  2. アメリカ労働省によると、パートタイム労働者とは週当たりの労働時間が35時間に満たない労働者とされている。アメリカでは、契約の自由の下で同一労働同一賃金が原則となっていないこともあり、パートタイム労働者の時間当たり報酬は、フルタイム労働者の半分程度にとどまっている(図4)。また、09年後半以降はパートタイム労働者の時間当たり雇用者報酬の伸びは鈍化しており、特に報酬全体の8割程度を占める賃金の伸びが鈍化している(図5)。一方、パートタイム労働者の就業理由についてみると、企業側の事情やパートタイム労働以外に職を見つけられないなどの消極的な理由を背景としたパートタイム労働者の割合が、30%超まで上昇している(図6)。これは、本来であればフルタイム労働に就きたいものの、パートタイム労働を余儀なくされている労働者が多いことを示しており、このようなパートタイム労働者も失業者とみなした最広義の失業率は17%台に高止まった状況となっている(図7)。足元では雇用者数が緩やかに増加するなど総じて雇用環境には回復の兆しがみられるものの、実質的には依然として厳しい雇用環境が継続していることがうかがえる。

  3. 他方、企業側の動向をみると、景気後退の深刻化に伴う売上げの減少に伴い、人件費を削減する動きが広がった。09年以降の労働生産性の動向をみると、労働生産性は大幅に上昇しているものの、単位労働コストの減少の寄与が目立っている(図8)。また、労働分配率も08年以降、国民所得の減少率が雇用者報酬の減少率より大きかったことから、大幅に上昇したものの、その後は雇用者報酬の伸び率を抑制してきたことにより、急速に低下している(図9)。これは、企業が雇用者数の削減、賃金上昇率の抑制に加えて、高賃金のフルタイム労働者から低賃金のパートタイム労働者の雇用へと雇用形態を柔軟に調整することにより、人件費を大幅に圧縮してきていたことを反映していると考えられる。

  4. 直近の企業の雇用マインドは緩やかに改善しており、雇用のミスマッチが解消されるにつれて雇用者数の増加幅は徐々に拡大していくことが想定される(図10)。しかし、企業は売上げの増減に対して労働分配率の上昇を最小限に抑制することで業績の安定や向上を図るため、景気の先行きに対する不確実性が和らぎ、売上げが持続的に増加する段階になってから初めて高賃金のフルタイム労働者を本格的に採用すると考えられる。このため、不確実性が高い状況下においては、パートタイム労働者等低賃金労働者の雇用の増加にとどまる可能性がある。この場合には、雇用者数は増加し、失業率は低下するものの、低賃金であることから雇用者報酬の伸び率が抑制され、消費や住宅需要への波及効果も限定的となるおそれがある。したがって、雇用の回復については、雇用者数の増減のみならず、その雇用形態についても動向を注視する必要がある。


図1 非農業部門雇用者数と失業率の推移
図2 労働者数(雇用形態別)の推移 図3 就業者に占めるパートタイム労働者の割合
図4 時間当たり報酬の内訳(雇用形態別、2010年9月時点) 図5 パートタイム労働者の時間当たり報酬の変化
図6 パートタイム労働への就業理由 図7 最広義の失業率の推移
図8 労働生産性 図9 労働分配率
図10 企業の雇用マインド

担当:参事官(海外担当)付 鷹野 洋 直通:03-3581-9536

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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