今週の指標 No.974 目次   前へ   次へ 2010年11月22日

アメリカ・英国:経済成長やインフレにより国債残高対名目GDP比が低下した事例

<ポイント>

  1. アメリカと英国の20世紀の国債残高対名目GDP比をみると、第一次(1914〜18年)、第二次(1939〜45年)世界大戦期において、戦費調達のための国債発行により大幅に上昇しており、アメリカでは、ニューディール政策もあり1930年代も上昇した(図1)。特に英国では、40年代に名目GDP比250%以上の高い水準となった(注1)

  2. その後は、国債残高対名目GDP比は急速に低下した。ピークと比較して1980年までの約35年の間に、アメリカでは約90%ポイント、英国では約200%ポイントと急速な低下をみせた。 急低下の要因のひとつは、第二次世界大戦終結により国債発行が減少したことがあるが、後述するとおり名目経済成長率が高かったことがより重要な要因である。実際、国債残高をみると、減少しても一時的であり、戦後も増加している(図2)。

  3. むしろ、この期間には、国債残高の前年比の伸びより、名目経済成長率が上回って上昇した(図3)。ここで、名目経済成長率を実質経済成長率とインフレ率に分解すると、50〜60年代については、アメリカ、英国ともに、実質経済成長率の伸び率が国債残高の伸び率を上回っている。しかし、70年代からは、国債残高の伸び率を実質経済成長率が下回り続けている。他方、インフレ率はアメリカ、英国ともに70年代に大きく上昇したため、名目経済成長率が国債残高の伸び率を上回ることとなった。英国では、80年代もその現象が起きている。このことから、国債残高対名目GDP比のピークから80年までの急低下は、50〜60年代は主に経済成長率によるものであり、70年代は主にインフレによるものであると言える。また、英国は、アメリカと比較してインフレ率が高かったことが、国債残高対名目GDP比の低下幅が大きかった主な要因であるとみられる。

  4. アメリカと英国における国債残高対名目GDP比の急低下は、国債残高については、国債を償還し、国債残高を減少させたものではないことには注意を要する。また、英国では、40年代に国債残高対名目GDP比が250%以上となったが、財政破綻に陥ることはなかった。一方、76年には財政危機となりIMF支援を受けた(注2)が、その時の国債残高対名目GDP比は40%台と低水準であった。このように、国債残高対名目GDP比は、あくまでも財政状況を示すひとつの指標ととらえ、その他にもインフレ率や金利、経常収支等の様々な経済環境を念頭においた上で財政状況を評価するべきである。


    (注1)財務省によると、日本の09年度の(普通)国債残高対名目GDP比は124.8%。
    (注2)英国は、74、75年に消費者物価上昇率が10%を超える中、実質経済成長率が2年連続でマイナスになるスタグフレーションに陥り、金利上昇による国債の利払い費がかさみ、財政赤字が拡大した。また、経常収支はオイルショックが発生した73年より赤字に転じた。76年にはポンドが大幅に減価し、政府はポンド買い介入をしたが外貨準備が枯渇したため、同年12月にIMFに39億ドルの緊急支援を申請した。

図1 国債残高対名目GDP比
図2 国債残高
図3 国債残高、実質経済成長率、インフレ率の各年代平均の伸び

担当:参事官(海外担当)付 石黒 智也 直通:03-3581-9537

本レポートの内容や意見は執筆者個人のものであり、必ずしも内閣府の見解を示すものではない。

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